コミュニティをつくる実験

吉原:僕は、ずっと「コミュニティ」という言葉を遠ざけてきたんですが、現代の住まいにおけるコミュニティをみんなで勉強しはじめて、少しずつ答えが見えてきました。
コミュニティ型の入居者を集めて、その数を増やしていくことで建物全体をコミュニティ物件にしていく。これはもうできることなんです。
次に考えたいのは、どうもコミュニティなんて興味ない…という方が入居しても、快適な暮らしは実現するんだろうか。そういう実験なんですね。

―たとえば、どんな取り組みなんでしょう。

吉原:第1段階としては、ある目的を共有した人たちが集まって、なにか楽しそうにやっている景色を同じ敷地内につくれたら、そこに自分が別に参加しなくてもいい。それでもちょっとうれしいはずなんです。
第2段階として、自らそこに参加して楽しみを共有すること。そういう住まいが実現すれば、入居者が入居者を呼んで人気の共有住宅になっていく。すると、経営としては長期的にその建物に関われるわけですから、ビンテージな賃貸に育てられるという計画が描けるわけです。

新高砂マンションでは、解体中に出てきた廃材で空間を再構築する住人さんのプロジェクトが進行中だった。

レトロ賃貸+つながり=「ビンテージ賃貸」。未来の時間を見越して、ビンテージという言葉を冠した、この「ビンテージ賃貸」を吉原住宅では生み出そうとしている。
そのためにも、独自の「つながり」理論を唱える甲斐徹郎さんに協力を仰ぎながら、アフォーダンスや心理学といった考えかたにも学んでいる。
そうしたさまざまな取り組みは、大家という責任の範囲内で行う、現在進行系のモニタリングともいえる。

 

団地を買った理由

吉原:久留米で1000坪の敷地に3棟ある団地を買って、ビンテージ団地をつくろうという取り組みもはじめました。ただ、久留米という街の家賃の上限は5万円くらいなので、高いリノベーション費用を払ってということでは、やっぱり続けていけないんですよ。
 
そこで挑戦したいのが、お金をかけずにコミュニティを育成して、これによって実際に入居する人が決まっていくのかどうかなんです。古い建物の空き部屋こそが学びの学校だということで、「カレッジ」という場を設けてプロジェクトをはじめています。

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THE BORROWERS

借り暮らし、貸し借り、賃貸にどんな可能性がひそんでいるのか。多彩に活躍する方々へのインタビュー取材を通してその魅力に迫ります。いいところ、大変なところ、おもしろさ、面倒くささ…きっといろんなことが浮かび上がるはず。