大倉曉(白川村地域おこし協力隊)

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#2 ウィルスとして行政をハッキング!?

大倉さんに案内してもらったのは、南部地区の平瀬温泉というあたり。その昔、名古屋から金沢に抜ける国道156号線沿いにある温泉街で、白山の登山道やブナの原生林など自然資源も多く、当時は建設中のダム工事の人たちでとても栄えた場所なんだとか。

―そうだ、白川村に来られる前の大倉さんのこと、ちょっと教えてください。

生まれも育ちも名古屋で、大学から社会人数年目までをそのまま名古屋で過ごして。そこから、東京に転勤、マーケティングやメディアプランニングなどメディア畑でした。あとは、休日に世田谷にある「IID(世田谷ものつくり学校)」という場所に通いながら、レストランビジネス学科で、飲食周りのことを学んだりして。仕事と遊びがいっしょになった公私一体みたいなかんじでしたね(笑)。

―うーん、仕事もプライベートも謳歌してる。マスコミ関係だと生活が不規則そうですね。

そうそう。そういうのもちょっとあって、「このままの生活を続けていくのか?」みたいな、ね。でも、週末になると高尾山に登って遊んだりして、健康なんだか不健康なんだかよくわからなかった(笑)。ただ、たとえば自分が食べてる食べ物が一体どこで作られてどこからきたんだろうって思ったときに、手の届かない範囲が広すぎてよくわからない。だけど、手の届く範囲でのくらしがまったくつくれないわけじゃない。それは今の社会の仕組みもそうだよなって。
現代社会がイヤとか田舎暮らしがしたいとかではなく、単純に都会はいささかノイズが多いな、と。

―ノイズが多い。

ノイズが一切ないのがいいわけじゃなく、どう減らすかという取捨選択のバランスが大事だと思っていて。あとは、どこで暮らしてみても何をしていても食べていける、暮らしていける力を養いたいな、と思って。

―その生活力、人間力みたいなところをあえて自分に問うたわけですね。

そう、精神的な意味で。培った経験やスキルを生かしながら、どこでも生きていけるのかっていう、いわば人体実験みたいなものかな。

―そういうときって、いろいろ天秤にかけますよね。一番わかりやすくて大きなところでいえば、身を置く場所としての環境をどうするのか。そこで「田舎」を、「地域おこし協力隊」を選ばれた。

もともと地域おこし協力隊の制度は知っていて、かつ地元の東海地方で還元できるものがいいなと思ってたんです。岐阜は隣の県だからよく遊びに行ったりもしてましたし。あとは、自分が暮らしていく中で、政治とまではいかなくても、行政とかに関わらないと、知らないうちにおじさんたちが都合のいいようにいろいろ決めちゃって、若いひとにとってハッピーじゃない状況になってしまう!

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大倉さんお気に入りの定食屋さん「次平」にて。トロロステーキと自家製ラーメンが絶品でした

―これは、リアルタイムで耳が痛い話…。

暮らしを支える行政ということに関していえば、ゴミの回収とか税金の支払いとか、根っこは昔も今も変わらない。でも今を生きている僕たちは、時代によって価値観も変わるし、世の中も変わっていくでしょ。面倒くさがって軋轢をそのままにしていたら、あとから気づいたときでは遅くなってしまう気がします。
だから、ハッキングするわけじゃないですけど(笑)、よそから行政の中に入り込んで、ウイルスみたいにインパクトをもって変えられる可能性がある。それが、地域おこし協力隊というカタチかもしれないな、と思ったんですよね。

―なるほど、そうやってこの白川郷にうまく入り込んできた最初のウイルスたちが、大倉さんと、そして高橋さんと柴原さんなわけですね(笑)。

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お揃いで色違いのつなぎが、地域おこし協力隊員の目印

高橋&柴原:はじめまして、こんにちは。白川村地域おこし協力隊・第1期の高橋と柴原です。

―お二人は、この南部地区に住んでいるんですか?

