小泉寛明(神戸R不動産/有限会社ルーシー)

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#2 仕事は自転車10分圏内で

―神戸R不動産の運営や物件仲介以外に、会社としてはどんな動きを?

小泉:いろいろやってますけど、最近力を入れてるのは「ファーマーズマーケット」です。神戸・三宮の南側に東遊園地という大きな公園があって、そこで神戸市内の農家さんに声をかけて農作物の販売を中心としたマーケットを開催しています。2015年の夏と秋に開いて、2016年は春から秋までほぼ毎週土曜日にやってますね。他にも、移住してきた人のためのシェアオフィスの運営や、阪急電車の高架下に工房街を作ろうというプロジェクトとか、あと、僕たち自身もオフィス近くの小さな空き地を借りて農園をやったり…話しはじめるといろいろあります(笑)。

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―神戸R不動産という出発点からは、かなり遠い活動が増えているという印象を受けます。

小泉:気持ち的にはずっと同じことをやっている感覚ですよ。もちろん、僕らも生活していくための基盤として不動産の仕事は外せませんけど、そもそも不動産業だけをやりたかったわけじゃない。むしろ個人的には、本来やりたかったことができるようになってきたなと思います。

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オフィスから歩いて5分くらいの農園へ。

小泉:「ファーマーズマーケット」もその他の動きにしても、一点集中というのか、だいたい自転車10分圏内の範囲で仕事をしています。最近は、自分たちの仕事を「エリアデベロッパー」と呼んでますけど、とにかく自分が住んで活動しているエリアに絞って、申し訳ないけど、それ以外の仕事は基本的に受けないようにしています。その代わり、エリア内のことだったら何でもしますよと。農園も作るし、ファームスタンドみたいなこともする、なんなら自治会の仕事も引き受けます。ほぼ、“何でも屋”ですね。

―ぶっちゃけ、お金にならないことも多いのでは。

小泉:まあ、そうですね。半分くらいはほとんどボランティア的な仕事です。でも、そういう動きをきっかけに、いろんな意味で地域が良くなって、移住したいっていう人が増えてくれば、将来的には不動産仲介業に繋がっていくと思っています。あと、非営利な動きでも頑張って続けるうちに行政が応援してくれたり、一緒にやろうって言われるようにもなりました。「ファーマーズマーケット」に関しては、今年から社団法人を作って、神戸市と共催という形でいろいろサポートしてもらっています。ちょっとずつだけど、お金が循環する流れが生まれています。

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農園は自然農法スタイル。農薬・肥料を使わず、除草もしないとのこと。

―どこまでがビジネスで、何がボランティアって話じゃないですね。互いに折りこみ済みというか。

小泉:やっぱり何をするにしてもお金が回らないと、続かないし広がってもいかない。そういう意味では、不動産仲介っていう、人が移住してきたり、場所を動かすことで収益をあげることができるツールがあることはすごく大きい。だからいろんなことにチャレンジできるし、逆に、それがなければ「仕事じゃないと無理です」ってなりますね。
自分の町が良くなればいいなっていうのは誰でも思うことだし、そのために自分ができることをやろうという人もたくさんいると思います。ただ、それで生計を立てたり、会社を切り盛りするっていうのは、実際、なかなか難しい。だから、一般的には行政が税金を使って動いてますけど、僕らは、それを民間でやろうとしてます。外から人が入ってきて動くことで僕らも食っていけるわけで、そのために非営利と営利の間を泳ぎながら、やれることは何でもやるという感じですね。

―ちなみに、小泉さんがエリアデベロッパーとして活動している自転車10分圏内が変わってきたという実感はありますか。

小泉:まあ、自分の尺度ですけど、少しずつ良くなってきてると思いますよ。

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―具体的にはどんなところでしょう。

小泉:たとえば、地元で採れた野菜がほしいなと思うと、近くで「ファーマーズマーケット」をやっているとか。

―あはは、自分がほしいから作るんですね(笑)。

小泉:そう、戦略とかビジョンとか細かい話はいろいろありますけど、いちばんベースの部分では自分がこうなったらいいなということを仕掛けていって、その結果として町が良くなり、周りに面白い人が増えたらいい。単純に言えば、それだけの話ですね。ただ、「神戸R不動産」を立ち上げた当初のことを思い返すと、そういうことをやらせてもらえる状況すらもなかったように思います。もちろん、僕らが手がけたこと以外でも、公共空間を使ったイベントやお店ができたりして、ポジティブな動きが目に見えて生まれてきている印象はありますね。

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小泉さんは実は、引っ越し魔。すでに30回ほども引っ越し経験があるんだとか。そんな小泉さんが見た、神戸きっての観光地、北野に根づく外国人コミュニティのことも教わります。


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。