柴山留佑(レンタサイクルえむじか/ナミイタアレ)

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#3 マネされない、できない!?
  ゲストハウス、シェアサイクルのつくり方

出町柳駅前の「レンタサイクルえむじか」に始まって、「ナミイタアレ」「DBC」では場所を貸すことの面白さを知った柴山さん。ただ場所を貸すことから、こんなに面白いスペースが生まれるなんて!

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―まもなくゲストハウスも開業されるそうですね。

柴山:レンタサイクルをやっていると、ゲストハウスを紹介してほしいという話がすっごい多くて、なら直営でやったらえんちゃうかというのは5年くらい前から思ってたこと。それで、ようやくいい物件が見つかったから。「ナミイタアレ ノイエ」という店名にしました。ダジャレです。

―どんなゲストハウスになりそうでしょう。

アパートの1棟借りなんで、すでに住居として成り立ってるので、もう何にも改装せんとそのままで。だから、家具も全部入ってます、ほとんどがもらいもんやけど。次の家を探すまでの間、ある程度の長期で住むような感覚で使ってもらったら一番ええなと。

―ゲストハウスというより貸間みたいです。

そう。けど、住みたいという人はお断りしていて。ただのアパート経営じゃ面白くないし、やっぱり回転率をあげたいから(笑)。

ー微妙なバランスですね。きっとフロントのような場所もないんでしょうね。

そやねん。僕が「こんにちは~」って鍵を開けにいくみたいなやり方。1階を食堂にするので、そこがたまり場になったらええなと思ってます。

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―アパート経営じゃつまらないという理由は何でしょう。

やっぱり1人とおつきあいするより、大勢の人とおつきあいする方が面白いでしょ。レンタサイクルでもそうですけど、どんどんたくさんの人に貸したいという思いはあるね。音楽をやってた頃は、スタジアムでライブをやるくらいのミュージシャンになろうと思ってたんですけど、だから、やっぱりお客さんはたくさんのほうがいい(笑)。

―観客は多ければ多いほど燃えるんだと(笑)。

そうそう、たくさんの人たちとやりとりできたほうが楽しいよ。

―「ナミイタアレ」のような場所の貸し借りを始めたことで、もともとやっていたレンタサイクル業への影響もありましたか。

レンタサイクル店を四条河原町にも出したいというのは、ノイローゼになるくらい、ずっと考えてきたこと。けど、それまでは1階のテナントしか見てなかったんですよ、レンタサイクルは1階でしかできないから。それがナミイタを始めてから、2階があってもその場所を人に貸せばいいとわかったので、2階建ての物件も見始めたら、すぐに四条河原町の物件が見つかって、結果、えむじかの四条河原町店を出せたからね。

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―四条河原町の店舗は、鴨川沿いの一等地、旅館や料亭もある石畳の道ですが、両隣は風俗店という、ちょっと二の足を踏みそうな物件です。

友だちにそのことを話したら、「そこ借りるなんて頭おかしい」って言われましたけど、そう言われると逆にやりたくなる性格だから。風俗店じゃないというだけで、周囲の方には歓迎されました。

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「えむじか四条河原町」のようす

―四条河原町店は、通りに面してレンタサイクル店、1階の奥と2階に小さな飲み屋が4軒入って、まさに”波板横丁”のおもむき。

昔からよくあるでしょ、壁もなく飲み屋が並んでる通りが。お客さんも「ほな次行くわ」ってすぐ隣に入っていく(笑)。

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2階は飲み屋街に。窓からは鴨川と南座が一望できる

―そうですよね、ひとつ屋根の下に小さな飲み屋が寄り集まっているのは、昔から低家賃で店を開けるひとつの形。こっちから見ると、「ナミイタアレ」という場所のことも理解しやすく感じます。ところで、お聞きするのが最後になりましたが、出町柳店も四条河原町店も「レンタサイクルえむじか」の大きな特徴は、シェアサイクルの仕組みです。

そう。面白いんだけど、誰もマネしない。全然儲からないから(笑)。うちのシェアは何が面白いかっていうと、理論的には店舗がいらないんです。たとえば、大阪の方から京都に来て、うちの自転車を利用して大学や会社に行く人がいて、反対に、京都の家からうちの自転車に乗って駅まで来て、大阪の方へ勤めや学校に行く人がいる。つまり、ひとつの自転車を、違う方向と時間帯に使う人同士でシェアしていることになるので、僕らは仲介業みたいなもん。

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―1カ月3千円払えば、いつでも借りられて、家に乗って帰ってもいいんですよね。自分で自転車を所有しなくてもいいっていう仕組み。

お客さんとしてはその理屈だし、店としては狭い敷地でやれるんですよ。たとえば、5坪くらいの敷地があれば、僕らは80台の自転車を収納できますけど、駐輪場にしたらおそらく2段にしても30台くらい。駐車場だったら車1台です。1台の車さまのために、30台の自転車さまのために場所を使うのが駐車場、駐輪場。だけど、レンタサイクルのシェアなら、単純にさっき話したような、行き帰りそれぞれの利用が成立したとしても、80台の倍、160人でその場所を使うことになるでしょう。これこそ狭いスペースの有効活用ですよね。

―シェアサイクル、コミュニティサイクルをうたったサービスも増えてきましたが、なかなかそういった考えでは進められてないかもしれません。

公開空地に自転車ラックを並べて、レンタサイクルを並べてというのが多くあるけど、僕からすればそれはナンセンス。土地の使い方しては駐輪場と変わらない。歩道も狭くなるし、公園もなくなっていく。

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狭い敷地に自転車をストックするため、自転車用ハンガーも開発!

―そういうことじゃないと。

それに自転車を路上に置いて、無人で貸し借りをしても、自転車が痛むし、危ないから。結局、自転車を使い捨てるんじゃないでしょうか。

ー間違いなく、自転車に「ジョン」のような名前をつけたりもしてないでしょうしね(笑)。

とはいえ、うちのやり方だと、始発から終電まで管理人が必要になるので、なかなか儲からんけどね。だから、マネもされない。できたら、いずれ大阪の淀屋橋あたりにも店を作りたいし、町中の駐車場でレンタサイクルの店を開いてみたい。

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閑散期は、カゴをはずしてさらに圧縮ストック。駐車場1台のスペースに自転車がぎっしり

―いまは市内どこも駐車場だらけですから、さきほどの理屈でいえば、3、4台分の駐車スペースがあれば店が開けそうです。

そうそう。駐車場に管理人ボックスを置いて、自転車を集めたらテントでも店が開けるでしょ。反対に、自転車を停める場所がいくらでもある田舎では成立しない商売なんです。駐輪場から自転車があふれるような町中でこそできる。

―なるほどー。

だけど僕、あと2年間厄年なので、その間は何にもせんとおとなしくしてますよ。いろいろ夢を想像して暮らそうかなって(笑)。

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文:竹内厚 写真:平野愛

参考図書

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さいとうたかを
『サバイバル』全10巻 リイド文庫
大地震と津波で廃墟になった東京が舞台。火山の大噴火、異常気象…と続く脅威の中で、少年サトルはいかにして生き残るか。


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。