京都銭湯芸術祭(西垣肇也樹、井上康子、竹村望)

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#2 団地で銭湯オープン!?

「京都銭湯芸術祭」3人の実行委員メンバーに話を聞いています。2年目ながら、意外に改めての会場探しに難航したそうで…。上の写真左から、西垣肇也樹さん、井上康子さん、竹村望さん。団地の一室が、彼らのアジトとなっています。

#1 はこちら

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―そもそも、昨年とひとつとして同じ銭湯では開催しないんですね。

井上:昨年の開催にあたって、銭湯の組合(公衆浴場業組合)に相談した際に、そうしたイベントをやるのであれば銭湯ごとに差をつけないこと、京都の全銭湯でやってくれという注文がついたんです。さすがにそれは無理なので、毎年、行政区を変えながらやっていくということで納得いただきました。京都の銭湯はだいたい120軒くらいあるんですよ。

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―銭湯ごとに個性や営業方針はばらばら、だけど組合としては一律に平等に物事を進めてほしいという話ですね。なかなか難問です。で、今年の芸術祭の相談に行くと、断られたところも多かったと。

西垣:老後はゆっくりしたいから無理だという方もいらっしゃいましたし、あらかじめ、こちらで当たりをつけていた銭湯の半分以上は断られました。だから、もう途中から次々と飛び込みで交渉するようなやり方になってきて。

井上:やっぱり、暗くするのとうるさくするのはいちばんNGでした。

竹村:ジェンダーの観点から銭湯の照明をピンクにするというプランがあったんですけど、この会場がなかなか決まらなくて。最終的には東山湯温泉でOKしていただきました。「まあ、やってみたらええんちゃう」って。

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井上:東山湯温泉はご自身も銭湯で音楽を流すことに苦労してきた経緯もあったので、かなり私たちのことを理解していただいて。

竹村:銭湯で絶叫するというプランもありましたよね。

西垣:脱衣場で牛乳を飲んだ後に、「あーっ」って声が出るじゃないですか。それを絶叫したいってプランでしたけど、これも実現せず。ただ、その方はダンサーなので休業日の銭湯をお借りして、ダンス公演をやることは決まっています。

―断られるのもよくわかるし、それでも臆することなくプランを提案していく姿勢が頼もしいですね。

西垣:あの断られる日々がまた来年もあるかと思うと…(笑)。まあでも、僕らも作品制作と変わらない意識でやっているので、銭湯とアーティストのすり合わせに非常に時間を使っているんです。だから、実現できるかわからないことでも、まずは銭湯に直接持ちこんで相談してたりとか。ふんわりと場所だけを借りるということではまったくないですから。

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―交渉に手間もかかるでしょうけど、事前に遠慮ばかりしていても面白いイベントにはならない。

西垣:そうですね。一方で、目に見えるかたちで大胆に踏みこむ作品もありますけど、また違ったかたちで銭湯と深く関わることも考えていて、今年は、参加者みんなで銭湯の方と一緒に掃除をして、お風呂を沸かして入浴する「風呂焚きワークショップ」を開いたりもします。銭湯の方にもどんどん関わってもらって、一緒に芸術祭をつくりあげたいんです。

―なるほど。芸術祭でもあり、銭湯イベントでもありますもんね。どちらも並び立つようにと。

西垣:だから、実行委員会という肩書きにも疑問があって、イベントをオーガナイズしたいというよりは、銭湯というのがどういう場所なのかをアーティストもふくめて、一緒に考えたいんです。それを作品化して提示したいという思いが強いので。

井上:実行委員会という肩書きだと、参加アーティストからも運営役、仲介役という感じで捉えられるので。もちろんそういう役割もこなしますけど、どちらかというとアーティストと同じ立場にいるつもりなんです。

竹村:あと、昨年の経験から、実行委員会という堅い立場で銭湯の方と交渉しても、あまりいいものが生まれてこない感じも持っています。

ー昨年の芸術祭でも、それぞれアーティストとして参加されていたようですが、今年は実行委員会であると同時に西垣工務店というユニットを結成されたようですね。みなさん、その社員ということになるんでしょうか。

