西尾孔志(映画監督)

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#2 函館珈琲とカリグラシTV

―「カリグラシTV」といえば、今回の『函館珈琲』はかなりスタッフがかぶっていますね。

西尾:カリグラシTVでは、僕と「チーム孔明」を名乗っている高橋(明大)くんが『函館珈琲』の助監督、松野(泉)くんが録音部で、(クスミ)ヒデオさんが音楽やから、ほんま、OURS.での仕事とスタッフがかなり重なってましたね。

―松野泉さんは、OURS.では音楽を作曲いただいてます。

西尾:松野くんは『ハッピーアワー』とか、いろんな映画の録音技師として活躍しながら、自分で映画も撮るし、フォークミュージシャンとして今年はアルバムも出して。

―多彩な方です。気心の知れたスタッフと今回の映画に挑んだという理由は何かありますか。

西尾:それは、カメラマンや美術の方が、僕より1世代、2世代上の大御所の方に決まっていたので、プロデューサーから他のスタッフは僕のやりやすい人を連れてきていいよと言われたのもあって。だから、高橋くんとは結構、函館でも夜な夜な飲みながら相談したりもしました。

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『函館珈琲』に登場する共同アトリエ「翡翠館」の一室。2階はとても日当たりがよさそう。© HAKODATEproject2016

―西尾さんと高橋明大さんとの「チーム孔明」、函館でも結成ですね。

西尾:チーム孔明は、僕と高橋くんの監督ふたり体制なので、『函館珈琲』のクレジットには入れなかったけど、近日、高橋くんとは「また映画を撮りたいね」と話してます。ひとつは、引っ越しにまつわる女性の群像劇で、今まで波風立てずに生きてきた30代の公務員の女性が仕事を辞めて、一人暮らしをはじめて…(新作の構想話が続く)

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『函館珈琲』で女優として初出演したAzumiさんのPV「Carnival」も函館で撮影された。もちろん、チーム孔明による仕事。
映像はこちらから→https://youtu.be/Kq9hAICn04g

―もうそこまで具体的に構想があるんだ。

西尾:すでに3本以上はネタがあります。もうひとつは、60代を越えてシェアハウスに暮らし始めた人たちの話で、これ全員実は好きなものでつながってて、それが…(と第2の新作について)

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―ちなみに、どちらの新作構想にもカリグラシ的なテーマが含まれてますね。シェアハウスとか引っ越しとか。

西尾:「カリグラシTV」を撮ることで、ひとり暮らしを始めるとか場所を借りて住むということに関して、いろんな人を撮影してきて自分が気づいたことがあって、それは、彼らの深い生活哲学を聞きたいというよりも、自分が生きていくための場所を見つけて、そこをどううまく守って生きているかの方に自分の興味があるということ。“小市民映画”って言い方をしてもいいと思うけど、普通に街に生きているひとの悲喜こもごもを娯楽映画として仕上げるってことに自分は向いてるんだなと思いました。

―先に言われた、暗部を抉るのではなくて、小市民映画を撮りたいんだと。

西尾:自分の中では、映画のことだけに限らず、自分が体験したことが作品につながってくると思ってるけど、いま、群馬でひとり暮らしをしてるから、そこから着想を得たコメディのネタもあって。(撮りたい映画が)たまってるんですよ。

―群馬ぐらしは今年12月までだそうですね。カリグラシTVもまたよろしくです。

西尾:こちらこそ!

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文:竹内厚 写真:倉科直弘 

 


西尾孔志監督によるカリグラシTV
…「カリグラシTV」は借り暮らしの現場を取材した、OURS.オリジナルの動画コンテンツです。

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大阪・空堀の5軒長屋を取材。話を追うごとにお隣りさんの家へとカメラは移っていく。西尾孔志、高橋明大による監督コンビ「チーム孔明」が結成された記念碑的作品でもある。

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[益山三兄弟、上京する|劇団子供鉅人]全3話
東京へ劇団丸ごと移住した子供鉅人、益山3兄弟が暮らす一軒家に密着。どこまでが本気でどこからが芝居なのか、わからなくなるようなオモシロ演出もありながら、実は役者として生きる3兄弟に真摯に迫った意欲作。

[鳥居のあちらの秘密基地|吉祥寺・A吉スタジオ]全4話
吉祥寺に生まれたシェアスタジオを取材。アニメーション監督、ミュージシャン、画家、グラフィックデザイナーなど、それぞれ異なる仕事を持つ面々が寄り集まった様子は、『函館珈琲』のリアル版という趣きも。チーム孔明の撮影風景も映る。


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。