山川咲(CRAZY WEDDING)

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#2 仕事とプライベートの境界を曖昧に

完全オーダーメイドの結婚式を実現したクレージーウェディング。その代表を務める山川咲さんの暮らしに迫ります。取材は、UR都市機構のうめきた都市再生事務所を借りて行いました。

※インタビューは2016年1月25日掲載

ー山川さんは一度マンションを購入されて、その後、賃貸暮らしだそうですね。

山川:買ってみたけど、ちょっと性に合わなかったですね。2012年の4月2日に会社を立ち上げてから、毎年、周年が来るたびに思うんです、こんな1年後は想像がつかなかったって。それくらいのスピードで成長をしてるのに、10年後20年後どうなってるかなんて、いい意味で想像がつかない。それなのに、場所やスペックの変わらない家というものを前もって購入しておくことって、ちょっと私には難しかった。

ー場所や建物は固定されたものなので、自分が動き続けているとどうしてもフィットしなくなりますね。

人生のプライオリティの問題でもあります。人生に絶対条件が増えることは足取りを重くすることでもあって、マンションを買うというのはやっぱり人生において大きな出来事ですから。

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ーちなみに買われたのはどんなマンションですか。

すごくいいマンションだったんです。とくに買う気もなく見に行ったら、その場で契約しちゃって(笑)。だけど、5年後10年後の自分に合うマンションだったかは、わからなかったですね。やっぱり暮らしの場が与える影響は、年をとるにつれて大きくなっている感じがします。

ーマンションを売ってからはどんな住まい遍歴でしょう。

半年に1回は言いすぎかもしれませんが、平均すると1年に1回は引っ越しをしていると思います。今の生活にジャストフィットした物件を探したくなるんですね。創業した時は、とにかくお金がないから家と会社を一緒にして、だけどすぐに社員が増えちゃって引っ越さなきゃいけなくなったり。その次のオフィスは、別の創業メンバーの夫婦が住んでいました。

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市ヶ谷にあったオフィス/CRAZY提供写真より

ーマンション購入から、オフィスと一緒になった住まいというのも大胆な変化ですね。

今までは働くことと自分の私生活を完全に分けて、ワーク・ライフ・バランスと呼ばれていた時代がありました。でも、やっぱり分けられないよねということで統合しようとして。だけど、それも違うかなというので、その境界を曖昧にすることがこれからのひとつの流れなんじゃないかと思っています。

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駒込にあった創業時のオフィス/CRAZY提供写真より

ー分けるか一致させるかだとわかりやすいけど、曖昧にするというのが一番難しいですよね。

そうなんです。だけど、私は働くことと生きることってほんとに一緒だと思っているので、全然違和感なくて。オフィスに“ただいま!”って帰ってくる社員もいて、感覚的にみんなにとってのおうちなんですよ。うちのオフィスはこれまでずっと、靴を脱いで上がるようになっていて、そんなことでもオフィスの距離がぐっと縮まったりするんですよね。ランチも毎日、全員いっしょに料理をして食べていますし。その席に来ているゲストも多くて、“いっしょにランチを食べてるあの人、誰!?”みたいな(笑)。ちなみに、昨年末にはまた違うオフィスへ移りました。

ーオフィスの引っ越しも頻繁ですね!

今度は東京・両国にある元繊維工場だったビルで、ちょうど新しいカルチャーを発信しはじめている東京の東側が自分たちの状況と重なるなと感じていた時に見つけた物件です。「境界線が曖昧なオフィス」をつくろうということで、業務を10日間停止させて、全社員でリノベーションを行いました。家なのかオフィスなのか、内なのか外なのか。境界線を曖昧にすることで、物事を自分事として捉えることができる場になったと思っています。

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社員総出でリノベーション中

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2015年末、リノベーション完了したオフィスの様子/以上、CRAZY提供写真より

ー結婚式ということだけでなく、住まいでもオフィスでも空間に対して敏感です。

空間のことはものすごく大事にしています。たとえば、今回のオフィスのリノベーションも全社員でやることに意味があって、自分がこのオフィスを作ってるんだと思うことで、空間に対する意識が変わりますよね。自分たちが手をかけてつくる場所かどうか、それってメンタリティに大きな影響があると思うんです。

ーよくわかります。

結婚式場に使わせていただく場所でも、普段使われていないところだと暗い空気や殺伐した感じがあったりするので、みんなで元気に声を出したりとかして、空間に負けてしまわないよう、私たちの空気が充満するようにして。住宅でも同じですよね。何年も人が住んでない家と、誰かがずっと楽しく暮らしている家では全然空気が違っているはず。

ー空間というのが単に建築的な構造のことではなく、中にいる人が形作るものでもあるということ。

ちょっとむずかしい話かもしれませんけど、そうですね。自分たちの手をかけ意識を向けて、ある意味テリトリーとしていくことって、私たちの会社もそうなんですよ。会社という組織が何かをしてくれるわけじゃなくて、自分たちができることを考えて、赤ちゃんみたいなCRAZYという会社を3年半かけて育ててきたんです。空間や場所のリノベーションと同じで、自分たちの手をかけていくことに意味があると思います。

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そんな山川さんが結婚式の会場候補として団地を下見したそうです。果たして山川さんの目に、団地はどのように映ったのでしょうか。


THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。