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西垣肇也樹×小倉千裕《 スクロール 》@京極湯

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井上康子×竹村望《 浸透 》@門前湯 「京都銭湯芸術祭二〇一四」より

竹村:(西垣さんのことを)社長とは呼んでますね(笑)。

西垣:休みなしで働いてもらってるので、相当ブラックすぎる工務店なんですけど(笑)。

―そんな西垣工務店の作品展示が堀川団地の一室、今、取材を行っているこの場所で行われることになるんですね。

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西垣:芸術祭を通して銭湯のことをより深く知ることができたので、僕たちなりの銭湯をこの団地の部屋に作ることで、銭湯がどういう場所なのか、今ある銭湯との比較対象として提示できないかなと考えています。

―実は、いろんな銭湯用品が部屋中に散らばっているのが気になっていました。

井上:今年の1月に廃業した明治湯さんからもらってきたものです。そうした縁ができたのも芸術祭をやったからなんですけど、単に銭湯を再現するのではなく、私たちなりのメッセージをこめて、作品化したいなと。

―まだ制作途中の段階なので、どういった空間になるのか想像がつきませんが、昨年の芸術祭よりは明らかにさらに一歩踏み出していますね。

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竹村:ちなみに、堀川団地の私たちがいる棟は、アートのアウトレットというコンセプトで、私たちの部屋をふくむ4戸が改装して使われています。団地の部屋は、銭湯とまるで関わりがないようですけど、この部屋もお風呂がないですし、銭湯がなくなっていく背景にはユニットバスが一般化したこともあるわけなので、どこかで銭湯とつながるところもあるんです。

西垣:作品制作においては、本当に自分が作りたい作品ってその場所だけでしかできないこともあるけど、作りたい作品に対して場所がひっついてくることもあるので。そういう意味では、堀川団地がどういう場所であるかを考えて、それを踏まえて作品化できるんじゃないかなと思います。

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―いろんな場所に作品としての銭湯がつくれるなら、面白いことになりそうです。まずは、今回の堀川団地が西垣工務店としての初作品ですね。

西垣:そうなります。あとは銭湯芸術祭として、銭湯をはしごする人のためにレンタサイクル「桶チャリ」を設置したり、各銭湯会場でシャンプーハットのレンタルなども考えています。髪を洗いながらでも作品鑑賞できるすぐれもの。

―桶チャリは誰もが乗って恥ずかしくないもの?

西垣:いや、恥ずかしいと思います。乗れるものなら乗ってくれ、と(笑)。できればカップルで。

―とにかく芸術祭を盛り上げる仕掛けも企画中だと(笑)。

井上:すべてがまだ予定なんですけど…。

西垣:予定が好きなんで(笑)。

―今日の時点で会期まであと2週間ちょっと。どこまで実現されるかどうか、そのあたりも楽しみにしています。

 
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*印象的なポスタービジュアルは、銭湯の常連さんがモデルを務めているそう。撮影:前谷開 デザイン:赤井佑輔(paragram)

京都銭湯芸術祭二〇一五
日時:4月18日(土)~5月17日(日)
入浴料=鑑賞料:大人430円 小学生150円 小学生未満60円
会場:玉の湯、錦湯、東雲湯、東山湯温泉、平安湯、新シ湯、大黒湯(山城町)、旭湯、堀川団地(上長者町棟)535号室
アーティスト:池田精堂、河井順子、川田知志、Kyoto Dance Exchange、市川まや、西垣工務店、ピコピコカケラ村・菊川法子×松前公高、日名舞子、フクナガコウジ、ベジっつら、Yann Le Gal、横須賀馨介×手塚健太郎、らくがきひつじ、林泰彦(パラモデル/招聘作家)
http://www.kyotosentoartfes.com/

文:竹内厚 写真:平野愛
(2015年4月14日掲載)


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