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毎日あんなに面白い物件や、素敵な物件ばかり見ている森岡は、いったいどれだけパンチが効いた家に住んでいるのか。よく聞かれるので先に謝っときます。すんません。
 
実はイロイロな都合があり、私は春から松戸市という町に住んでいる。常磐線松戸駅徒歩5分ほど。エレベーターなしの古いマンションの5階。普通の家探しとは違い、この部屋は自分で探して住み着いたわけではなく、“イロイロな都合”という都合によってあてがわれたものだ。
 
幾つか不都合なこともあるが部屋は広く、“イロイロな都合”のおかげで家賃は格安だし、気に入らないというわけではない。だが、またその“イロイロな都合”により、私は来年の秋にはこの部屋を出ることになっている。
 
約1年半のカリグラシ。借家を、仮の家として期間限定で暮らす。
ここまでカリだと部屋にお金も労力もかける気はおこらず、ほとんどすべて知人友人から譲ってもらったもので部屋を作った。というより、きっと私がこの部屋を後にするときには、ここにある家電や家具はまた社会に帰っていくような気がしている。タマタマの余剰を期間限定で今は借り受けているだけなのだ。
期間限定に合わせた借家に借り家電。借り家具。借り道具。仮の持ち主が私。カリグラシに相応しいカリグラシぶり。しかし、それらの家電家具を譲り受けることも、引っ越して2週間弱でやめにした。もう、持ち上げない。5階までなんてもう何も運ばないぞ! と。おっさんは心の中で叫ぶ。
ということで、今の我が家は貧乏男子大学生よりもひどい。冷蔵庫、洗濯機、オーブンなどの生活家電はひと揃え揃ってはいるが、ソレ以外はほんとにひどい。箱ひとつ分の服、箱ひとつ分のカメラ関係の機材が整理さえされず、押入の棚部分に開陳されている。
そして。12畳大の部屋のど真ん中に広げられた敷き布団(掛け布団もまだない。やばい)。小さなデスクの上に置かれたノートパソコン。それと季節バズレの扇風機。それだけのこの部屋に、愛着はない。
 
わかったことがふたつある。
ひとつは、カリグラシ度が高いと、見るも無惨に暮らしが荒れる。よくない。そしてもうひとつは、本当に最低限必要なものを思い入れのない部屋に並べてみても、それら仕事道具や衣類などに愛着はあれど、「自分の家」だと感じる要素は生まれないということ。つまり、生活は荒れる。よくない。
 
そんな中、思い出したのは、某ベンチャー系宗教の信者である友人の転居の際、手伝いに行って見かけた、いわば仏壇のようなものの存在。また別の友人が、事務所の席替えの際に持ち運んでいた写真立て。
彼らは、彼らのホームたらしめる存在を持っていたのだろう。引っ越し後、まずはそれらを開くのだ。きっと愛着を越えた存在。愛の対象、その偶像なのだろう。なるほど。
 
カリグラシではあるけれども、しばらくこの部屋ですごすのだから私も少しでも暮らしを充実させるべく、まずは森岡家のゴホンゾン的なものを探しながら暮らそうと思う。それがあれば、それだけでそこが私のホームになるゴホンゾン。
 
ともかく開く何か。開くと“森岡家チャンネルがON”になる何か探し。それが今の暮らしを楽しむテーマだ。

 

森岡友樹
大学在学中に村上隆に見初められ 10 代でアーティストデビュー。 国内外で個展、グループ展参加。受賞歴少々。独立後、主にプランニングの仕事をする傍ら不動産領域での活動も開始。面白い間取り図を皆で眺めて楽しむ「間取り図ナイト」は全国で延べ 50 回以上開催し、ほぼ毎回完売の人気イベント。現在は『間取り図ナイト最終回ツアー』と題したイベントを引っさげ、全国 47 都道府県を巡回中。2016年、「物件ファン」編集長に就任。
https://bukkenfan.jp/

カリグラシコラム

そのことを仕事にしている人もいれば、普段の暮らしの中でモヤモヤとした思いが浮かんでいる人もいる。借り暮らしにまつわる意見や考えを、さまざまな人たちが自由なスタイルで綴ります。