9.ちっさな公民館

久保:私と同じようにひとり暮らしで、19時、20時に仕事が終わってからごはんをつくる元気ないなということもあるはず。もらい物があるからそれを一緒に食べようとか。私が買い付け旅で買ってきたチーズを囲んで、みんなで集まるとか。気軽に誰でも来られるちいさな公民館みたいな場所にしたいなって。

路地裏のさらに奥の家にもかかわらず、久保さんの考え方がオープンだからか、こちらの住まいは何かと来客が多い。しかも、玄関を開けるとキッチンとダイニングがすぐ目の前に見え、生活感を醸し出すテレビなどの家電製品がないのも、公民館的ですっと入っていけるのかもしれない。
そうして谷町界隈の知り合い、そのまた友人など、久保さんが知っている人もときには知らない人もこの部屋にやってくる。

久保:(自然派ワインとテリーヌのお店)vin voyageの森田さんが私の知らない人も連れてきて、みんなでごはんを食べたんです。「SNSもいいけどリアルに繋がろー」なんて言い出して(笑)。

久保さん自身、繋がりをことさら強調することはないけれど、ひとり暮らしで留守がちな家だとなおのこと、人との付き合いって大事だと言う。

久保:お店の立ち退き話が持ち上がったときには、近所の方にアドバイスをもらいました。自分が留守がちなわりには、植物を育てていて、ネコも飼っていて。だから、旅の間、その面倒を見てくれる友人がいたり。
昔は持ちつ持たれつお互いさまでやっていたことが、今は結構、お金で解決できるならその方が気が楽って感じだと思いますけど、そこを私は、あえて人にお願いしたいと思っています。

秋の買い付けで2週間家を空けた。その期間、飼い猫の世話などをお願いしていたところ、家に帰ると机の上には大福と三笠が置かれていたそう。
男の私でもうれしくて涙が出てきそうなお話。

「置物は好きなんですけど、たくさんあるとうるさくなる。だから、これだけ大工さんに頼んでつけてもらいました」と、場所はお任せでとりつけられた鳥の置物。ダイニングを見守るような位置に。

 
10.夜のごはん会へつづく

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THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。