3.幼稚園のころに手渡されたエッグベーカー

服部滋樹さんの実家のキッチンには、『おそうざいふう外国料理』など花森安治の料理本が並び、家には『暮しの手帖』が、たくさんあったそうだ。
母方のおばあさんの家にも同じく『暮しの手帖』が並んでいたそう。
花森安治が作った『暮しの手帖』、その教えは祖母から娘、そして、孫にも影響を与えた。

滋樹:食べるものについて、結構、小さいときから母親に言われてた。
祭りに行ってりんご飴とかおいしそうだし、食べたかってんけど、そういうものは食べさせてもらえなかった。

それでも、やはり小学生の頃は友達とこっそり教えを破ったことも。

滋樹:家では食べられないから、小学校の頃、駄菓子屋で10円とかで売ってるラーメンみたいな駄菓子を食べたり、すごい色のお菓子を「うめーっ」て言って食べてた(笑)。

そんな服部さんの台所&朝食に、花森イズムを感じるものがあった。 
エッグベーカーだ。

愛用しているのは出雲の出西窯のもの。

滋樹:エッグベーカーは、僕が幼稚園のときに母親が手渡してくれたもの。
中にバターを塗り込んで、火にかけて生たまごを入れて、5分くらいで出来上がり。
目玉焼きというか半なまくらい。今でも週2、3回は食べている。

エッグベーカーという道具も食べ物もこの日初めて見たけれど、確かに、これなら幼稚園児でもチャレンジさせられそう。
普通は大人のお手伝いで終わる料理が、ひとりで最初から最後までできるのは、子ども心にうれしくなるように思う。

滋樹:もらってからはとにかく自分で朝、これを作るのが、日課になった。
小学校くらいになるとこだわりが出てきて、バターをサラダ油に変えてみたり、バターを先に焦がして、そこにたまごをいれるとか、ひとつの道具でいろんな方法を使って、自分好みのアレンジをしながら自分が食べる物を作るというのがいいなって。

毎日作るから、おいしくない日もあったそうだ。
その理由はなにかを子どもながらに考えて、また工夫を凝らしてみる。そうして、また新しい発見をする。
目玉焼きの焼き加減や、塩加減、醤油派、ソース派と人それぞれこだわりがあるように、シンプルな道具だからこその発見、こだわりがある。
なんのルールもなく自由に発想できるから、よけいに奥が深い。

 
4.午前5時の食器棚作りへつづく

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