山川咲(CRAZY WEDDING)

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世界にひとつだけ、完全オーダーメイドの結婚式をプロデュースしている「クレイジーウェディング」。業界のお約束がなかなか強固な結婚業界にあって、会場も、プログラムも、空間装飾も、式ごとにすべてゼロから立ち上げる「クレイジーウェディング」のスタイルはとても革命的。決まった式場を持たないという点でも”借り暮らし”に通じるところがありそうです。

そんな「クレイジーウェディング」を立ち上げた山川咲さんは、どうやら私生活においては引っ越し魔らしく、2012年の創業以来、オフィスも幾度となく移っているんだそう。山川咲さんの考える結婚式、そして場づくりの話、じっくりお聞きしました。

※インタビューは2016年1月20日掲載


山川咲
CRAZY WEDDING代表、ブランドマネージャー。コンサルティング会社を経て、単身オーストラリアへ。帰国後に起業して、CRAZY WEDDINGを立ち上げる。著書に『幸せをつくる仕事』(講談社)。
https://www.crazywedding.jp/

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CRAZY提供写真より

 

#1 自分たちでつくる場の強さ

ー結婚式を完全オーダーメイドで。その意味はいろいろあると思いますが、今回は結婚式場のことを中心に教えてください。

わかりました。空間から受ける影響はすごく大きいんです。たとえば、式場が野原だとみんながのびのびとして、結婚式だという認識も変わってくるし、そこで出す料理をコース料理ではなく、BBQにするだけでも、見知らぬ参列者どうしがお互いに話し始めたりします。それくらい場には影響力があるのに、場を固定して結婚式をつくっていくということがまず考えられない。同じ場所で続けていくと人間ってパターンを定めたがるし、そのパターンから脱却するのが難しくなる。結果的にクリエイティブが死んでいくと思っています。

ー固定した式場を持たないということは、どうやって使える場所を見つけているんでしょう。

ほんとに制限はないので、銭湯でやりたいという方がいれば銭湯で、卒業した学校でやりたいという方がいれば学校を当たります。ここで結婚式をやってみたいと思ったら、もうがんばるしかない。国や都道府県に連絡をして許可をいただくことともあれば、パッと見た場所から妄想が広がって、そのまま”私、クレイジーウェディングの山川です…”みたいに、飛びこんでしまうことも。あとは、いつか橋を封鎖して結婚式をやれたらいいなとか、そういう発想は常に持っています。結婚式ってどこでもできるものだし、世界を見ればもっと自由です。

ーこれまでどんな場所での結婚式が実現してきましたか。

美術館、学校、キャンプ場、なにもない岬、ホール…あらゆる場所で結婚式を実現してきました。牧場と馬小屋でやったこともあります。

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造船場跡での結婚式

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御殿場プレミアムアウトレットでの結婚式/以上、CRAZY提供写真より

ー馬小屋ですか!

それは、日向ぼっこが似合うようなおふたりだったので、“ほのぼのウェディング”というのをコンセプトにして、牧場にお願いに行きました。”クレイジーウェディング? 横文字はわかんないよ”なんて言われながら、牧場のおじいちゃんを説得して。そしたら、おじいちゃんもすっかり巻き込まれて、”じゃあ、僕ができることはなんでもします!”って、草刈りからすっごくきれいにしてくれたんです。

ー結婚式に使うということに対していきなり理解はできなくても、一度腑に落ちたら協力的になってもらえるんですね。

そうなんです。結婚式のいいところは、場所を貸してくれたひとも、何らかの形でお祝いしたいという気持ちがすごく沸いてくるんです。自分の場所が大切な門出の場所に使われるのであれば、何でもいいから手伝いたいという気持ちですね。だから、その牧場でもちょっとやりすぎかなってくらい草刈りをしていただいて(笑)。だけど、当日は雨が降ってしまったので、雨の場合に使おうと思っていた牧舎と馬の練習場みたいなスペースをきれいにならして、天井からシャンデリアを吊ったりして空間演出をして、新郎新婦には馬に乗って登場してもらいました。

ーそんな結婚式、想像するだけで震えます。

結婚式ってすごく特殊な場で、これがたとえば単なる音楽イベントだとしたら、”歩きづらいー!”とか、いろんな不満が出るかもしれないですけど、結婚式であれば基本的に何をやってもみんながウェルカム。“ふたりの挑戦を見届けるよ!”っていう前向きな場だから、好きなことに挑戦できるチャンスなんです。

ーなるほど、結婚式は、一生に一度の大チャレンジをしていい機会と考えればいい。

そうです。結婚するふたりがこういう理由でこんな式を挙げたいと思えば、みんなが応援してくれるもの。だけど、これまでの結婚式は、”披露宴”っていう言葉にあるとおり、ふたりがお客さんになって、自分たちを披露する場だったんです。そうじゃなくて、ふたりが手をかけて工夫をして、自分のものにしていくことがすごく大事。それは結婚式に限らず、暮らしとかいろんな場で言えることだと思います。与えられたところでただ住まうのではなく、自分がつくるということ。

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ー自分たちが、という主語が大事なんですね。ちなみに、その方向でいくとクレイジーウェディングの出番がなくなりませんか。

私たちがサポートする、結婚するふたりといっしょにつくっていくという関係性ですね。普通の結婚式しか知らない人からすれば、そもそもこんな場でこんな形で式を挙げたいという発想がまず出てこないので、そこはいろんな話を聞き出しながら提案をしていきます。ふたりがただやりたいことをやってもダメなんです。ゲストからしたら、好きなことやってるだけでしょって受けとられてしまうから。そうではなくて、もっと深くにある本質の部分、来ていただいたゲストと10年後にはこういう関係性を築けたら最高だなとか、そういうふたりの本質をピックアップして形にしていかないといけないんです。

ー自分たちが主役、自分だけの、という言葉を履き違えてしまうことは、確かにたくさんありそうです。だからこそ、専門家のアドバイスが必要だということですね。

どんな結婚式でも間違いではないですけど、よりふたりのことを伝えるためには、クリエイティビティとロジックとの両方が必要なんです。だから、ほんとに難しい仕事だなと思います。

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CRAZY提供写真より

文:竹内厚 写真:佐伯慎亮

次回、山川さんご自身の住まい方に迫ります!


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。