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書店員、フリーライターを経たのち2015年漫画家のしろうべえと結婚、京都太秦にある家族経営の出版社しろうべえ書房の一員に。2歳になる娘を育てながら日々のつれづれを書いています。
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8月5日

朝ごはんを食べながら、甲子園開会式の中継をみる。行進する球児たちの意気揚々たる足どり、晴れやかな顔。選手宣誓で「甲子園は平和の証」と言っていたけど、その通りだ。野球じゃなくてもいい。青春のひとときを思うさま生きられることは、それだけで平和の証。
夜、壬生の芋松温泉にいく。ここは唐破風屋根とタイル装飾がレトロな、京都でいちばん肌がつるつるになる(と夫と私の信じる)銭湯。うちのお風呂は京都の古い家の例にもれず狭く、夏場はたちこめた湯気で息がつまりそうになり長湯できない。かといってすぐにあがれば、なまぬるい体から汗が止まらず全然さっぱりしない。だから真夏の夜は銭湯に限るのだ。熱々のお湯にざぶんと浸かると、体じゅうの細胞が幸せを叫ぶ。こういうのもきっと平和の証のひとつなんだろう。

8月6日

夫と娘と、出町桝形商店街へ。うちの本を置いてくれている風の駅を訪ねてみたが閉まっていた。それで、糺の森を散歩することにした。営業まわりは、家族のお出かけを兼ねている。いつだったか、ゼスト御池のふたば書房で同業者のM氏に会ったとき、「すごい営業スタイルですね」と驚かれた。首からカメラをさげた夫と、娘をのせたベビーカーをおす私の姿は、とても仕事中には見えなかったらしい。
あまりにも暑かったので、コーヒーハウスmakiで一休み。娘はパウンドケーキをうれしそうに頬張る。学生のころ、ここで本を読むのが好きだった。子どもといっしょに訪れる日がくるなんて。

8月7日

夫が編集中の文芸誌の装丁資料探しにつきあって、岡崎にある古書herringを訪ねる。前にきたとき、戦後すぐのころの『中央公論』を何冊か見つけたのだ。店主のルパンさんが、ほかにも昔の雑誌をいろいろ出して見せてくれる。植草甚一の『ワンダーランド』創刊号もあった。ここは宝の山だ。古ぼけた町家いっぱいにひしめきあう本の隙間に椅子を並べて、いつでも数人のおじさんたちが酒盛りをしている。今日も、マン・レイを愛する文筆家、広島からやってきた元記者など、濃い面々が昼間からビールを飲んでいた。私たちも混ぜてもらう。京都の歴史や民俗学やラブホテル論で盛りあがり、「京都風俗研究会をたちあげよう!」と気炎をあげる。

8月8日

夫と車で大阪の書店シカクへ納品に出かけ、ついでに付近を散策することにした。近くにUSJがあるというのに、このあたりは時が止まったような昭和の町並みが残っている。昼さがりの商店街では、肉屋の店先で背中の曲がったおばあさんがホルモンを焼いていたり、八百屋のおじさんが野菜を並べた台の後ろで昼寝していたりした。海が近いせいか魚の種類が豊富でいきがよい。鳥屋でからあげを買い、ベンチで食べる。日が傾いてくると、猫たちがのっそりと現れた。移転する前のシカクがあった中津商店街もよかったけれど、ここも同じにおいがする。やっぱりシカクには、商店街と猫がよく似あう。
帰りの道中、おもしろい歩道橋を見つけるたびに写真を撮る。京都より大規模でダイナミックな構造の歩道橋が多いみたい。京都の歩道橋はこじんまりとした中にひねりを効かせた造りで、いかにも京都らしいと思う。

2018年4月1日にスタートしたリレー日記です。1週間単位でさまざまな方に暮らしの日記を執筆いただいています。

カリグラシコラム

そのことを仕事にしている人もいれば、普段の暮らしの中でモヤモヤとした思いが浮かんでいる人もいる。借り暮らしにまつわる意見や考えを、さまざまな人たちが自由なスタイルで綴ります。