京都銭湯芸術祭(西垣肇也樹、井上康子、竹村望)

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#1 銭湯はひとつとして同じじゃない!

借り暮らしをテーマにしたウェブマガジンOURS.。そのインタビュー記事枠がボロワーズです。今回は、若いアーティストと銭湯好き有志によって昨年からスタートした「京都銭湯芸術祭」について。

ギャラリーや美術館に留まらない、町でのアートイベントは、今ではごく普通に行われていること。だから、銭湯芸術祭と聞けば、「あっ、銭湯で作品を展示するのね」と、なかば見たような気にもなってしまいそうですが、昨年の「京都銭湯芸術祭」では、かなり大胆に銭湯の日常に踏みこんでいて、想像の斜め上をいくイベントになっていました。これはっ…!

2015年の「京都銭湯芸術祭」は4月18日からスタート。その開催直前、実行委員のメンバーに会いました。上の写真左から、西垣肇也樹さん、竹村望さん、井上康子さんです。


京都銭湯芸術祭
「京都の銭湯にはまだ見ぬ魅力が隠れている!」として、2014年に立ち上げ。昨年は、京都市北区、上京区にある8つの銭湯を会場にして、約1カ月の作品展示が行われた。15年は、左京区、中京区、東山区の8銭湯+堀川団地が会場となる予定。実行委員は4人、小倉千裕さんは取材時は不在でした。
http://www.kyotosentoartfes.com/

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―銭湯でのイベントといえば、これまで休業日の銭湯や、廃業した銭湯を借りて開催しているものはわりと見かけましたが、昨年の「京都銭湯芸術祭」では、営業中の銭湯を借りられていましたね。

西垣:そうですね。もともと、僕はコインシャワーしかない下宿に住んでいて、友人と銭湯に行くのが日課だったことがあるんですけど、銭湯の醍醐味って、そこでコミュニケーションできることにあるから、やっぱり芸術祭でも単にお風呂で展示するということではなく、銭湯そのものとどう関係を持つことができるかを考えていました。

―営業中の銭湯、しかも、ちょっとした展示というよりも、大胆に、否が応でも目に飛びこんでくるような作品が多かったことにも驚きました。

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吉田雷太《 Change a Face 》@京極湯

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日下典子《 人体(部分)》@紫野温泉

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後藤正樹×本田陽一郎《 非時香菓 》@長者湯 「京都銭湯芸術祭二〇一四」より

 

竹村:私たちもそうだし、アーティストの方々ももっとやれるとは思っていましたけど、折り合いというか、銭湯の方と話していく中で、やれることはどうしても限られていて。

―まだまだ手加減してたと! 当然、ギャラリーなどではないので、どこまでの作品が許されるのか折衝が大事になってきます。

西垣:実際、両端だけなら、半分だけなら展示場所にしていいとか、そんなせめぎ合いもありましたけど、それでも、お客さんがあえて作品のある鏡を使ってくれたりとか、常連さんが新規のお客さんに作品の説明をしたりとか、銭湯に作品があることで、普段とは異なる状況が生まれていたので、そこはやっていて面白かったですね。

井上:最初はもちろん苦情もありました。けど、それは想定内だったので、そこまで気にせずに。各銭湯の番台さんから話してもらったりすることで対応しました。

竹村:開催期間が1カ月あったので、作品もその期間にだんだん増えたり、変化していったのもこの芸術祭の特徴で。

井上:慣れるとちょっとずつできることも増えていくので、少しずつ少しずつ介入する部分を拡張していきました。

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―それは粘り強い。営業中の銭湯を使った芸術祭を開催したいという意図は、銭湯の方にもすぐにわかっていただけるものでしょうか。

竹村:銭湯組合(公衆浴場業組合)の支部長さんたちが集まる理事会が1ヶ月に1回あるので、まずはそこで話を通す必要があったんですけど、そこまで行くのにも時間がかかりました。ようやくプレゼンの機会をもらっても、最初は「ふーん…」って感じで。

―最初っからノリノリというわけではない。

西垣:そうですね。だけど、もともとイベントをされているところだとか、協力的な銭湯もあったので、そこからあちこちに声をかけていただいて、なんとか開催できることになりました。

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小松綾《 水鏡 》@大徳寺温泉

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森本 J.遊矢《 銭湯一夜物語 》@加茂温泉

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福田ちびがっつ翔太《 龍宮ガッツ温泉 》@龍宮温泉 「京都銭湯芸術祭二〇一四」より

井上:ただお風呂に入りに行くだけだと、なかなかわからないけど、銭湯って本当にひと店舗ごとに全然違うんです。ご主人の考え方も、中の物理的な構造も。それは芸術祭のために交渉を進めていく中で、一番気づいたことでした。

西垣:「銭湯」ってひとまとめには決してできない。まったく違うんですよ。だから、参加してもらうアーティストの方々にはできるだけそのことを伝えて、作品にも反映してもらえるようにしました。

井上:そうすることで、銭湯をただの展示空間として使うのとはまた違った作品が生まれるんじゃないかと考えています。実際、銭湯の方と話していると、あっだからこんなポスターが貼ってあるんだとか、音楽がかかってるんだということもわかってくるんですよ。

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―浴槽はもちろん、銭湯にあるものすべてがその店とご主人の歴史ですもんね。ちなみに、銭湯で音楽ってあまり意識したことがなかったです。

竹村:2015年の芸術祭会場になっている東山湯温泉は、過去にお客さんに文句を言われたりしながらも、ビートルズを頑なに流したりしてこられた経緯があって、今でも時間帯によってかける音楽を変えておられます。お年寄りが少なくなる夜遅い時間だと、ちょっと激し目の音楽にしたりとか。

―銭湯に歴史あり、そんな銭湯もあるんですね。2015年の話が出たところで、今年の芸術祭について教えてください。

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井上:実は、去年の芸術祭の話がわりと銭湯の方々に行き渡っていたので…。

―だいぶスムーズに進められたと。

井上:いえ、「ちょっとうちでは無理やわ」という声も少なくなくて。

―そうなんだ!

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きいろいいえ《「若葉」「時間」》@若葉湯

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大野由美子×塩見友梨奈《M=connect=W》@紫野温泉

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香坂リサ《門前湯雲融門、湯屋絵巻》@門前湯

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小笠原周《 ザ・銭湯アーティスト 》@長者湯 「京都銭湯芸術祭二〇一四」より
*京都銭湯芸術祭二〇一四の写真は、すべて芸術祭実行委員会よりお借りしました。撮影:守屋友樹

文:竹内厚 写真:平野愛 

まもなく開催される「京都銭湯芸術祭二〇一五」のこと、そして、インタビュー場所となっている団地の話も。京都銭湯芸術祭は、ますます進化中!?


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借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。