高橋:僕たちは、南部地域の活性化という使命で、この地区に住んでます。僕はいま、もともと建設会社の寮だったところに住んでいて、6畳間でトイレもお風呂も共用。
でも、ここは温泉街なので、24時間かけ流しの温泉にゆっくり入れるんです。

柴原:僕は、空き家を買い取って自宅にしてカフェを開きつつ、家の改修もまだまだ続行中です。ちなみに2階あがってみます?

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―お、いいですか? うわー、ここからの景色、めちゃくちゃいい。ピクチャーウィンドウみたいで贅沢すぎ。ちょっと嫉妬しますよ、この家は。

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庄川と山を臨む絶景。近くにブナの原生林があるので、水質がとてもきれい

柴原:この景色に一目惚れしたから、ここに決めたんですけどね。あとは、ボロボロの家でも改修していく過程を見せることで、住民のひとたちが「空き家ってこう変わるんだ」ということを肌で体感してもらいたいというか。そうやって“自分ごと”につながっていくことが大事だと思ってるんです。

―なるほど、まちとひと、場所を同時に育てていくことなんですね。ちなみに、これから夏本番を迎えるからなんでしょうか、ふすましかないこの開放的なつくりは。

柴原奥さん:いや、いつも言ってるんです、サッシはいるでしょって。せめてひと部屋くらいはね。気づいたら変な虫にかまれてるし(笑)。

柴原:“侘び寂び”の難しいところですよね。虫もまぁ、どこにいてもかまれる時はかまれるしねぇ。ってまぁ、いつもこんな話になるんですけど(笑)。だって、山んなか住んでるからねぇ。

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―みなさん、やはりなかなかツワモノ…。お二人からみた大倉さん像なんかも、聞いてみたいです。

一同:変態、うん、変態だよね。

―変態。そして、お二人の即答ぶり(笑)。

柴原:なんかね、ずーっと走ってる感じだよね。ひとときも止まらない感じ。

高橋:そうそう、実際に先週の日曜日もね、飛騨高山のウルトラマラソン走ってましたからね。

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阿吽の呼吸でやりとりする3人。なんだかコントを見てるみたい!

―でた、ウルトラマラソン! それは、ストイックさを全身で追求している?

大倉:ひとりでふらっと、考えるための時間っていうのかな。モットーは“明るく楽しく激しく”なんですけど、あ、でも今年に入って全休ってほとんどないかも。

―なにか追い立ててられてないと逆に不安、とか。

大倉:それもあるかもしれないんですけど、たぶん気づいたらやりたくなっちゃうんですよね、興味あることって。だから、今こうやって協力隊やってることも白川郷にきたことも、興味からの延長線上にあるというか。でもね、たしかに、ずっと動き続けていますね(笑)。

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―止まったら死んでしまうタイプなんですかね? なんだか、海にいるマグロを思い出しちゃいました。

高橋:まぁ、止まったことがないからわかんないんでしょうね(笑)。

大倉:ちょっと、返しうまくなったよね(笑)。そうだ、最近、とある先輩から言われた言葉があるんですけどね。「世の中には、何かを表現するときにいろいろな方法があると思うんだけど、大倉くんは自分の思考やアイデアを、人の関係性でカタチにしている人だね」って。たしかに、場をつくるという意識もあるけど、波を立てて巻きこんだり、人や物事をぶつけてアイデアを生み出したりして、人が動いたりつながっていく。それを肌で感じることって楽しいんです。それを聞いたときに、自分自身のことがしっくりきた、そんな気がしましたね。

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柴原さんのお店「アオイロ・カフェ」にて、いつも来て下さる常連さんと。みなさんいい笑顔!

文:喜多舞衣 写真:山田康太

同じ「地域おこし協力隊」として白川郷に入って、それぞれの活動スタイルで地域と関わりを深めています。次回、白川郷で開催された一大プロジェクトについてもお聞きします。


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