“珍スポトラベラー”を名乗る
金原みわに新世界で聞いたこと

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#2 珍スポトラベラーの日常

金原みわさんがこれまで訪ねた珍スポットは全国1000か所以上。日本の気になっていた場所はもうほとんど訪れたそうで、次はお祭りだったり、海外にも照準を定めて、珍スポトラベラーとして第2ステージを迎えようとしている。そんな彼女の住まいについても聞いてみた。

みわ:前は車で生活しながら珍スポを巡ってたので、よく車で寝てました。車で寝袋。でも、それを続けていたら体調が悪くなってしまって。少しでも環境をよくしようと思って、マットレスを買って、いい布団と枕を持ちこんで、寝る環境を整えました。

―車内の話ですよね。

みわ:そうです。あとは、1日の終りにお風呂に入るのが重要だと気づいて、旅先でも銭湯か温泉を探して入るようにしたら、だいぶ回復するようになりました。

―車生活でもちゃんとするってことですね。ご自宅はどうなんでしょう。

みわ:家はね、これ言ってないというか、誰が興味あるねんという話ですけど、今度、結婚するんです。なので今、住まいが実家と新しい家とふたつあって行き来してるんです。

―そうなんだ!

みわ:ひとつ変なこだわりみたいなのがあるんですけど、実家の布団は寝袋なんですよ。新しい家はしっかりいい布団なんですけど。

―実家では寝袋生活。突然、話の先行きがわからなくなってきました。

みわ:原稿を書くときとかに、あまりふかふかの布団だったらうまく書けないというか。心を尖らせるために…ってほんと、何でしょうね。心が安らぎするとダメなんです。

―あ、でも快適すぎる実家では書けないってわかる気がします。

みわ:そうですよね。だから、新居でも原稿書くときは、布団に入らないでリビングのこたつで寝てます。やっぱりどこかに尖る環境をつくっとかないと(笑)。

服のスタイルは「気に入ったものしか着ない」。スカートは天六の商店街で50円で買ったもの。

珍スポトラベラーという肩書きだけ知ってる人は気づかないかもしれないが、彼女は数多くの珍スポットを訪ねるだけでなく、その記録をグッとくるテキストで伝える名文家。世間的には強烈でトンデモナイとされる人たちとの出会いも、自身の見たこと思ったことを真ん中に置きながら、絶妙な間合いで綴られている。書く環境も大事に違いない。

夏はビーサンでどこまでも行く。東京だって。

一方で、1年半前からラジオ関西で始まった番組『金原みわの珍人類白書』では、ホストとなって週替りの強烈なゲストたちとトークを繰り広げ、この3月には収録の一部をまとめた書籍も発売された。

―ラジオ番組のホストとしてゲストを招く立場。旅とはやっぱり違いますか。

みわ:進行を考えながら話さなきゃいけないので、大変なところもあるんですけど、ひとつ心がけているのは、テレビ番組で時々あるみたいに「変人」という扱いじゃなくて、どうしてそれを続けてるのか、ハマったきっかけは、魅力は何なのか。しっかり語ってもらうように考えています。新しい人に会うほどどんどん世界が広がっていく感じがして、面白いですね。

「ナスカジャン」もお気に入りの服。

―それにしても、毎週よく「珍人類」が見つかりますね。

みわ:毎週なのでもう70人近いゲストに来ていただきました。もう出てもらう人がいなくなるんじゃないかといつも思ってるんですけど、それでも、結構いはるんですよね。私としては、肩書きも何もない、飲み屋で知り合ったおじさんが武勇伝を延々聞かせてくれるのでもいいし、弟がゲストでもいいなと思ってるんですけどね。

―ゲスト、弟。いいですね。どんな人にも「珍人類」要素ってありますから。

みわ:私のおばあちゃんとかね。そこまでしたらあかんのかな。私の弟はエグザイルがすごく好きで、J Soul Brothersかなにかのテストを受けたこともあるんですよ。

―おお、どんなテストか知りたい。

みわ:EXILEのヒロさんが審査員として前に座っていて、そこで歌うらしいです。

―緊張する…。おばあちゃんはどんな方ですか。

弟は容姿がとても似ているそう。

みわ:なんでも捨てない性格で、手芸がすごく好きなので、「これ、あんたの着てた服を人形にしてみたんやけど」とか言って、よくつくったものをくれます。こないだも、おじいちゃんが亡くなって、おじいちゃんのスーツをフクロウにしたって。

―スーツをフクロウにしちゃうんですね。

みわ:ポストカードとか入るポケットもついてたり、一応ちゃんとしてました。

―売れそうだ。

みわ:私もそう思って提案してみたら、「いや、そういうのじゃないんよ。あげる人がいるからつくるねん」っていい話みたいに言ってました。

―おばあちゃんも番組ゲストとして全然いけそうですね。

好きな食べ物1位は魚卵、2位は実家のお好み焼き。

トンデモナイ場所をいくつも訪ね、強烈な体験の持ち主でありながら、いやだからこそ、誰もが覚えのある日常の延長でも針が敏感に触れる。先に紹介した『さいはて紀行』に出てくる最後のエピソードは、自身のおじいさんの通夜と火葬の話だった。

みわ:普通も面白いし、普通の中にあるほころびみたいなのも好きですね。私、くら寿司が好きなんですけど、店で延々とフュージョンみたいな音楽が流れてるから気になって。調べたけどわからなかったので、本社に問い合わせたんです。

―理由はなんでしたか。

みわ:リラックスして寿司を食べてもらうために、すでに亡くなったフュージョン界のミュージシャンの有線チャンネルを流してるそうです。私としては寿司にあわない気もするんですけど…そういうのも好きですね。

一方で、「奇食」イベントを主催するなど、あらゆるものを口にしてもいる。

―日常にもいろんな珍スポがありますから。

みわ:そうですね。でも、狭い意味の珍スポットもほんとに好きで、陽石関係は全国ある中でも相当巡ってます。

―コンセイサマやリンガなどと呼ばれる、あれですね。​

みわ:あまり他人と比べたりしないようにしてますけど、たぶんそれは異常に行ってると思いますよ。

もう、まともがわからない。普通と書く前にためらいが生まれる。そうやって基準が揺らぐことはとても楽しい。

取材・文:竹内厚 写真:バンリ


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