グリーンマネージャー・遠藤冬樹
と団地の緑

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グリーンマネージャーの仕事について聞く前に、遠藤さんのこれまでを聞いているだけで、あっという間に時間が経ってしまった前回。
大阪・堺市にある白鷺団地の中を実際に歩きながら、グリーンマネージャーのこと、教わりました。
同行してくれたのは、URの三上拓さんです。

 

―遠藤さんのグリーンマネージャーとしての目標はどんなことでしょう。

遠藤:今までの自分の経験から団地の植生を見ると、いろんな意見が出てくるんですよ。そこを、この10年ほどかけて少しずつ変えていって。簡単に言えば、剪定で団地の景色を変えようということ。

三上:新しく木を植えたり、切ったりするのではなく、ですね。

遠藤:そう、今ある木、植物をどうするか。

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三上:大規模な団地の改修というのは、たとえば20年に1回くらいで、その間の日常的な管理は住んでる方の共益費ですべてやっているんですね。予算も限られている。それでも、いまは全国にグリーンマネージャーの方が配置されて、結果、団地の景色が変わってきました。

―剪定で景色を変えるってかっこいい!

遠藤:変わるんですよ、それが。URって他の団地に比べてもほんとに緑が豊かで、樹木の種類も多いから、剪定のやり方を変えるだけでもガラッと変わる。間引いて、透かして、見通しをよくする。見た目の面でも、防犯面でも、まずはそれがいちばんですね。

―向こうが見えるように透かす、と。

遠藤:たとえば、あの右側にあるカイツカイブキ、あの木をこういう剪定してるのはURだけちゃうかな。他のところだと、外側を丸く刈って整えてるだけなので。

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―まさにこれが透かしている状態。ちなみに、左側の木はかなり住棟に密着しています。

遠藤:あれは誰かが植えたか、勝手に生えてきたかして大きくなった木で、住民の方にそのままにしといてくれって言われてるんでしょうね。

―勝手に生えたとか、住民の手づくり花壇みたいなのもよく目にしますよね。

遠藤:やっぱり敷地に余裕があるから。三上くん、こっちにもきれいな花壇があるよ。

三上:勝手にやるのは規約上、ダメなんです。

遠藤:これはあんまり言うと怒られるけど、個人の花壇みたいなものも奨励して、きれいに育てられてるところは表彰するとか、敷地内の雑草の草引きでも一緒にやるとか。もっと住んでる方といっしょにやれる形にしたほうがいいよね。

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三上:愛着もわきますしね。グリーンマネージャーの方とイベントを企画して、団地を歩きながら樹木の勉強をしたり、樹名板をかけたりとか、少しずつですけど、そういった取り組みがはじまってはいます。また、URと覚書を交わせば、「共同花壇」という形で住民さんが好きに管理できる花壇を設置することもできるんです。
*ただし、自主管理義務と使わなくなれば現状復旧義務があります。

―先日、大阪のアーベイン東三国で撮影会を開いたんですけど、団地内に開花時期の異なる様々な桜が植わっていて、2月から5月まで桜が楽しめるようになっていました。

遠藤:あれは自治会の要望もあったらしいですね。面白いと思います。やっぱり住んでる方の気持ちがないと、無理につくっても仕方ないので。そういう意味でも、住民を巻き込んでやっていかんとね。

三上:いい意見もあれば、苦情ももちろんあって。それでも遠藤さんはいつも楽しそうに仕事されてますよね。

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遠藤:まあまあ、いろんな方がいますから。よう言うてくれた、そのとおりやということもありますし。ときどき、褒めてくれはることもありますよ。昔から、旦那衆とかの楽しみやったんですよね、きれいに剪定された庭を見るなんてのは。だから、下手なことをすると言うてこられる方もいる。

―ちゃんと団地の緑を見てる人、愛でてる人もいるんですね。

遠藤:だけど、ここが京都の庭だったら、なるべく切ってないように見せるのが剪定の技ですけど、団地は生活空間ですから。ゴルフ場じゃないから頻繁に刈れないし、除草剤も使えない。そこは同じ緑を扱っていても全然違う。

三上:団地の緑というのは、公園と個人の庭の中間くらいなんです。公共的な面もありつつ、家に帰ってきたという愛着が持てることも必要で。そこは、設計のときから考慮しています。

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遠藤:これはカツラや、新しく植えたんやな。

―団地内に何を植えるかというのは誰が決定しているんですか。

三上:設計担当ですね。白鷺団地は「団地環境整備工事」、通称「ダンカン」と呼ばれる屋外環境のリニューアルが昨年行われたので、そのタイミングで植えられんだと思います。どうしても工事の都合から、植栽に手をつける時期が決まってしまうので、根づかせるのが難しいこともあります。

―植物公園じゃなくて、そこはあくまでも団地。いろんな都合と理由の上に成り立っているんですね。ところで三上さん、今日は雑草食べなくていいですか?

三上:探せばニラとか結構生えてるんですよ。たんぽぽだっておいしいから…。ユスラウメもこの時期でしたね。

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遠藤:ユスラウメは実がね、結構うまい。果実酒にできる。タンポポもアザミもキク科の植物で、ごぼうと同じなので、根をかき揚げにしてもいいしね。ヨモギもあちこちに生えてるけど、今が食べ時ですよ。葉の先の方をぽきっと折って、天ぷらにしたらええ。

三上:団地できれいな花を咲かせるハナニラは、間違って食べると下痢をしたりとか、そういったこともあるので、植物を食べるのは慎重に自己責任でお願いします。

―そんな勉強会も兼ねて、団地内で雑草を食べるようなイベントができるといいですね。

遠藤:いっぺんやってみたいですね。まずはグリーンマネージャーがやってみな、あかんな。今度みんなで食べよか(笑)。

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―団地に生えている植物で図鑑をつくるのもよさそうです。また是非いろいろ教えてください。今日は、遠藤さんがやってる音楽のことまで話がいきませんでしたしね。

三上:そうだ、遠藤さんはテナーサックスをやっていて、バンド名が…。

遠藤:「誰カバ」ね、大津のロックンロールバンド。

―「誰カバ」こと、「誰がカバやねんロックンロールショー」。wikipediaにも載ってましたよ。三上さんは遠藤さんのライブを見たことは?

三上:youtubeでは見ましたけど、生ではまだ。

遠藤:誰カバは、もうみんなの歳が60になってきたから、全然ライブをやってない。来年でグリーンマネージャーの仕事も引退やし、駅前で楽器吹いて、ジャズ喫茶でも開こうかな(笑)。

三上:遠藤さんのジャズ喫茶、できたら絶対に行きますよ(笑)。

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文:竹内厚 写真:平野愛

*遠藤さんとは別のグリーンマネージャー、佐々木康光さんを取材した、UR都市機構「美団地」サイトもご覧ください。
佐々木さんイチ押しの木なども紹介されています。
http://www.ur-net.go.jp/kansai/vidanchi/voice/gm01.html

*遠藤さんから剪定前、剪定後の写真をお借りしました。
透かす、間引くことの意味と理由がよくわかるので、最後にこちらで紹介しておきます。

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施工前施工後

 

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施工前(5月)施工後(8月)施工後(9月)
施工した瞬間は刈りすぎのようでも、ヒラドツツジやオトメツバキはすぐに回復する


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。