黄瀬徳彦(TRUCK FURNITURE)

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#3 好きなものしか置かない

「TRUCK FURNITURE」が旭区・新森へ移転してすでに8年。シンプルに毎日木を見ることができる環境をつくりだした黄瀬さんに、家具職人として、暮らしの中で考えていることをお聞きしました。

#1 はこちら
#2 はこちら

―お店の横に立つ住居。こちらは、さすがに手作りというわけではないんですよね。

黄瀬:いや、できるところはやりましたよ。大まかな設計は自分でやりましたし、内装もできるところはやった。

―20年前の玉造では自身で解体、改装してすごく楽しかったとおっしゃってましたが、新しく家をつくるにあたって目指したことはありますか?

黄瀬:前はもともとある建物をどう使うかでしたが、ここは何もないところで、ゼロからつくらなければならない。何をどうするか、考えに考え抜きました。よっしゃキタ!とアイデアがひらめいても、次の日にはやっぱり違うわって考え直したり。

―建築士の資格は持ってらっしゃる?

黄瀬:持ってない持ってない。素人ですよ。素人が作るとどうしても窓が多くなるんです。結果、壁が少なくなって、置きたい家具も置けない(笑)。だけど、どの窓からも木がいい感じで見えるよう、3Dで想像しながら考えていきました。だから、いろんなエッセンスが入っています。たとえば、法円坂住宅のような1950年~60年代に建てられた団地がすごく好きなので、庇はそれっぽいデザインが取り入れられています。

―玉造時代からそうでしたけど、古くて味のあるものがたくさん置かれてますよね。

黄瀬:もちろん古いものは好きですけど、別に古いテイストを狙っているわけではないんです。昔は大型ごみの日があって、よくいろんなものを拾ってきましたけど。

―拾ってきた!

黄瀬:そう、捨ててあったタンスを白く塗ってキャスターつけて使ったり。ソファが捨ててあるのを見つけて、バイクのDAXに乗せて、その上にまたがって持って帰ってきたこともあります。後から取りに来るのではなく、見つけたら「今や!」って。

―木だけでなく、捨てられた家具も生き返らせる(笑)。

黄瀬:これいいなと思ったものは、持って帰りました。

―木のお話もそうですが、暮らすにあたって、好き嫌いを明確に持っていることは大事だなと思います。

黄瀬:普通みんな持ってるもんじゃないですか? よりよい暮らしのためのアドバイスとかをよく求められるけど、わからないんです。僕ら、好きなことをして、好きなものが集まってきているだけ。すごくシンプルですよ。

―好きなものは好き、でいい。

黄瀬:そうです。うちは最初から好きなものしか置いてないですから。いらんもんはいらんし、落ちてるものだろうが、いるものは拾ってくる。断捨離が流行った頃、パートナーの唐津は「なんでそんなに捨てたいものがあるんや!」って、半分怒ってましたから(笑)。おかげでモノは増え続けるばかりですけど。

―イヤなものは家の中に何もないと。

黄瀬:いま、娘が鉄棒にはまっていて、ついにマイ鉄棒を買うことになったんですけど、青いポールがどうにもイヤで、スプレーで黒に塗ってから家に入れました。派手派手なティッシュの箱もどうにも許されへんなあと、カーキ色のテープでぐるぐる巻きにしたり。そういう積み重ねはあります。

―たしかに、ティッシュの箱って余計なデザインが多いですね。そう思っていても、なかなか我慢しながら使ってしまうんですけど。

黄瀬:たまに、家を見た人から「こういうカッコいい雰囲気を保つのは疲れません?」と言われることがあるんですけど。あーそういう発想があるのか、逆やなと。僕らからしたら自分の満足でやってるだけで、人に見られるからやってるわけじゃないんですよ。

―家にいらんもんがあるほうが疲れる。

黄瀬:好きなものだけを置く。それだけで家は変わると思うんです。家具屋をやってると、「こういう素敵な家具を部屋に置きたいけど、新しい家に移ってから買おう。今の部屋では…」ってよく聞くんですが、それって違うんじゃないかな。たとえば、ひとつ好きなソファを買って部屋に置いたら、そこから部屋が全然変わってくるんです。それに似合う照明を隣に置いて、色は茶系で統一して…と空気感がグッと違ってくる。

―やはり家具って、家の中で一番存在感があるから、影響力もありますよね。こちらへ移転して8年、家具づくりは変わりましたか?

黄瀬:なんにも変わらないんじゃないんですかね。その時その時で旬みたいなものはありますが、あっちいったりこっちいったりすることなく、基本は玉造にいた頃から一緒。やっぱりシンプルです。

TRUCK FURNITURE
●大阪市旭区新森6-8-48
https://truck-furniture.co.jp

文:蔵均​ 写真:佐伯慎亮 編集:竹内厚


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