阪本順治(映画監督)

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#3「カメラを向けたくなるような場所」

―ところで、監督は撮影を通して団地に住んでみたいと思われましたか。

阪本:団地のデザイン的なものは好きだし、住みたいかと聞かれたら、試してみたい思いはあるよ。
あのね、俺、オートロックのマンションに住んだことがないんやけど、嫌なのよ。その全く人間関係を閉ざしたところに住むっていうのが。一方で、わりと引きこもりの方なんですよ、今もマンションの地下に住んでるからね。要するに、適度な人間関係と適度な寂しさがほしい訳で、今の団地って結構その条件を満たしているのかなと。ただ、5階は年齢的にキツいな(笑)。

―今回の新作『団地』では、思いのほか多方面から取材を受けられたそうですね。

阪本:そうなんですよ。意図したわけじゃないけど、昨今は団地で撮影された映画がいろいろと出てきてる。僕と同じ興味かどうかは分からないけど、カメラを向けたくなるような場所になってきているんだなと。いまは無印良品とかが空室をリノベーションして、若い子からの応募もあると聞くし。僕がロケしたような今の昭和の団地に、若い子が住むのはどうなんだろう。想像すると、また違う展開が始まるのかなとも思うよね。

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岸部一徳演じる清治はなぜ団地の床下に…!?

―最後に、今後の団地のあり方について、監督が思うところはありますか。

阪本:この映画を撮って分かったことだけど、団地というコミュニティに入ることによって、若者もひとつの役割を担うことになるかもしれない。集会場での集いにしろ、若者がそれも分かった上で移っていけば、団地っていうものが、他のマンション群や住宅地域とはまったく違うコミュニティを作るようになるだろうなと。それって良いことだし、面白いことなんじゃないですか。若者にとって、祖父母世代が身近にいるっていうことが、その子にとっても次の人生を決めるきっかけになるかもしれないし。

―安いということも、魅力のひとつと言われています。

阪本:現実的には、もう一つなにか要素があればいいんだろうけどね。価格や室内のビジュアルで誘うだけじゃなくて、ほかの土地柄ではないものが、何かあれば面白い。何でしょうね……美術専攻の学生を集めて空室の5階をアトリエにするとか。ただ今の若者は、駅近じゃないとツラいという話も聞いたけどね(笑)。

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取材・文:石橋法子 写真:佐伯慎亮 編集:竹内厚

*映画『団地』劇中カットはキノフィルムズ提供、©2016「団地」製作委員会


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