住むってそういうこと

―UR団地の景色は、団地ごとにかなり違っている印象です。植わっている植物も一律ではないですよね。

福廣:街のど真ん中で、グリーンヒルズ御影みたいなことをやっても地域に溶けこめない。地域のポテンシャルは、場所によって違うやろ。
大阪の福島区にあるアーベイン中之島西は、東洋製罐の工場跡に建った団地なんやけど、閉鎖された工場を見てみたら、製罐の機械がすごく面白い形をしてたんや。けど、その機械も全部解体しまう予定やと。
それで、建築の担当者と共謀して、機械の部品をいただいてきて、彫刻家の吉田和央さんにそれを使ってモニュメントを制作してもらった。
御影では六甲山の木々を継承したんやけども、中之島の場合は、その土地の記憶を継承したんやな。

こちらの「美団地」サイトで、そのモニュメントが紹介されている。→ http://www.ur-net.go.jp/kansai/vidanchi/urbane/

―地域に溶けこむことを考えると、必然的に団地の姿も違ってくるんですね。

福廣:そうやな。京都の花園団地の場合は、京都工芸繊維大学繊維学部の跡地やから、引き継ぐような樹木はあっても、暮らしというのはなかったんやけど、周辺の敷地も含めて見ていくと、妙心寺の塔頭がたくさんあって、その間を抜けていく道がすごくきれいなのが印象的やった。だから、団地ができた後も、団地の中に地域の人が安心して通れる美しい道をつくらんとあかんなと考えて、ちょっと低めの塀に挟まれた道をつくった。閉鎖するのでもなく、住んでる人のプライバシーもカバーしながら、地域の人も安心して通りやすい道にするためにな。

花園団地の散歩道についても、「美団地」サイトで紹介しています。→ http://www.ur-net.go.jp/kansai/vidanchi/hanazono/

―モニュメントとはまた違った、さり気ない地域への溶けこみ方ですね。

福廣:浜甲子園団地を建て替えるときに、住民さんの意見を聞こうと芦屋浜団地とここ(グリーンヒルズ御影)を見学してもらったことがあって。見学してもらうのはいいけど、ここみたいにしたいって言われたらどうしようかなと思ってたんよ。それはできんから。

―海のそばの平地にある浜甲子園団地と、ここグリーンヒルズ御影では土地環境が全然違いますから。

福廣:ところがな、芦屋と御影の団地を見て、浜甲子園に戻ったときに、住民さんがなんて言うたと思う? 「やっぱり自分のとこ、浜甲子園が一番いいです」って。住むというのは、そういうことやなと思ったよ。

―やっぱり自分が暮らす土地、環境がいちばんだと思えるようになるんですね。団地の植物はどうでしょう。たとえば、ひと団地につき何種類くらいの木々がありますか。

福廣:団地によって違うけどな。オレの先輩が「多属多種」、つまり、いろんな種類の植物を植えようと提唱したから、ここ(グリーンヒルズ御影)でも、150種近いと思う。低い木高い木をあわせてやで。

―積極的にいろんな木々を使ってるんですね。

福廣:その先輩は、「この木なんの木」というUR(当時は公団)に植わっている木の図鑑をつくった実績もあって、それを無料配布したらすごい人気になった。いまは、URを卒業されてポルトガルで農家民宿やってはるけど。

さすが福廣さんの先輩と言うべきか。前回、取材をした関西のグリーンマネージャーの遠藤冬樹さんに会ったときも感じたことだが、団地を支える裏方の立場にこれほど個性と意見のある人たちが存在していること。これって、UR団地のとても大きな財産だと思う。

福廣:団地の環境に対してURができることっていうのは、住んでる方のお手伝いでしかない。あくまでも住んでる人が主役。あと、これはオレの持論として、環境なんかを考えるキーワードは楽しさやと思ってる。きれい、美しいというよりも、「こんな木が育ってるんや!?」とかな。そういう楽しさも大事やな。

文:竹内厚 写真:沖本明

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