間取りの力と西日のエネルギー

  

大竹 私、ミニマルな家にすごく惹かれるんです。

津村 制限されてることのよさってありますね。

大竹 そうなんです。だから、広い部屋って私はとても困ってしまうところがあって。ニューヨークで住んでた頃に、だだっ広いロフトがすごく流行りでね。子どもが部屋の中を自転車で走り回ったりするほど広いんだけど、そういう家を与えられても、私は、隅っこに小さく自分サイズの空間を囲ってネズミみたいに閉じこもる気がする。

津村 私もわりと限定された空間が好きで、飲食店だったら広いテーブルの方がうれしいんですけど、家は、狭い部屋に机と椅子だけを置きたいっていう気持ちがあります。

大竹 やっぱりそうですか。広すぎると自分がバラけて、まとまらないような気がして……。空間って人間のからだの延長みたいなもので、機能だけではないんです。

津村 住宅のチラシなんかで、住みやすいですよっていうのを宣伝してることがあるけど、私は、いかにも人間のためを思ってつくられたっていう、そういう間取りにはあまり興味がなくて。それよりも、人間が間取りに対して変形していく感じが面白いんです。

大竹 わかります。間取りって、住んでいるうちに、その人の体の動きや生活の仕方、何人で住むかとかによって、空間が変形していくんですよね。だから、私も間取り図は好きなんだけど、チラシに部屋の写真が出てるじゃないですか。応接間のセットが入ったダイニングの写真とか。あれ、ものすごくシラケるんです。

津村 住むわけないやん! こんなきれいな空間で、ってやつでしょ。

大竹 あの写真からは暮らしは想像できないんですよ。住人の生活ぶりも匂いも何も感じさせなくて、ただ、写真写りだけのために家具が置かれてる。その置いてある家具も、こんなのヤダっていうのばかり。

津村 そうそう。だから、間取りを眺める人間からしたら、もう、邪魔せんといて! 間取りだけ見せてよって思うんですよね。

  

大竹 そうそう。家をアピールしたいんだったら、たとえば、朝の時間帯の光の入り方とか、夕方の光はこうだよとか、そういった光をシュミレーションできる写真が見せてくれるほうがずっとよくないですか。その家を借りたりしたときのヒントになるようなことを。

津村 そう。ニセモノのソファよりも、よっぽど光は大事ですね。私がいま住んでる部屋、夏は36度になるんですよ。3階建ての3階なんだけど、北と西に窓があって。

大竹 じゃあ、西日がすごいんですね。

津村 そうです。西日ってほんとに殺人光線みたいですよ。この光は何かに使えるはずだってずっと考えてるんですけど、しゃあないからソーラーバッテリーを買ってみても、そのリチウム電池すら熱でダメになるみたいなことがあって。まあ、西日は恐ろしい。

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THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。