2組の夫婦が暮らす
これがシェアハウス最前線!?

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2012年に出版された『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』は、自身のシェアハウス体験と、さまざまなシェアハウス事例を取材した1冊でした。その著者、阿部珠恵さんと茂原奈央美さんのうち、茂原さんがその後、ご結婚。それでもシェアハウスは続いていましたが、今春、引っ越して新たにスタートしたシェアハウスでは、さらに夫婦2組が同居することに!

出版された本を読んで、すぐに著者のふたりにコンタクトをとったというUR都市機構の小正茂樹さんらと、引っ越しを終えたばかりの新シェアハウスを訪問しました。
話してくれたのは、阿部珠恵さん、茂原さんの結婚相手でシェアハウス体験も豊富な栗山和基さんです。
進化を続けるシェアハウスに、住まいや家族の固定概念が揺るがされます。

 

#1 結婚してもシェア、の理由

小正:ここが共有のリビングなんですね。

阿部:住人それぞれに棚をつくっているんですけど、私はお酒好きなんで、お酒の本ばっかり(笑)。

―『アル中病棟』まであるのがすごいですね。

阿部:それは自戒の意味も込めて(笑)。

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栗山:他にもギャンブル好きの子はポーカーを飾っていたり、住人の個性が表れた棚になっています。僕はゲームをつくる仕事をやっているので、関連するものを置いています。

小正:面白いひとばかり住んでる感じですね。

栗山:そうありたいとは思ってますね。さっき帰ってきたのは、もうひと組の夫婦の旦那さん。最近いきなり会社を辞めちゃってアフリカへ行ってるので、普段は日本にいないんです。

小正:えっ、ご結婚されてるのに会社を辞めてアフリカへ?

栗山:そうです(笑)。

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普段はアフリカにいるという住人をまじえて撮影。買い物帰りなのでビニール袋も持ったまま。

小正:本にも書かれたシェアハウスから、ここにいたるまでのことをまず聞いておきたいなと思います。

阿部:そうですね。私は、社会人1年目にひとり暮らしをしていたんですけど、学生時代とは全然違って、社会人のひとり暮らしってほんとにひとりでいる時間が長いんですね。ちょうどその頃、茂原と彼女の妹が埼玉から東京に引っ越してくる話があったので、リビングと3部屋あるマンションを借りて3人で暮らしはじめたんです。

小正:それが『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』の表紙にも写っている家。

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『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』(辰巳出版・2012年刊)

阿部:そうです。偶然にも隣りの家も3人でシェアをしていたので、6人暮らしのような感じでわいわいとなって。で、そこに4年住んだ頃に、茂原が栗山くんと結婚することになり、“これでシェアハウスも終わりかな”なんて話してたら、茂原の方から「いや、結婚しても一緒に住まない? むしろ、一緒に住んだ方が楽しいんじゃないの」って(笑)。もちろん私も全然ウェルカムだったので、夫婦と一緒のシェアハウスがはじまりました。

小正:そのタイミングで、今度は一軒家に引っ越された。

阿部:そう、ふたつめのシェアハウス。そこは、栗山夫妻と私たち(阿部、茂原さんの妹)に、もうひとり男の子を入れて5人で住んでました。そこに2年くらいかな。で、たまたまここの家を貸していただけるという話が出て、せっかく広いんだから住む人をもっと増やしてみようって話になって…。

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前のシェアハウスでご両親もふくめた集合写真。「夫婦が住んでいるので、よくご両親も遊びにくる不思議な家でした」。

―今にいたると。栗山さんと茂原さんのご夫婦ともうひと組のご夫婦、そして阿部さんで5人。あと、何人いらっしゃるんですか。

阿部:全部で10人です。私たちとは別のシェアハウスをやっていたところとガッチャンコして、ふたつのシェアハウスが一緒になった形ですね。

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栗山さん、茂原さん夫妻の暮らす部屋。

小正:阿部さんに初めて会った頃は、女子3人のシェアハウスだったので無理のない範囲だと思ってたんですけど、だんだん理解を超える構成で住みはじめたので、どういうことだろうって疑問が(笑)。

栗山:そうですよね。ただ、僕らとしては、むしろこの方が自然じゃないのって思ってるから、疑問をぶつけてもらったほうが答えやすいかもしれません。たとえばよく聞かれるのは、夫婦だったら夜どうするんですかとか。

小正:実はそれ、いちばん聞きたかったことで、いつ質問しようかと(笑)。

栗山:静かにする(笑)。たぶん、問題になるのってそこだけで、他に何かありますか。

小正:確かに、そうですね。僕は、大阪の下町に住んでいて、まだ近所に木造の長屋があるんですけど、そのイメージにもちょっと近いなとも思うんですよ。何かあれば行き来して手伝いあったり、仲がよければ隣りの家に鍵を預けてる人もいますし。

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大阪下町育ちの小正さん。

阿部:そんなところがまだあるんですね。今ではシェアハウスもありふれたものになりましたが、それでもシェアハウスは独身のものってイメージが強いんですよ。だけど、夫婦であっても、シェアハウスに住むメリットはたくさんあって、私たちとしては、独身だろうと、結婚してようとそんなに変わらない。それを疑問に思う方と話しても、結婚したら二人で暮らすのが当たり前だとか、そういう常識にとらわれているだけだと感じます。夜の生活は置いといて(笑)、シェアハウスは、むしろ合理的な暮らし方になりうると思います。何も不便に感じることってないんですよ。

文:竹内厚 写真:平野愛


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。