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神戸在住。2002年ウズラボ共同設立。現在、大阪市立大学准教授。建築をつくったり、直したり、見たり、教えたり。2018年は、『リノベーションの教科書』(学芸出版社・共著)という本を出版。

3月3日

小雨。朝から大阪の長屋が残るまち中崎町・豊崎に向かう。会議と展覧会と打ち合わせのためである。一昨日から「3日間の展覧会 藝術のすみかvol.7」がはじまっていて、人が暮らしている町家・長屋をその場所の特性を活かしてサイトスペシフィックに使うとは? というのが会議と展覧会のテーマ。7回目の展覧会だが、長屋に暮らすrepairの2人による企画に惹かれて、毎回来てくれる人も多い。いつもは、続き間になっている座敷の襖を取り払って一体的に使うのだけど、今回は、この展覧会に合わせてつくられた襖が真ん中に置かれていて、ゆるやかに部屋を仕切っている。縁側では、黒田武志さんの作品が柱ごとに設置されて音を奏でていたり、filithemateriraの三嶋初美さんの布と糸でできた桜の花びらにふわっと、というか、ぶわっと息を吹きかけてみたり。町家の中を移動しながら、体全体を使って作品と対峙できる素晴らしい時間。
ところで、今日はひなまつり。帰宅して、サラダとすまし汁をつくり、母が持ってきてくれたちらし寿司をひな壇の前のちゃぶ台に並べる。おひなさまは大きすぎるのかちょうどよいサイズなのか。部屋のサイズ、ちゃぶだいの周りの人々を見ながら、ロバード・ヴィンチューリのことを思う。障子を開けて玄関土間からみるおひなさまからは迫力を感じるし、締め切った小さな部屋でおひなさまの前に小さく固まってごはんを食べるのも悪くない。食後に、NHKの大河ドラマ「いだてん」を見ていたら、主人公がシベリア鉄道に乗って日記をつけはじめた。わたしも日記をつけはじめようと思う。

3月4日

今日も小雨。今朝は、神戸でしごとをはじめる。パセリが効いたポトフの昼ごはんを食べながら、昨日の「音遊びの会」のリハーサル映像をみて、目が離せなくなる。「音遊びの会」は、知的な障害を持つメンバーを含むアーティストの大集団で、古くからの神戸の良港でいまは重工業が盛んな和田岬というまちを活動拠点にしている。近所の縁や人の縁で、3月30日、31日に開かれる「ないしょのみらい」というイベントのお手伝いを少ししている。「ないしょのみらい」のちらしには「とんでもなく自由な時間が待っています」と書かれていて、どんな時間になるか本当に楽しみになってきた。
夕方は大阪駅ちかくで「オープンナガヤ大阪」についてのミーティングとごはん会。オープンナガヤ大阪とは、大阪の人口が日本で一番多かった大大阪時代に建てられた長屋を「暮らし開き」というテーマで秋の2日間にオープンするイベントである。長屋というキーワードを軸にすると、普段は異なる仕事や活動をしている人と話しが盛り上がるのが面白い。楽しく気持ちのよい時間を過ごす。

3月5日

あたたかい日。アジの開きと豚汁の朝ごはんを食べて堺に出かける。夕方は大阪の土佐堀川沿いの「キッチンハウスにちにち」さんの1階を借りて、研究室の卒業生を送り出す会。大学院を卒業してこれから社会に出るという、濃密な時間の終わりと新しい時間のはじまりの瞬間に立ち会うことができてしあわせだと思う。にちにちさんの料理はいつもたっぷり美味しく、こんなに食べたの久しぶりというくらい食べた。ピザ、ポトフ、麻婆焼きそば、鶏の丸焼きなどなど。
修了生は、直前の2週間にドイツとデンマークを旅して、いろんな建築をみてきたという。デンマークのルイジアナ美術館のお土産としてステンレスマグをいただく。深い青とからし色をした裾広がりのフォルムや箱と中身が同じ配色であるところなどからデンマークらしさを想像する。

3月6日

少し雨が降る。あたたかい豚汁の朝ごはんを食べて出かける。春休みの学校でゆったりといろんな話をして過ごす。日記を書きはじめて4日目。好きな日記を読み返したくなる。『GA』という建築の雑誌の編集者である二川幸夫さんの『GA日記』を読み返す。すごいスピードで移動しながら、濃密な建築の情報をインプットして記録するその熱量を疑似体験できる。そんな熱量を持ちたいと思いながら、今日は早く寝る。

2018年4月1日にスタートしたリレー日記です。1週間単位でさまざまな方に暮らしの日記を執筆いただいています。

カリグラシコラム

そのことを仕事にしている人もいれば、普段の暮らしの中でモヤモヤとした思いが浮かんでいる人もいる。借り暮らしにまつわる意見や考えを、さまざまな人たちが自由なスタイルで綴ります。