吉永健一(団地不動産)

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2013年、吉永さんが立ち上げた「団地不動産」は、団地の魅力やオススメ団地を紹介するとともに、団地物件の斡旋や、入居希望者には内覧に同行してアドバイスまで行っています。決してUR都市機構の職員というわけではありませんよ。
一方で、団地愛好家集団「チーム4.5畳」のメンバーとして、住むことにとどまらない団地の楽しみも発信中。
建築士の吉永さんが見ている「団地」とは何なのか。そこにどんな可能性を見出しているのでしょう。吉永さん、教えてください!


吉永健一
一級建築士。自身で運営する「団地不動産」では、団地についてのさまざまな情報を無料で提供するとともに、団地の推薦、入居に当たってのサポート、不動産仲介や分譲団地のリノベーションなども手がける。団地愛好家集団「チーム4.5畳」メンバー。
http://danchi-estate.com

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#1 団地を語る説得力

―吉永さんは、一級建築士として設計のお仕事が中心なんですよね。

吉永:仕事のうち設計がだいたい7割、あとは団地不動産と、団地も含む「住宅診断」のことが半々くらいかな。ただ、「団地不動産」を見てという方から設計の仕事をいただくことも多いので、結構、団地がらみですね。

―では建築家の眼で見て、団地に興味を持ったということですか。

吉永:いえ、どちらかというと、50歳前後の僕らの世代って、学校ではあんまり団地をいい例として教わってこなかったんですね。僕らの先生たちは団地をつくってきた世代なので、団地の話には必ず触れるんだけど、その頃には計画性や均一性よりも個性や自由に重きを置く時代になっていたので、ちょっと反省モードというか。簡単にいえば、“団地はコンクリートジャングルで、鉄の扉を閉めてしまえば隣人とのコミュニケーションもまったくない”って言われ方をしていて、しかも、少子高齢化だとかの社会問題が、団地と重ね合わせて語られていた時代でした。

―現在でもそのイメージを引きずっているところはあります。

吉永:だけど、随分、変わってきたと思いますよ。ここのところ、実は団地もいいよねという見直しがいろんな形で行われてきましたので。問題があるとすれば、団地を活性化するために何かしようとか、空き家対策を何とかしようという話がニュースとして採りあげられることがあるけど、それって、やっぱりスタートがマイナスからなんですよ。そういう空気は結構伝わってしまうもの。団地=マイナスなものなんだなと思われてしまう。

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―何か問題のある現場だから仕掛けてるんだなと読まれてしまうと。それはその通りだと思います。

吉永:僕が団地好きになったのは、ちょうど10年前にリノベーションの依頼を受けて団地へ行ってみると、教わってきたことや世間で思われているイメージとは真逆で、団地はむしろ住みやすい集合住宅だと感じたことがきっかけなんです。その後で団地マニアの人たちに次々と出会って、「チーム4.5畳」というユニットも組むことになるのですが、彼らはほんとに「団地最高っ!」って思ってるんですよ。ほとんどの人が20代~30代の独身もしくは新婚で、実際に団地に住んでもいます。団地に住んだことのない建築やコミュニティデザインといった業界の人たちと組んで、「団地いいですよ」と言うよりは、全然説得力があるでしょ。あとは、彼らの感じてる団地最高というところの伝え方をうまくできれば。

―マイナスからのスタートではなく、プラスからスタートする形を選ばれたんですね。ただ団地に対する先入観と同じく、マニアという人たちに対する偏見もあるかもしれません。

吉永:きっかけは給水塔に惹かれたり、タイルがきれいといったディテールから始まっていたりしますけど、団地に通ううちに住まいとしての魅力に気づいて、結果、ほとんどみんなが団地に住んでるよって言うとやっぱり驚かれます。だけど、そこは一般のお客さんと違いはないですよ。実際に団地へ足を運んでもらったら、結構な確率で「イメージ変わりました。これなら住めます」って住む場所の選択肢に入ってきますから。

―団地というものをなんとなく知った気でいるだけに、実地に見てもらうことの意味がある。

吉永:そうです。ただ、「団地いいね」の次の段階として、いざ団地を探しはじめるとその情報があまりないんですよ。だから、「団地不動産」をやっているというのもありますね。

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―なるほど、いまの団地業界に足りていないリアルな情報の部分を補足されているんですね。「団地不動産」を運営する中で気づいたことって何でしょう。

吉永:団地の斡旋をしているとよくわかりますけど、お客さんがここに住みたいという団地って、めったに空きがないんですよ。あるいは、同じ団地の中でもやっぱり空いてるところって、わかりやすい例で言えば、階段で上の方の階だとか、そういう部屋は空いていても、条件を絞っていくとやっぱりほとんど空いてない。

―その話を聞いて思い出しました。私も昔、UR団地を探したことがあったけど、空いてるところだけを見たので、全然条件が合わないなと思ってすぐにやめてしまいました。もしかしたら、空き物件だけで団地を見ているから、団地の印象が微妙なものになっていたのかもしれません。その時は、人気の団地を見ることはほぼなかったですから。

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吉永:それもあるかもしれませんね。問い合わせれば間取りをファックスしてくれたり、URの案内所まで行けば団地を一覧できるパンフレットなども手に入るんですけど、なかなかそこまでする人はいませんから。

―空いてる=人気がない団地というわけでは必ずしもないでしょうけど。

吉永:まあ、でも、人気のある団地ってほんとに空きがないですよ。だから、「団地不動産」では継続的に空き情報を監視して、入居希望者に情報を提供することもしています。

―なるほど。それにしても、人気の高い団地とそれほどでもない団地の差はどこで出てくるんでしょうね。

文:竹内厚 写真:Ayami

→#2 団地のよさを知っているのは誰か
一律のように見えて、団地の実態はさまざまです。ちなみに、今回の取材撮影の舞台となっている富田団地(大阪)は、吉永さんイチオシ。次回、その理由なども伺います。

吉永さんも所属する「チーム4.5畳」による「週刊4.5畳」がOURS.で連載中です。
http://ours-magazine.jp/tag/4ten5jo/


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