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#1 はこちら

―矢津さんは、kumagusukuを立ち上げるという経験を通じて、不動産は最強のツールなんじゃないかと感じたそうですね。

矢津 ネットなど作品を発表する機会が増える中、場所の持っている力が今、あらためて重要になってきているという前提があるかなと思うんですけど、その上で、僕が不動産に関して思うのは、不動産ってお金と密接に関わるものなんです。一方で、僕らがやっている文化的な活動って、そんなにお金との相性はよくない。なかなかお金を産まないし、アーティストとして必ずしもお金のためにやっているわけでもない。だからこそ、お金との親和性が高い不動産というものを文化で活用することができれば、必然的に文化とお金の絡みが出てきます。要するに、不動産的に投資として成り立つ枠組みの中に文化を入れてしまえば、不動産側の仕組みの中でお金が生まれてきて、その余剰によって文化を成立させていけるんじゃないかと。

―作品、文化というものを成立させるために、不動産は有効に使えると。

矢津 そうですね。ホステル、宿泊施設というのは、まさに不動産の仕組みの中にあって、その中で僕は、展覧会を企画したり、アーティストにもフィーが払えたりという状況ができています。そこが、不動産の可能性かなと。

野口 おおむね私も大賛成なんですけど、音楽の場合は特にネットの影響が強くて、CDが売れなくてレコード屋が大変だとか、ライブハウスも大変だって話が聞こえてくる状況で、場所が大事なんだと言いたいけど、ほんとに大事か? と思っちゃうところも正直あるんです。外をつくる以前、私も日々の仕事や生活があって、ライブハウスにあまり行ってなかったという時期が確実にあったよなって思い出すと…。

―ライブハウスを立ち上げていながら、正直な話ですね。

野口 いや、なので、外のような場所は絶対になくしちゃいけないし、やらなければいけないとは思っているけど、もしかしたらそれって、場所を持ってる側の勝手な言い分に聞こえちゃう場合もあるなって。弱気なときには、そんなことも思って打ちひしがれています。

―確かに、「〇〇の火を絶やすな」みたいな話になると、社会の状況とミスマッチな物件を持つ側の勝手な主張になってる場合もありますね。

野口 うん。外でやってることは絶対に面白いし、自信があるから、当店を是非って胸を張って言えるんだけど、「その日はちょっと飲み会が…」って返されたら仕方ない。文化に関しては、結構、難しいところもあるかなと思っています。あともうひとつ、場所は重要で、外というスペースを曲をつくるのと同じような熱量でこだわってつくったと言いましたけど、曲のたとえを続けるなら、はじまったからには終わりもあるだろうなと。

―永遠に続く場所なんてない、と。

野口 そうそう。やる前は、ずっとそこにあり続けるものとして考えていた節があった気がするんです。でもよく考えれば、行きつけのラーメン屋がいきなり潰れたりすることも当たり前の話で。不動産とお金の相性のよさって、矢津さんの言われるとおりだと思うんですけど、がゆえに、お金が理由でその場所がなくなるということも確実にありますよね。

矢津 ほんとそうですね。

野口 そう考えると、不動産って動かない物として捉えがちだけど、実はとても時間的なもので、過去の時間とこれからの時間が内包されたものだと思うんです。外は築40年の建物を改装して使っていて、耐震がどうだって言われたら一発で終わりかもしれませんし。

矢津 なるほど。終わりの時間というわけではありませんけど、僕も10年をひとつの区切りと考えています。kumagusukuの大家さんにも10年はやりますって伝えて、スタートしたので。

野口 そうですね、やっぱり私たちも10年が区切りだろうなというのは、なんとなくありますね。

―不動産に関わってみて、思いもよらなかった業界のルールって何かありますか。

野口 法律関係のことかな。実は、グレーな部分も結構あって。

矢津 ありますね。

野口 白黒つけるとお金がかかる、グレーなままだとお金はかからないけど、何かあったときに大変って、この踏ん切りをつけていくのが面倒くさかったですね。ちなみに外は、すべて白黒ちゃんとつけていますよ。小心者なので(笑)。

矢津 うちは宿泊施設なんで、民泊なんかの可能性もありましたけど、やっぱりちゃんと許可とってないと、今の活動には続いてないと思います。それこそグレーだと、こういった取材も受けづらいじゃないですか。

野口 不動産を持つことには、管理や責任がついてきますよね。ホステルのほうが大変でしょうけど。

矢津 365日24時間、人がいる場を運営していくって、ほんとにかなり大変ですよ。今、こうして話している間も、kumagusukuには誰かが滞在しているわけで、自分の中で常にその部分は確保しておかないといけない。休んだ気にならない…。

―まさにオーナーとしての責任。ライブハウスだと騒音の話もありますよね。

野口 そこで苦情がきたらアウトですし、夜に人が屋外でたまってしまうのもよくない。とにかくやっかいな存在ですよね、ライブハウスって。なので、近隣の方とのコミュニケーションの機会をこちらから増やしていかないと、ご理解はなかなか得られないと思ったので、ご挨拶はもちろん、地域の運動会にも出たりしました。

矢津 それは大事! 運動会と地蔵盆、このふたつに出ておけば間違いないです(笑)。

撮影:石塚俊

文:竹内厚 現場スケッチ:タケウマ

→第3回 場所と作品のイイ関係
アートホステルとライブハウス、それぞれの場所が作品制作にもたらす影響とは。社会と文化の接点について、不動産を通してさらに考えます。

〈ちょっとひと言〉
「外」というネーミングは、空間現代が持っている曲のひとつから。外では、空間現代のライブ、空間現代のメンバーが企画したライブの他、トークや映像イベントなどまで月に10本程度を開催。あくまでもライブハウスとして、どんな企画でも音響にはこだわっているという。

THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。