店の上に住まう借り暮らし
宮武裕右、元永彩子(TORI FOOD)

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#2 間取りをいちから考える暮らしへ

心機一転、レストランを開業。そして、階上に自分たちの住まい作りをした宮武・元永夫妻。今回は、住まいの作りかたを中心に聞きました。

―2階をどんな家にしようと思っていたんですか?

宮武:ほとんどおまかせでしたね。予算もだいぶアバウトでした。実は、家にこだわりがそんなになかったんです。

―でも、元永さんのアトリエの広さは必要でしたよね?

元永:もともと別になったひと部屋があったので、そこをアトリエにできるなということは最初から決まっていました。住む場所の方は、どうでもいいというか(笑)、出来上がったらどうにでもなるかなと。

―本当におまかせですね。

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こちらが元永さんのアトリエ。壁や天井を塗った以外はほとんど前のまま。ちなみに、宮武さんは本当にこの姿勢で会話していることも多いそうですよ。

元永:そうですね。そんなにたくさん予算があるわけでもなかったので、あれこれできない。だから、必要最小限の押し入れだけは作ってほしいというのは言いました。

宮武:お店もそうなんですが、見える場所に物を出したくない。だからとにかくシンプルに。そもそもこの建物は、もともと1階は駐車場、2階は写真スタジオだったんです。

―現在の用途と全然違いますね。

元永:それもあって「どうしたい?」と聞かれても、答えられなかったんです。

宮武:まったく想像がつかないから、とりあえず、店の方は緑を置いたらどうにかなるかなって(笑)。

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テレビの上部にあるのが、写真スタジオだった名残りの撮影用スクリーン。天井も高く快適。

―ちなみに、ここに引っ越す前はどんな住まいだったんですか?

宮武:2LDKの70平米で、3部屋のマンションでした。でも、全室をフルに使ってなかったんですよね。リビングで映画見てダイニングでご飯食べて、後は寝ているかなので、ほかの部屋いらんなって思ったんですよ。そもそも使ってないし、飼っていたハリネズミのためにえらく広い部屋をあてがってるぞ、と。

―いわゆる2LDKとかの決められた枠組みに、生活がフィットしないと?

宮武:まったくその通りだと思います。

―結構、そういう人って増えていると思うんですが…。

宮武:そうですよね。でも、そういった要望に対応した物件ってほとんどない。

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カメやカモに加え、コイも目視できるという東横堀リバーサイド。窓から阪神高速を仰ぎ見る景色も好きなのだとか。

―だからリノベーションってことになるんだと思います。

宮武:確かにその流れで、DIYのお店が増えていると思いますが、普通に考えて、難しいし面倒ですよ。それに、そんなにアイデアとかのある人は多くない。だから、面倒を見てくれるディレクターがいりますよね。僕たちの場合は、阪口さんがそういう人でした。あの人の存在は大きかったです。

―この建物を内見に来たときに「借りないほうがリスクだ」と言った阪口さん。古ビルを愛でるBMCのメンバーとして活躍しつつ、この界隈で多くの不動産コンサルと物件改装まで手がけてられますね。

宮武:阪口さんに自分たちの理想を話すと、すぐに汲み取ってくれて、「やっときますね~」って、すぐにその場でトンカチやり始める。自分で設計して施工する、その機動力が僕たちの家づくりにはあっていました。

―では、おふたりの雰囲気を汲み取った阪口さんの提案ででき上がった家という。

宮武:そうですね。しいて言うと、僕たちはテレビがすごく好きなんですよ。だから、住まいの中でテレビのウェイトって高くて。テレビとソファの距離は重要でした(笑)。

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このソファとテレビの距離感が大事という夫妻。ソファ、テレビ、ベッドと収納。住まいを構成する要素がとてもシンプル。

―生活する部屋は、リビングと寝室の2部屋。削ぎ落とした感じですね。

宮武:そうなんですよ。梁がむき出しで屋根裏まで見えてるのが気持ちよい感じなんですが、現実的に「夏は暑くて冬は寒いですよ」って言われて、寝室は天井をつけた作りにしたんです。

―なるほど。キッチンはなしですか。

宮武:そうなんです。僕らの生活は昔からなんですが、外食中心。広告営業の時は、0時より前に帰ったことがなかったですし、どうしたって外食になって、それが習慣化しています。それに1階の店が大きなキッチンですからね。

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冷蔵庫はあるもののキッチンはなし。ほぼ外食、かつ下が自身の店という夫婦ならではの部屋づくり。

―それはそうですね。もともと、こういった古い建物を転用することに興味はありましたか。

宮武:そもそも物件って建ちすぎですよね。もっと“経年優化”というのを言っていかないといけないと思うんです。町家に対する意識は変わってきた感じもありますが、まだまだこういう古い物件とか、団地がイケてるという感覚があまりないと思うんです。

―経年優化。いい言葉ですね。

宮武:これからの世の中の動きとしても、古いものと今のものを合わせていくような感覚が重要だと思います。住まいだったら、抜き差しがある家。たとえば、僕もウォシュレットは好きですし、トイレはきれいなほうがいいと思っています。それと古い物件とを組み合わせていくことが大事だと思います。

―古くてもイケてるところに新しい設備を組み合わせればいいと。賃貸だと、そのあたりの改装、投資が自由にできるかどうか。

宮武:そうなんですよ。ここの大家さんは、すごくファンキーな方で「何やってもいいよ!」って、とにかく自由。しかもお店オープンさせてからもお客さんを連れて、よく食べにきてくれるんです。「儲けてもらわなぁ」って、ひとりでもボトルを入れてくれることもあります。そういうことも含めて、いい物件を紹介してもらえました。

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文:松村貴樹 写真:平野愛 編集:竹内厚


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。