“珍スポトラベラー”を名乗る
金原みわに新世界で聞いたこと

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珍スポットトラベラーとして、雑誌やwebマガジンで連載を持ち、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組も人気上昇中。だってそれも当然、かわいいルックスにして行き先はコアでディープ、それを伝える原稿は熱と情にあふれてるときたら、もう誰だって放っておきません。

昨年、仕事を辞めて珍スポトラベラーに専念と語っていたみわさんですが、どうやらそのあたりの状況も変わってきた模様。好奇心あふれる彼女と大阪の新世界を歩きました。


金原みわ
1986年生まれ。全国の珍しい人・物・場所を巡るポータルブログを運営(http://kaneharamiwa.club)しながら、数々のイベントを主催。著書に『さいはて紀行』『日本昭和珍スポット大全』。ラジオ関西での番組『金原みわの珍人類白書』(水曜・21:30)は今春、書籍化も。

#1 好奇心と冷静さのあいだで

金原みわのウェブサイトを見ると、なかなか香ばしいタグが並んでいる。ストリップ/像看板/ラブホテル/パン/商店街/刑務所/自販機/トイレ/グルメ/奇食/巨大仏/アイドル/喫茶店/戦争遺跡/ステンドグラス……。
こうなってくると、パンって何のことだろうと思ってしまうほどだが、彼女はもともと旅行好きの女子大生だったという。

みわ:学生時代は今ほど旅行してたわけじゃないですけど、青春18切符で宿坊を巡ったりしてました。いっぱい旅をするようになったのは、社会人になってから。

―宿坊というのもなかなかシブいですね。

みわ:普通のとこも好きなんです。最近だったらVRのゲームセンターとかUSJとか、はやりの場所にも行ってます。

―ちなみにUSJのオススメは。

みわ:うーん、普通にフライングダイナソーかな。USJにも珍たる要素がありますけどね。夏限定の企画だったと思いますけど、ターミネーターを見てたら、突然、司会の女の人が「キャー」って叫んで、電気が消えて、貞子があちこちに現れるんです。4D施設だからイスがガタガタ揺れて、蒸気が上がって。

―世界観が複雑ですね。

みわ:USJのごちゃごちゃとしてなんでもありな感じ、大阪らしいですよね。めっちゃ面白いと思って、その日のうちに年パス買っちゃいました。

彼女が珍スポトラベラーとして活動するようになったのは、ほんの5年前。写真展を開くことが決まったときに、自分でその肩書きを選んだそうだ。珍スポット。どういう意味だろう。

みわ:実は、私にとって珍しかったり面白かったりすればなんでもいいんです。だから、私にとってユニバも珍スポです。

―珍スポと言われたら、もっと変な場所だと思う人も多そうです。

みわ:狭い意味で捉える人もいるだろうし、私に求められるものも年々ハードルが高くなってる気はしています。だけど、明確な珍スポットの定義があるわけでもないし、私にとってはこの世のほとんどが珍スポットみたいなもんだから(笑)。最近、ちょっと窮屈になってしまってたところもあるので、もっと自分に素直にいこうって思ってます。

世間の「普通」からはるかにかけ離れた珍スポットもあれば、日常の中に見つかる珍スポットもある。
たとえば、web記事をまとめた最初の著書『さいはて紀行』で訪ねているのは、最高齢ストリッパー、街でよく見かけるキリスト教看板の総本部、ゴキブリをメニューに出す中華料理店、タイのゴーゴーバーなど、極北で最果てサイドの珍スポット。そんな強烈な現場にも「日常」を見出してしまうところが、彼女の個性ともいえる。

みわ:珍スポットとされる場所の人って、誰も自分では変だと思ってない。しかも、周りに何を言われても、どう思われても、これが正しいんだって成し遂げてしまう。やっぱりすごいんです。

―珍奇な部分をアピールされるのも、よくよく話を聞いてみればその方のサービス精神だったりして。

みわ:そうなんです。みんなに喜んでもらいたいから。だから、私は記事にしている珍スポの人たちはみなさん尊敬してます。私にはできないことをしている人も多いから。

―といっても、入るのをためらうような場所だったり、話しかけにくい人だったりすることも多いと思います。平気ですか。

みわ:いやいや、入ろうかどうしようか店の前をうろうろとしたりもしますよ。で、えいっ!と飛びこむ。しかも私、すごい人見知りなんですよ。だけど、人は好き。だから、飲み屋でおじさんが隣りに座って、話しはじめたら、自分の話をするのはイヤでも、管巻いてるようなおじさんの話とか、おじさんの悩みだったらずっと聞いてたい。なんなんでしょうね、私。

―本のなかでは「いつか私は好奇心に殺されると思う」と書かれてました。

みわ:好奇心に従えばどこまでもいけちゃうと思うんです。といっても、私はどこか冷静で、これ以上行ったら戻れなくなるぎりぎりの場所で向こうをのぞいて帰ってくるんですよ。

―自分自身では冷静なところもあると。

みわ:そうそう。でも、ギリギリなところに近寄ると引っ張られちゃうので、しっかり自分を保たないとあかんなとは思ってます。

みわ:だから昨年はインタビューとかに答えて、薬剤師を辞めて珍スポトラベラーに専念しますって言ってたんですけど、実は、また薬剤師の仕事をはじめて。

―ちゃんとバランスをとってるんですね。

みわ:結構まともなんです(笑)。薬剤師としてのキャリアも自分でできる範囲ではしっかり積んできましたし。

―それにしても、珍スポトラベラー専念宣言から、再就職するまで早かった。

みわ:ですね(笑)。珍スポトラベラーだけではなかなか…私も強い人間じゃないんで。

―珍スポットだけしかない日常では、みわさんが感じる珍しさ、面白さがやや目減りするところもあったのでしょうか。

みわ:確かにそうかも。普通を知らないと何が普通じゃないのかもわからなくなってくるので。たとえば、旅をしていて海沿いを走ってたら、ブイに絵を描いたりアートみたいにしてるおじさんがいて、最初見たときには「うわ~!」って興奮するんですけど、沿岸部にはその後もブイアートをやってるおじさんがいっぱいいたりするんですよ。おじさん同士の交流があるわけでもないのに。

―次々とブイアートが見つかってくる。

みわ:そうです。人間は海沿いに生活をするとなぜかブイアートをつくってしまう。すると、やっぱり私の感動はどんどん薄れていっちゃうのかもしれない。

取材・文:竹内厚 写真:バンリ

#2 珍スポトラベラーの日常
平日の昼からあちこちからの観光客が飲みはじめている大阪の新世界。楽しい街です。次回は金原みわさんの住まいについて、ラジオ番組について。新世界ぶらぶら撮影も続きます。


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