大家さんと賃貸住宅、まちの話
青木純(大家/都電家守舎)

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#4 まちへの責任に気づいた人

―青木さんの活動はひとつの賃貸マンションから共同住宅、そして、まちへと広がっています。まちとの関わりについて、最後に教えてください。

青木:はじめは、大家の世界に閉じこもってちゃいけないという使命感から、まちの活動に参加していましたけど、そのうち素直に思うようになってきたことがあります。大家さんとして、自分の建物のことだけ考えていても、そのまちの魅力が失われたら、結果的にすべて台なしなんですね。まちの活動に参加して、エリア価値を高めることは、つまり、自分の建物の価値を上げることに直結しているんです。だって、これからどんどん人口縮退の時代を迎えるわけで、10年もすれば空き家だらけ、無個性なまちにどれだけの人が住んでくれるのかって思えばね。

―ひいては自分のためにも、なんですね。

青木:持続的に活動している方はだいたいそうじゃないですか。自分のやりたいことだから、周りに伝播する力や推進力も高いんだと思います。海外のいろんなまちの事例も見てきましたけど、たとえば、アメリカだったら地域のために活動することはもっと当たり前で、小さい頃からそういう意識で育てられてますよ。むしろ、地域のために活動することにどうして目的を問うんだって話です。

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―それくらい当たり前の話。

青木:あと、最近よく話をするのは、まちづくりというのは、未来へのバトンなんですね。個性的なまちにすること、次の世代へ受け継ぐこと。そして、大切な記憶として、たとえば子どもたちの心にのこったり、無意識に学ぶ機会になっていると思うんです。そういう意味でも、やったほうがいいし、やらなきゃいけない。

―大家さんだからというよりも、もはや全員に当てはまる話ですね。

青木:そうですね。だから、僕らは、まちへの責任に気づいてしまった人のことを「家守(やもり)」と呼んで、何人かで会社をつくったり、空き家でスモールビジネスをはじめてみたり、そういう活動を集積してみたりってことをはじめてるんです。

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―青木さんの名刺にも「都電家守舎」という肩書きがありますね。

青木:僕は、「北九州家守舎」にも入ってるので、ふたつの家守会社で取締役を務めています。誰かがやると続いていくんですよ。ロイヤルアネックスの住人の中にも、家守になろうとしてる人がいますし。別の仕事をやっててもいいんですよ。それぞれ別の強みを持った人間でひとつのチームをつくって、まちを動かしたり、まちの個性をつくっていけばいい。

―家守、まちづくりという活動においては、大家さんをはじめ、あらゆる職能を活かすチャンスがあるわけですから。

青木:そう、どんどん境い目はなくなっている気がします。たとえ行政の職員だって、生活している場所にいけば、ひとりの住人ですから。ロイヤルアネックスの中で「としま会議」って、このまちで活躍している人を毎月呼んで、話を聞いていたんですけど、その関係で、近所にある「南池袋公園」を再生しようってプロジェクトにも参加させてもらいました。まちに顔なじみができることで、まちへの愛着が強くなりましたし、そういうプロジェクトのようなキッカケも生まれるんですね。自分で一歩を踏み出せば、必然的にそういうステージがやってくるんです。

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文:竹内厚 写真:平野愛


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。