川﨑仁美(盆栽研究家)

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#3 もっともっと文化としての盆栽を

話を聞いていくにつれて、盆栽もそうですが、川﨑さん自身にも興味津々。この機会に盆栽のこと、川﨑さんのこと、まとめてあれこれ伺いました。

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―盆栽研究のために、庭師、ガーデナーとしての体験も重ねているのを知って、川﨑さん自身への興味もますますわいてきました。川﨑さん自身では、盆栽は育てられてないんですか。

川﨑:最初の4年くらいは、ベランダに30鉢ずらっと並べてやってました。だけど、やればやるほど、職人さんがすごいことやってはるというのがわかってきました。なのに、そのすごさを紹介したり、伝えるような仕事が周りで見当たらなかったので、21歳のときに独立して盆栽研究家になったんです。それからは、自分では盆栽はつくっていません。

―独立された頃とは、また盆栽を取り巻く状況も変わってきましたね。

2010年にさいたま市大宮盆栽美術館もできましたので、いまでは盆栽専門の学芸員もおられます。埼玉の大宮には、昔から盆栽業者が集まっている盆栽町があるんですけど、埼玉が観光客の誘致や盆栽の輸出など、盆栽にすごく力を入れはじめています。

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もみじ 銘「出猩々」

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けやき

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姫しゃら

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日本の盆栽の樹種はさまざま。寒桜/以上、さいたま市大宮盆栽美術館所蔵

―波平さんが趣味でチョキチョキやってるような盆栽イメージも、まだまだ根強くあります。川﨑さんに教えていただいたような、盆栽の文化的な側面まではなかなか知ることができません。

そうですね。多くの物事がそうですけど、文化的な面とお商売の面とがあって、そこはどうしても平行線です。盆栽も、ビジネスとハウツーの面に関してはかなり進んできましたけど、盆栽とは何かというようなところはまだまだ伝わってなくて。

―きっと盆栽ブームだという海外でもそうなんでしょうね。

どうしても、見た目の形が先行しています。

―川﨑さんは、現場に足を運びながら、研究を進められていますけど、たとえばどういった研究内容になるんでしょう。

そもそも盆栽のオリジナルは中国にあって、禅宗といっしょに日本に入ってきたとされています。だから、禅やお茶の文化とも共有している部分があって、日本文化の根底につながるはずなんです。だけど、盆栽のそういう文化面はまだまだ研究されてなくて、別ものになっている。ので、そこをつなげたいと思って、大学では史料を読みこんだりしています。

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―職人と商売人だけの世界だと、なかなか文化的な側面を追求するのは難しそうですもんね。

すごい盆栽職人さんがたくさんおられますし、そういう方々にいろはを教えていただいたのがはじまりなんです。だから、職人さんのできないことをするのが私の役目。フットワークを軽くいろんな現場を見てまわりながら、大学で博士号を取得して、ちゃんと説得力を持って話せるようになりたいですね。

―盆栽の伝道師だ! それでは最後に、盆栽を楽しむための方法があれば教えてください。

先ほど話に出た「大宮盆栽美術館」は日本初の公営美術館で、常設で観ることができます。展覧会としては、2月に上野の東京都美術館で行われる「国風盆栽展」が、日本最高峰の盆栽が並ぶ機会になりますけど、これに次ぐのが11月に京都のみやこめっせで開かれる「日本盆栽大観」、1月の「小品盆栽 雅風展」です。

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五葉松

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幹の大部分は枯れているという。それでも青々と。真柏/以上、さいたま市大宮盆栽美術館所蔵

―盆栽の展覧会というと…。

全国からそのときどきの名品が集まりますので、伝統的なものも、いまの流行にのったものも、いろんな盆栽が一度に見られます。

―義務教育やないんやから、ということで、盆栽の意味や文化まではまったく教わってきませんでしたので、今日はとても勉強になりました。

これは盆栽に限りませんけど、こんな大変さがあるからおもしろいんだとか、自分にフィードバックさせるのが大切なことで、ちゃんと理解が深まれば、きっと長く続けていけるんでしょうね。

→川﨑仁美さんは京都工芸繊維大学博士課程に就学中。春風社から著書の刊行も決まっています。そちらもお楽しみに。

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文:竹内厚 写真:平野愛
取材協力:長楽館(京都・円山公園内)

GUIDE

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さいたま市大宮盆栽美術館
●世界初、公立の盆栽美術館として2010年に開館。盆栽はもちろん、盆器や水石など、盆栽をとりまく資料の収集にも力を入れる。今回、掲載をした盆栽画像はすべて同館所蔵のもの。なお、盆栽はさいたま市の伝統産業に指定。2017年には「世界盆栽大会」がさいたま市で開かれることも決定している。
http://www.bonsai-art-museum.jp/


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