2組の夫婦が暮らす
これがシェアハウス最前線!?

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#2 ほどよいコミュニティのためには

シェアハウスのリアルを聞くにつれ、取材現場は“しゃべり場”さながらの雰囲気に。これも内と外の境界にあるような、シェアハウスの共有リビングスペースの力なんだと思います。

―シェアハウスがむしろ合理的だという感覚、だんだんわかってきました。

栗山:わりと一般論として言われることですけど、僕らのリアルとしても、そんなに物はいらないし、言ってみれば、幸せって所有とかとは関係ないところにあるよなと感じてます。

小正:そうですよね。僕の仕事は団地なので、長屋の延長で団地のことも考えますけど、昔の団地って親の帰りが遅ければ、隣りのおばちゃんの家でご飯を食べさせてもらったりとか、敷地全体で子育てをしてるようなところがありました。階段の掃き掃除を順番にやったりとか。そういった昔ながらのコミュニティみたいな部分って、このシェアハウスで目指しているものと近いのではないでしょうか。

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栗山:そうだと思いますよ。いまの都市部では地域共同体がぶつぶつと切れていて、崩壊とまでは言わないけど、そんなにつながりがない。その後、会社がその代わりを務めたこともありましたけど、会社でのつながりもそこまで深いものではなくなっている。シェアハウスを立ち上げたときから、そんな問題意識があったわけではありませんけど、シェアを続けながら、どうしてこんな暮らしをしてるんだろうって考えていくと、コミュニティ不在のこの時代に、自分たちで安心できる場所をつくりたい、共同体を持ちたいとはやっぱり思ってるんですね。そこをひもといていけば、昔の長屋だったり、団地だったりに似ているのかもしれません。

阿部:私たちって核家族で育った世代で、会社も終身雇用じゃない。一体、誰に頼るんだろうって思ったときに、シェアハウスがひとつの答えだったわけですけど、結婚したら、それがゼロに戻るっていうのも寂しいですし、生きづらいことだと思うんですね。また核家族に戻っちゃうのかと。だから、茂原と栗山くんが結婚してもシェアハウスのままでって言うのもよくわかるし、もし子どもが生まれても必要なときは預かるよ、くらいの気持ちなんです。

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こちらは阿部さんの暮らす部屋。

小正:まさに昔ながらの共同体ですね。

阿部:このシェアのことを自分の親に話したんですけど、怒られるかなと思ったら、全然ありだって言われました。あれも団地っていうのかな、私は小さい頃、テラスハウスに住んでたんですけど、弟が熱を出したら、母は私を近所の人に預けて病院に行ってたそうなんです。母からすれば、私が都会に出て、そういったことができなくなるのは大変だろうって。それを補完するような暮らしができるのなら、シェアもいいと思うよって言われて、ちょっと背中を押されたような気持ちになりました。

小正:女手ひとりで、ふたりの子どもを育ててるお母さんを知ってますけど、大阪のおかんの血が流れてるから、周りをどんどん巻きこんで子どもを預かってもらうそうです。そんな肉弾戦で突破できるならいいけど、でなければ、個に分断されてしまう時代ですよね。話は変わりますが、前のシェアハウスでは、地域の活動にも積極的に参加されてませんでしたか。

阿部:それは栗山くんが切り込み隊長で。

栗山:単純にお祭り好きなのもありますけど、ご近所にはよくしなさいよって言うじゃないですか。僕ら、シェアハウスでどんちゃん騒ぎをすることもあるので、怒られる前にご近所の人とは仲良くしておこうって。

阿部:前のシェアハウスでお餅つきに行ったとき、「どんな人が越してきたのかと思ったけど、意外に普通だね」って言われたんだよね。

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前のシェアハウスの住人一同で町内の祭りに参加、御神輿も担いだ。

栗山:表札がたくさん並んでるから、シェアハウスだってことはバレてるんです。

阿部:シェアハウスにまだ偏ったイメージを抱いてる方もいますけど、でも、全然そうじゃなくて、私たちはお金に困ってシェアハウスに暮らしてるのではなくて、コミュニティを大事にしたいと思ってシェアハウスを選んだんです。そういう意味では、地域の活動に加わるのも自然なことで。
もしも私ひとりで住んでいたら、町内会に参加するとか、ちょっとためらいますよ。シェアハウスのみんながいるからこそ、飛びこめる。

