9. 狭小台所の美学

BIOMANの台所は、お世辞にも十分なスペースがあるとは言えない。材料を切ったりする場所は、限りなくゼロに近い。
そんな台所で、まな板をシンクに対して縦に置き、切る場所を確保。そうして、野菜などを切って出たゴミは一旦シンクへ。
切り終えた材料は、材料ごとにグラスやお茶碗といった食器に入れる。スペースがないこの台所ならではの光景だ。

トングやお玉、調理スプーンといった調理器具は、使ったらすぐに洗われて元の場所へと戻っていく。
だから、出来上がった頃には、さっきまで具材が入っていた食器類も、使っていた鉄鍋もすべてきれいになって、一部は、食器乾燥かごに、また一部は元の位置へ仕舞われていた。手際がいい。
この台所で料理をする、または、する気になるのは、おそらく料理だけでなく、いろんなことに工夫ができるひと。私には無理だ。

調理器具や調味料の数からもそれは見えてくる。
当たり前に鉄のフライパンを使い、シリコンの調理スプーンが壁にかかる。マヨネーズやドレッシングは一切置かない。
使うものは自分で選び、自分で作れるものは自分好みに作る。
そんなBIOMANの美学が透けて見えたような気がする。

文:松村貴樹 写真:米田真也 編集:竹内厚

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