不動産屋じゃない、けど不動産のこと
キタムラカオリ(hygge.)

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#2 郊外でしかできない、ささやかなこと

川西・能勢・池田を中心に、個人で物件のマッチングをしているキタムラカオリさん。
今回は、気になる物件の探し方、そして、郊外だからこそできることについて聞きました。

#1 はこちら

―どんな方法で物件を探しているんですか。一般的には、とりあえずネット検索だと思いますけど。

キタムラ:もちろんネットも見ますけど、基本的には歩いて探しますね。まず、地図を見てエリア決めて、実際に町を歩いて、気になる物件を見つけたら全部チェックして、家に帰ってからそれが流通しているかを調べます。

―地図を見て、いい物件があるエリアなんてわかるんですか。

キタムラ:わかるとは言えないけど、自分の触手が動く場所ってあるんですよ。たとえば、山が近い、坂がある、眺めがいい、川が近いとか、そういう付加価値みたいなものが何かありそうなところを見つけるんです。町中だったら古い商店街の裏手とか。最近は、Google Mapで地形もわかりますし、だいたいのあたりまではつけられます。

―そうなんだ。でも、気になる物件を見つけても中は見れませんよね。それ以前に「賃貸」とかの看板が出てないと、空き家かどうかもわからない。

キタムラ:それもわかりますよ。たとえば、庭が手入れされてるかとか、雨戸が締め切ってあるとか。電気メーターの紙もヒントになるし、一番わかりやすいのは郵便ポスト。まあ、だいたい家が呼吸してないという雰囲気でわかりますけどね。そういうのも含めて感じるために、気になる物件を見つけたらまずその前に立ちます。しばらく立ってみてどう感じるか。中を見ることができなくても、なんとなく町の雰囲気や、歩いてる人の様子も含めて…って、知らない人が見たらちょっと危ない人かも(笑)。

―話は変わりますけど、ご出身が川西ですか。

キタムラ:生まれも育ちも大阪の十三です。木川っていう、数年前まで某ストリップ劇場があったあたり。

―なかなかこってりしたエリア。

キタムラ:思いっきりこってりですよ。実はすごく住みやすいんですけどね。箕面でお店を始めるまでは、大阪の北摂からこの川西あたりのことはよく知らなかったです。

―川西に移ってもう10年以上。十三とはずいぶん町の雰囲気は違いますよね。

キタムラ:もちろん気に入ってますよ。特に何があるわけでもないですけど。単純に環境がいい。静かで、緑も多くて、引っ越してきた頃は、静かすぎて逆に眠れなかったくらい(笑)。

―都会育ちの反動で、郊外暮らしに憧れがありましたか。

キタムラ:うーん、どうでしょう。最初の店が箕面だったっていうのも大きいですけど、郊外と自分のリズムが合ってるなとは感じます。そんなにガツガツしてる方でもないんで。
あと、自分のやりたいようなことはどうも町の中では埋もれてしまうんじゃないかっていうのもあります。「そんなこと誰でもやってるやん」みたいなことでも、同じことを郊外でやると、自然やロケーションのよさとか、いろんな付加価値がついてきて、なんとなくプラスアルファでよく見えたりするんです。週末しか開いてない、アクセスが全然良くないお店だったとしても、わざわざ時間をかけて都会から来てくれたりもする。
ビジネスとして成立させるためにあえて郊外を選ぶ人も今では少なくないですけど、私は、むしろ郊外でしかできない、ささやかなことをやろうとしてる人に興味があるし、そういう人の力になって物件のマッチングができたらいいなと。

―実際、ここ10年くらいで川西あたりには、ある意味で商売っ気のうすい店や、自分のペースで創作している人のアトリエやギャラリーなどが増えましたよね。キタムラさんがマッチングを手掛けたものや間接的に関わったもの少なくないと思いますけど、今のような状況は意識的に仕掛けようという思いがありましたか。

キタムラ:「まちづくり」みたいなことがしたかったわけではないですけど、ぼんやりとこんな風になればいいなという気持ちはあったと思います。自分の近くに気の合う人や、同じようなテンションで何かやってる人がいるのはやっぱり楽しいですし。
それに自分で住んでいる町や隣接する町の範囲で、いろんなものがぐるぐる回ったらいいなっていうのは、昔から言ってましたね。食べるものも、見るものも、着るものも、ここらへんで全部がぐるぐる回っていれば。いわゆる「地産地消」みたいな話ではあるんですけど。なので、自分のお客さんには、ぐるぐる回す相手として近くに越してもらっているっていうのもありますね(笑)。

まだ行ったことないんですけど、韓国のソウルにソンミサン・マウルっていうエリアがあるそうです。小高い丘に住宅地が広がって、川西のように歩いてすぐに森があって、そこに、ここ20年くらいで地域の中でいろんなものが回る仕組みができてきたそうです。地元の人が運営するスーパーができたり、学校、カフェ、劇場、コーポラティブな感じの住まいもできて、そこで暮らしている人たちが地域の環境や暮らしを守っているって記事を読んだことがあります。
このあたりが同じようにはならないんだけど、でも、いつかそういうことができるようになったらいいなって想像したりはしますね。

→次回は、キタムラさんがマッチングした物件で活動する、ナナコちゃんのアトリエへ。


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。