壁紙が住まいを変える
濱本廣一(壁紙屋本舗/WALPA)

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#2 世界各国、まだ見ぬ壁紙を求めて

―これまで、日本にデザイン性の高い壁紙が普及しなかったのは、買い付けと流通においてそういう意識がほとんどなかったからだと。その時点でフィルターがかかっていたんですね。

濱本:海外どの国へ行っても言われたのは、「オレらも散々チャレンジしたけど、日本は安くて白い壁紙しか売れない。お前もやめておいたほうがいい」って。「以前買い付けに来た日本人は、こんなの絶対に日本では売れへんって言われたぞ」とか。だから、世界的に見れば、日本は壁紙大国なのに、日本で壁紙が売れるってイメージが海外の人にとっては全くないんですよ。

―実は、壁紙大国なんですね。

濱本:そう、白い壁紙だけの(笑)。賃貸でも億ションでも、だいたいビニールクロスの白い壁紙が貼ってあって、ペンキの壁はほとんどない。壁紙の使用量では世界有数。そういう意味では、僕らは、逆に売れにくいものばかり選んでいます。じゃないと、おもんないでしょ。

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濱本社長と見つめあう、愛犬のアレサ

―売れにくいものを選ぶ、その発想がすごいですね。

濱本:これ何!? って壁紙を仕入れると、やっぱり年に1回、売れたらいいほうなんです。で、いつもデザイナーに嫌味を言われる(笑)。でも、しょうがないんですよ。万人に受けるデザインじゃないんやから。

―そこまでして、見たことないような壁紙を仕入れてくるのは、日本の平板な暮らしの風景を変えたいという意識もあってのことですか。

濱本:まあ、日本は型にはまろうとするよね。もっと自由でいいんじゃないのとは思うけど、それは売る方も楽してたってこと。今でも、どこかのデベロッパーさんや大家さんから、「うちの物件で採用するから、おすすめトップ3持ってきて」って言われると嫌になります。壁紙はすごくパーソナルなものだから、トップ3とかそういうことはない。

―自分の服を選ぶようなものですね。

濱本:もう服そのものですよ。夫婦でも壁紙選びでは大げんかになりますから。

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WALPA/OSAKAの洗面室を彩るのはYSD LONDONの壁紙。Yukari Sweeneyによるデザイン。

―とてもパーソナルな趣向が反映されるものだと思うからこそ、今まで見たことのないような壁紙を探しては、仕入れているんですね。

濱本:常に新しい発想でつくってるメーカー、デザイナーを世界中から探しています。3年越しで訪ねて行って、ようやく会ってくれた人もいます。やっぱり、日本では売れないと思われているので。
ただ、もうヨーロッパに行ってもシーンが確立しているので、小さなブランドが個性的な柄を発表して話題になったら、その翌年には各メーカーが一斉にそっちに振れてという状況で新鮮なものに出会うことが難しい。だから、次はアフリカやインドへ行きたいと思ってます。アフリカのファブリックって元気出るじゃないですか。

―まだ見ぬ種を求めて世界を巡るプラントハンターのような、開拓精神を感じます。

濱本:同じことをやってると飽きてまうでしょ。楽しくないし。今度は、台湾に実店舗を出そうと思っています。台湾も日本と同じで、壁紙もDIYの文化もまったくないんですよ。

―やっぱりない方へいくんですね。

濱本:だって競争がないでしょ(笑)。

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WALPA/OSAKAへは難波、大正駅から無料バスも。

―日本の住まい環境が変わっていく可能性のひとつとして、カスタマイズ賃貸やDIY賃貸など、壁紙を自由に貼り替えることも可能な、原状回復義務のない賃貸住宅がURの団地でもはじまっています。

濱本:いちばんアカンって言いそうなところなのに、それをOKするのがすごいですよね。今年中には、この近所(大阪・大正)にあるURの千島団地でも面白いことを始められそうですよ。
「TAISHO☆UPプロジェクト」 → http://ours-magazine.jp/journal/chishima-diy/

―団地でやることはインパクトありますよね。

濱本:他の大手の賃貸だと、トップ10の壁紙の中から選べるとか、何らか枠の範囲内でやっているのに、団地で自分の好きな空間つくってもいいってところまで踏みこんでいたりとか、賃貸でも自由に部屋をつくれることを知ってもらうための起爆剤としても期待しています。

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WALLPAPER MUSEUM WALPA/OSAKA
●大阪市大正区小林西1-15-12 10:30~18:00 無休(年末年始、お盆は休) 
050-3538-8903

→Yukari Sweeney インタビュー
 http://ours-magazine.jp/borrowers/yukari-1/
濱本社長も「いつも個性的な柄を発表している」と認める、ロンドン在住のデザイナー、Yukari Sweeneyさん。日本へやってきたところで、インタビューを敢行しました。

文:竹内厚 写真:平野愛


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。