堀田裕介(料理開拓人) の住まいかた

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「料理開拓人」という一風変わった肩書きで、日本全国を飛び回る堀田裕介さん。
各地を旅して出会った、土地の生産者や食材をもとにした、食のモザイクアートとでも言うべきケータリングを実現するプロジェクト「foodscape!」や、食と音楽を組み合わせたイベント「EATBEAT!」などを展開しています。
そんな堀田さんが最近お引っ越し。実は、堀田さんの元同僚にあたる家具職人らが代々、リノベーションしながら受け継いできたという住まいだそうで。どんな空間なのか訪ねてみました。


堀田裕介
1977年生まれ。大阪・千里中央の団地に育つ。「食べることは生きること 生きることは暮らすこと」をモットーに、料理開拓人として全国各地の生産者を訪ねながら食の活動に取り組む。2015年、大阪・福島にパンとコーヒーの店「foodscape! Bakery」をオープン。今年は、4月1日に大阪府立中之島図書館内にカフェ「スモーブローキッチン ナカノシマ」をオープン、5月には愛知・岡崎でのフェス「森、道、市場」に参加予定。

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#1 14回目の引っ越し

ー男ひとり暮らし、想像していた以上におしゃれな住まいですね。

堀田:自分ではまったく設計とかできないので、設計士、照明プランナー、大工の友達に「ちょっと見て欲しい物件があるんだけど」って呼びつけて(笑)、自分の要望を伝えて、後は彼らが出してくれるプランやアイデアに、ほぼお任せでした。でき上がってみると、おしゃれな感じになりましたね(笑)。とにかく友達の力を借りまくって、ここまでたどり着きました。

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リノベーション期間は1か月半を見込んでいたものの完了せず。壁の塗装など、今も家作りは続いています。

ーいつ頃、この家に引っ越してこられたんでしょう?

堀田:引っ越ししてきたのは半年ほど前です。この家は、前の職場の同僚が住んでいたので、何度か足を運んだり近くにある同僚が借りていた倉庫なども見せてもらったりして以前から知っていたんです。その頃からいい家だなって思っていて、その後を引き継いだ住人が去年小豆島に引っ越すというので、じゃあ、俺が入るわという感じで。
家賃が安いこともありますけど、ガレージハウスのように外からそのまま家に入れる住まいに憧れていて、この家ならそれが実現できそうだったんです。大家さんに聞いたら、自由にリノベーションしていいってことだったので。

ーガレージハウスへの憧れというのは、いつ頃から。

堀田:今朝も釣りに行ってきたんですけど、小さい頃から釣りが好きで、あとキャンプもするし、バイクもスノボも。アウトドアが好きなんです。前の家はマンションだったので、遊んだ後に階上の自宅まで荷物を運ばないといけないのが、年を重ねるごとに面倒になってきたんです。

ー玄関とは別につけられた、もうひとつの扉からバイクが直接、家に入れるようになってます。確かにこれは家から外への敷居が低い。

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愛車のバイク「YAMAHA BRONCO」を入れたこだわりのガレージハウス。棚も作りつけでスノーボードのほか釣り道具、アウトドアグッズの数々

堀田:もともと引き戸の入口はなかったので、そこは改装して作りました。その室内も、もともと板の間の部屋だったのを土間のような空間にしています。そこに釣りの服をかけたり、道具類を並べられるような棚をつけてもらって。

ーいわゆる男の空間ですね。

堀田:まだ完成してないですけど、その土間の奥にはちょっとした作業スペースもできる予定です。釣りで使う疑似餌を作ったり、道具のメンテナンスをしたりというスペースにしようと思っています。

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ー友達にお願いしてるとはいえ、こんなにも自分に居心地のいい住まいづくりができるものですか。

堀田:一人暮らしは17歳の頃からやってますから。

ー17歳と言うと…。

堀田:高校卒業が決まった3学期の途中からですね。当時のバイト先と車の免許を取るために通っていた教習所が大阪の都島区にあったので、そこに近くて、とにかく家賃の安い物件を探して。当時は、どの町に住みたいとか、そんなことはまったく思ってなかった(笑)。

ー高校生の時から一人暮らしってかなり早いですね。住まいのことを意識しはじめたのはいつ頃からですか?

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キッチンはいたってシンプルで家庭的なつくり。とはいえ、調理道具や器は使い勝手の良さそうなものから食卓が映える作家ものまで、流石のセレクト。

堀田:23歳くらいですかね。大阪市内での一人暮らしを続けていたのですが、どうも居心地がよくないと思いはじめて、もともと住んでいた大阪の北摂に戻ってきたんです。千里のカフェで働きながら、家は箕面の一軒家。カフェのお客さんが持っていた物件でしたが、自分が出ていった後は潰してしまうから好きに使ってくれていいってことで、ものすごく手を入れて、その頃は庭で畑もやってました。

ーそんな住み心地のよさそうな家から、またどうして引っ越すことに?

堀田:仕事が変わるタイミングで家も変わってるんです。飲食業はどうしても労働時間が長くなるので、職場と家が離れすぎていると、環境的によくないんです。夜遅くに遠くまで帰ってただ寝るだけという暮らしは、ほんとに疲れますから。

ー住まいの第一条件が職場との距離なんですね。

堀田:そうです。だから、一人暮らしをはじめて20年になりますけど、引っ越しは14回やってます。1年も住んでないところも結構あるんじゃないかな。

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右の扉がもともとの玄関。左が新たに作られた扉。昭和30~40年代の建物で、美容室を経て住宅にリノベーションされた。

ー引っ越し魔ですね(笑)。

堀田:一番長く住んでたのは大阪・豊中市のマンション。その次が、箕面の一軒家で、3年くらい住みました。今の家の前に住んでたのはマンションで、引っ越ししたいなと思い続けていたんですけど、いい物件がずっとなくて。だから、この家が空くって聞いたとき、住みたいなって思いました。

ーでも、今の住まいは職場までちょっと距離がありますね。

堀田:昔と比べて、今は働きかたが大きく変わりました。昨年、オープンした「foodscape! Bakery」に事務所もキッチンもありますけど、僕の仕事は基本的にさまざまな土地を訪ねることが多い。極端に言えば、毎日のように職場が変わるので、新幹線の駅や空港に近いとか、そういった移動の便利さの方が大事なんです。そう思うと、全国各地へのアクセスが良くて、生活環境としてうるさくないこの家はとても理想的なんです。

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文:松村貴樹 写真:平野愛 編集:竹内厚

14回目の引っ越しで、理想の住まいにたどり着いた堀田さん。次回は、暮らしと住まいの優先順位を住空間の中でどの表現されているのかを伺います。


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。