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父、おとうさん、パパ、親父……
その後ろ姿から
家族と住まいのことを見つめます。
ベベチオのはやせさんによる父さん話。

うちの近所に大きなダムがあって、そこへよく父さんと釣りに行きました。木からルアーを彫ったり、鮎の友釣りをしたり、釣り好きの父さんはいろんな釣り方をしてたけど、ブラックバスに関しては一番いい餌を知ってました。朝早くから起きて、川のエビをしこたま採るんです。子どもの僕と兄ちゃんはエビ採りが主になるくらい夢中になりましたけど、そのエビがあればブラックバスがよう釣れるんです。まだバス釣りがブームになる前だったので、釣る人があまりいなかったという理由もあるかもしれません。
その日もエビを採って、リールのない竿に糸を垂らしてブラックバスを釣ってました。そんなやり方でも、すごく大きいブラックバスが釣れました。思わず、対岸にいる別の釣り客からも拍手が起こるくらい。その後も、ブルーギルとかいろいろ釣れたけどすぐにリリースして、その大きなブラックバスだけは網に入れて自分の手もとに泳がせてました。「大物やから気に入ってるんかな、父さん」。子ども心にそんな風にも思ってました。
けど、その日の釣りを終えて帰ろうという時には、さすがにそのブラックバスも放さないといけません。家に持ち帰っても仕方ないですから。父さんがブラックバスを抱えて水に放そうとしたんですが、まさにその時、ブラックバスが自分の力で跳ねて、その勢いで水に飛びこんでいきました。とっさに「何事や!?」という顔になった父さん、反射的にダムの中へ飛びこんで、そのブラックバスを水の中でキャッチ。捕まえたブラックバスを抱えながら、ダムからびしょ濡れになって上がってきました。それから、自分の手でやさしくリリースしたんです。
一体どういうことだったのか、どういう意味があるのかよく理解できなかったし、今でもわかってませんが、自分で捕まえて、自分で放す。それが父さんなりのキャッチアンドリリースだったのだと思います。

早瀬直久
音楽ユニット ベベチオのボーカル&ギター。よそ見がモットーな企画チーム「ragumo」の代表も。
6/30(土)に札幌のレストランや、7/1(日)に大阪・ムジカジャポニカでライブがあります。梅雨、意外と嫌いじゃないんです~。
http://www.bebechio.com

イラスト:ちえちひろ 構成:たけうちあつし

  


<これからの予告>
05 再婚

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