4. キッチンの扉

私自身は団地育ちということもあってか、キッチンが独立した空間として扉で分けられた家にあまり出合ったことがないのだが。

えり子:私たちの歴代のキッチンはどんなだったか考えてみると、今の家のように扉がついているキッチンが、実は3軒ありました。ここで7軒目の住まいなんですけど、その3軒以外にも、扉はないですがキッチンが独立している家が2軒、残りの2つの家もキッチンを分けようと思えば分けられるタイプでしたね。
たとえば、最初に東京でマルクスと出会ったときに彼が住んでいたのは、外国人のために建てたられたすごく古い一軒家で、キッチンは、全部アメリカのシステムキッチン。ものすごく効率は悪いし、温まるまで時間もかかる。でも、ターキー1匹丸ごと焼けちゃいそうな巨大なオーブンと巨大な冷蔵庫がある家で。そこのキッチンにも扉がありました。
外国人向けに建てられた古い家は、キッチンに扉がついて、ひとつの部屋になっていることが多い気がします。

確かにアメリカのシチュエーション・コメディを見ていても、扉で区切られたキッチンがよく出てくる。私には一見、扉の開け閉めが面倒に思えるが、パーティの日にはとても重宝するそう。

えり子:パーティのときはキッチンが戦場ですから、扉を閉めています。
台湾で暮らしていた家も、普段はオープンスタイルですけど、ガラスの引き戸をスルスルッと動かせば仕切れたので、大きいパーティのときは閉めていました。油や匂いも気になるので、パーティの日には扉があったほうがいいなと思います。

後日、パーティの日に再訪すると、キッチンの扉は確かにしまっていた。

パーティの日にキッチンが丸見えだと、「洗い物、手伝いますよ!」と腕まくりするゲストの姿が目に浮かぶ。
えり子さんの発言にはなかったが、そういったゲストの気遣いを先にケアする気持ちがごく自然にあるのではないかとも思う。なによりも、料理好きで、えり子さんの中にもてなす心が培われているからこそ。後日いただいたメールにはこうあった。

5. えり子さんからのメールへつづく

*目次に戻る


THE BORROWERSとは

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。