栗山:それもありますね。僕も、町内会に長老みたいな人がいて、伝統だからやれ、若いからやれって言われたら、イヤだなと思いますよ。シェアハウスを運営するのだって、面倒くさくてしんどい面もある。それぞれの利害はもちろんあるし、はじめから全員が仲良しで集まるわけじゃないですから。それでもやろうって思うのは、やっぱり自分のコミュニティだからという意識。自分の居場所をつくりたいと思うからでしょうね。

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小正:ある程度、ゆるくつながれる範囲のコミュニティのサイズを、調整しながら形づくっているんですね。

栗山:そうですね。どんなに仲のいい人どうしでも、必ずそれぞれの常識は違うから、調整する必要はあります。その話し合いができないと、やっぱりダメですね。譲れない、受け入れられないって人だけだと困ります。

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すてきな屋上もありました。

―その話って、夫婦でもまったく同じですよね。絶対にやり方の違う部分は出てきますから。どちらが正しい、正しくないじゃなくて。

栗山:そうなんですよ。1対1だと矢印がお互いを向いて、それぞれがこれが常識だって主張すると、絶対に折り合わない。だけど、そこにもうひとり加わるだけでも、社会が生まれるというか、自分の意見が絶対じゃないことに気づけたりします。

阿部:ものすごくうなずいてらっしゃる方がいますけど(笑)。

小正:彼は新婚なんですよ(笑)。どうですか三上くん、シェアハウスは。

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暮らしのスタイルの話は、新婚として黙ってられないところ。UR職員の三上さん。

三上:お話を聞いていて、その選択肢もあるなと思いつつ、少し前まで住んでた社宅では、仲のいい夫婦と部屋は違うけど同じ団地に住んでいて、よく行き来してたんですよ。僕にはそれくらいの距離感がちょうどよくて、同じドアの内側で住むのは微妙だなって思います。いろんな選択肢があればいいと思うんですけど。

阿部:ほんとにそのとおりで、そこはグラデーションだと思いますよ。実際、同じ家の中に住むのではなく、お隣りの家の人とすごく仲良くなればいいという意見もあるでしょうけど、すごく核家族化が進んで、シャイなゆとり世代の私たちとしては、なかなかそこを突破して仲良くなるのが難しくて(笑)。

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―よくわかる話だなと思います。ただ、実際に今ある多くの住宅って、なかなか夫婦でシェアハウスという暮らしに向いたつくりになってなくて、つまりそれが、社会的な常識のラインなのかと思いますけど。

阿部:そうなんですよ! この家に引っ越した理由もまさにそこで、ここはもともと2世帯を想定してつくったみたいで、ふた夫婦が入っても十分に余力があるんですね。

栗山:そう、2階に共有できる広いリビングがあって、3階と4階それぞれにもトイレとキッチンがあるんですね。

阿部:3階、4階に2LDKをふたつ積んだような構造で、そんな家なかなかないと思ったのが一番のキッカケなんです。
10数年前であれば、子連れの夫婦が住むような住宅が空きはじめて、そこで私たちをはじめとするシェアハウスが自然と増えていった。その結果として、今ではシェアハウスの物件が増えたんだと思うので、これから夫婦でシェアハウスに住みたいという人が増えてくれば、きっとそれに対応する物件も増えてくるはず。コレクティブハウスもありますけど、私の感覚としては、あれはちょっと大きすぎるんです。

栗山:そう、ちょっと大きいね。僕もここがシェアハウス4軒目で、何十人といるシェアハウスに住んでたこともありますけど、やっぱり10人を越えると知らない人が出てくるんですよ。大きさとしては、今これくらいがマックスだと思います。

―10人暮らしはまだこれから始まったばかり。

阿部:夢はふくらみますね。

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文:竹内厚 写真:平野愛

取材から3週間後、この場所でジャーナリストの佐々木俊尚さん、社会学者の久保田裕之さん、そしてUR都市機構の小正さんをゲストに迎えたトークイベントが開催されました。
http://ours-magazine.jp/journal/160725/


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。