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UR団地にはグリーンマネージャー、通称「GM」という、団地の植栽を管理しているスペシャルチームがあります。関西各エリアを担当するそのGMメンバーが、かなりの個性派揃いであることは、OURS.サイトの記事で以前お伝えしましたが、今回、そのグリーンマネージャーの名付け親で、関西のGMチームを立ち上げたという福廣さんにお会いしました。

「ほんとは植物管理技術者という名前やったけど、GMさんって呼んでもらう方が親しみやすいやろ。俺は“ゼネラルモーターズ”言うてたんやけどな(笑)」なんて、とにかく気さくな福廣さんとグリーンヒルズ御影を訪ねました。

*グリーンマネージャーの記事はこちら。遠藤冬樹さんへのインタビューです。
http://ours-magazine.jp/borrowers/endo-1/


団地がつくる「景色」

阪急御影駅からバスに揺られること約10分。その道中はほぼ急な坂道で、あっという間に、神戸の街並みをはるかに見渡すことができる高さまでのぼることになる。

グリーンヒルズ御影は、2002~04年にかけてすべて建て替えた団地。もともとは、1958年に建てられた御影団地だった。福廣さんは、その建て替え時に造園の計画と設計を担当した。
「というて、偉そうに言うたらあかんねん。たいていは、設計事務所の人に助けてもらってやから」と笑う福廣さんだが、団地のあり方に対する考えは一環している。

福廣:団地はな、周辺に溶けこむのが一番やと思ってるねん。どれだけいい庭をつくっても、浮いてしまうわけやな。だから、地域に溶けこんで、どこからどこまでが団地なのかわからんような景色になってくれるのが一番。
後から地域に入ってきて、偉そうに見せるのは違う。地域ってそういうもんではないやろ。

―団地に住む人のことはもちろん、その周辺に住まう人のことまで考えられた設計なんですね。

福廣:基本的に景色というのは地域の人、地域の暮らしがつくるんやな。木々を大事にしている人らが住んでる街で、役所が街路樹をぶつぶつ切っていったら、その地域の人からはきっと文句が出る。そうやって地域の人が景色をつくっていくんやな。
だから、団地だけが周囲から浮きあがったり沈んだりするのではなくて、団地の住民が地域の人らに溶けこんでいくのが最終目標やな。景色だけやなくて。

御影団地は、六甲山系の植生をなるべくそのまま活かして建てられた。わりと急な斜面地だが、造成しすぎることなく残されている。
そして、建て替えられたグリーンヒルズ御影も、当初の設計思想をそのまま受け継いでいる。

住棟と住棟の間はほぼ坂道が続く。

福廣:一般的にいわれる景色として考えたら、ここは評価されないかもしれん。周辺に溶けこみすぎてわからんからな。あと、今の時代のバリアフリーという観点からしたら、斜面立地というのはまったくプラスの評価ではないんやけど、ここはあえてそのよさを活かしてるということ。

―建て替えの際にも平らに整地してしまわず、なるべく緑も斜面もそのまま残した。これってかなり大変なことですよね。

福廣:そうや。置きかえ設計といって、前に建物があったところに新しい建物を置き替えていくんやけど、前の建物を壊して、重機入れて、足場を組んで。そう考えたら、図面上では建物配置をそのまま引き継ぐように見えても、工事の現場監理はものすごく大変。
それでも前あった樹木を、オレが「もうええか」と言うてなくしてしまったら、前から住んでる人や周りの人たちからは文句が出るわ。「せっかくいい林やったのに、URには造園屋はおらんのか」って。

残していく、引き継ぐ。美しい話ではあるが、決して容易なことではない。
「そのときの現場の監理担当者ががんばって、これつくったんや」と福廣さんが見せてくれたものがある。現場の作業員全員に配布したというシールだった。

福廣:重機とかが樹の幹に当たったらあかんというのは誰でもわかるけど、樹の根があるところに土をかぶせたり、資材置き場にしてしまったら、一気に樹は弱ってしまうねん。だから、そのときの公団の監理担当者が、作業員全員のヘルメットにこのシールを貼らせることにしたんやな。

御影団地からの建て替え時、住んでいる人たちには他の団地への住み替えも提案されたが、多くの住民はまたここに戻ることを選んだそう。そのいちばんの理由が、この団地の景観と屋外環境だったと福廣さんは言う。

福廣:造園屋というのは、なかなか評価されづらいんやけど、このときばかりは「やった!」と思ったな。住んでる人達からの評価が一番やから。


THE BORROWERS

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