文化の小窓


推薦の回

推薦:鷹取愛(山ト波)

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借り暮らし、団地、長屋などをテーマに視聴できるカルチャーネタを詳しい方々から教わります。今回の推薦人は、書店やギャラリーだけでなく、元小学校や公園まで、様々な場所を借りながら、イベントの企画を行っている鷹取愛さんです。

鷹取愛(山ト波)

「山ト波」という屋号で、京都⇔東京を中心にギャラリー展示やイベントの企画をしています。週末のみオープンする、鴨川五条の「本と紙のお店homehome」の店主もしています。その他、出張バーの「バー人間」や「ロンゲバー」というユニットも。
http://yamatonami.com

recommend 01
書籍『たべる しゃべる』
(著:高山なおみ 文春文庫 2012年)

高山なおみさんの本は、20代の頃は全然読めなかった。なんだかしっくり入ってこなくて、今はその時ではないかなと思って、ずっと本棚の奥にしまい込んでいました。自分が30歳を過ぎた頃、急に時期が来たような気がして、文庫版を買って読み直した『たべる しゃべる』は、今はすごく大事な本。この本は高山さんが9人の親しい友人の家などに出むき、その人のためだけに食事をつくり、お酒を呑みながらしゃべる、というもの。細かい描写で、相手の人柄と家の景色が描かれていて、目をつぶると、鮮明にその場の空気感が感じられる。なかでも「カトキチ&アム」の回がとても好き。中央線のとある駅の木造の長屋、庭があり、犬も飼える家。キッチンが楽しくて、使い込まれているけれど清潔で、2人の生活の根本がそこにはある。アムさんが文中で「根っこが一緒でとちゅうからふたつ(カトキチとアム)に分かれている大きな木になりたい」と言っていて、そのフレーズが妙に、ぐっときます。今いる場所が自分の場所。自分の持ち家じゃなくても、住んでいる場所を育てて、自分のものにしていく。これだ!と思ってよく思い出すフレーズです。今、カトキチさんとアムさんは北海道に住んでいます。

recommend 02
映画『お早よう』
(監督:小津安二郎 1959年)

「お早よう、こんにちわ。いい天気ですね。だなんて、大人たちこそ、無駄なことを言っている」。昭和30年代初期の長屋がたくさん並ぶ住宅地を舞台にした小津安二郎の『お早よう』という映画の中の一幕。「テレビなんかみてたらアホになる。早く勉強しなさい」と親に言われて腹を立てた子ども達が大人同士の何気ない日々の会話に悪態をつく一言。おでこをこするとおならが出るとかいうどうでもいい噂とか、毎日絶対に起こる小さな事件とか、それってホントに一人で生きているだけじゃ起こりえない、結構愛おしい出来事で。昭和の団地とか、長屋の路地裏特有の場所に起こる大事な日常だと思う。昔はいい。今もいいのかもしれないけど、もうちょっと、なんだか、毎日に予期せぬドラマがあったでしょう。私の小学校は団地の真ん中で、友達はみんな団地に住んでいて、楽しいことも悲しいことも思い出は全部そこだった。初めて足の毛をみんなで隠れて剃ったのも団地です。私はやっぱり将来は、集合住宅とか、顔なじみのおばあちゃんがいるような場所で「お早よう、こんにちわ。いい天気ですね」と言っていたいです。

recommend 03
書籍『青いドックフーズ』
(著:長谷川集平 1980年)

「あいちゃんの彼氏は、つげ義春の『無能の人』に出てくる石を売る人に似ているよね」と、昔友人に言われたことがあります。その彼とは別れてしまったけれど、今でも変わらず駄目な人が好きだなあとつくづく思います。アパート、畳、二人暮らし(季節は夏)、というものに、いつしか憧れていました。クーラーもなく、お金もなく、しょうがなく住んだボロいアパートの2階で、ただの時間を過ごすだけ。なんだか、ものすごくねっとりとしてさわやかじゃない感じが良いなあと思うのです。私も少しだけ二人暮らしをしたことがあって、そのとき相手は仕事を辞めたばかりで家にいて、毎日自分は朝から晩まで働いてぐったりして帰宅すると、パンツ一丁で一言目に「ご飯は?」。怒りの沸点は最高潮なのに、私は黙々とご飯をつくる。クセみたいなもので、私のこれはもう一生なおりません。長谷川集平の『青いドックフーズ』もちょっとこんなのと似ていて、男は何度も仕事をクビになり、女はうんうんと毎日男の愚痴を聞く。男は女に「あんたのこと愛してないのかなあ」と言うんだけど、女は「バカじゃないの」と返す。これもまた、ボロいアパートの2階のお話です。

※現在の「OURS.ライブラリー」
推薦人:安田謙一(ロック漫筆家)
001 DVD|『彼女と彼』 推薦の回 感想の回
002 DVD|『Hole 洞』 推薦の回 感想の回
003 DVD|『Ricky リッキー』 推薦の回 感想の回

推薦人:山下賢二(ホホホ座)
004 DVD|『ウルトラセブン Vol.12』 推薦の回 感想の回 感想の回
005 書籍|『団地を楽しむ教科書 暮らしと。』 推薦の回
006 CD|高田渡『系図』 推薦の回 感想の回

推薦人:坂上友紀(本は人生のおやつです!!)
007 書籍|『井伏さんの横顔』 推薦の回 感想の回
008 書籍|『ほんまにオレはアホやろか』 推薦の回 感想の回
009 書籍|『本のお口よごしですが』 推薦の回

推薦人:野村誠(作曲家/ピアニスト)
010 書籍|『ココロのトリ ドローイングの旅に出る』  推薦の回
011 書籍|『とくいの銀行 なんとなく開業マニュアルブック』 推薦の回

推薦人:梅田唯史(元beyer店主)
012 DVD|『トキワ荘の青春』 推薦の回
013 書籍|『団地の見究』  推薦の回
014 CD|加地等『鐘は鳴らない』 推薦の回

推薦人:髙橋耕平(美術家)
015 書籍|『地図と領土』  推薦の回
016 DVD|『これは映画ではない』 推薦の回 
感想の回

推薦人:関美穂子(型染め作家)
017 マンガ|『こんぺい荘のフランソワ』  推薦の回
018 マンガ|『いろはにこんぺいと』 推薦の回

推薦人:松元明子(shopへなちょこ)
019 書籍|『キッチン』 推薦の回
020 書籍|『ティファニーで朝食を』 推薦の回

推薦人:松嶋友紀(英語教室ESS/翻訳者)
021 ドラマ|『New Girl / ダサかわ女子と三銃士』 推薦の回
022 映画|『フランシス・ハ』 推薦の回

推薦人:林拓(歌手)
023 映画|『エンドレス・ワルツ』 推薦の回
024 書籍|『なしくずしの死』 推薦の回
025 書籍|『山之口貘詩文集』 (講談社文芸文庫)より「生活の柄」 推薦の回

推薦人:渡辺亜由美(滋賀県立近代美術館/学芸員)
023 映画|『ライフ・アクアティック』 推薦の回
024 音楽|『さよならストレンジャー』 推薦の回
025 書籍|『ことり』 推薦の回

推薦人:鷹取愛(山ト波)
026 書籍|『たべる しゃべる』 推薦の回
027 映画|『お早よう』 推薦の回
028 書籍|『青いドックフーズ』 推薦の回

推薦人:桂弥太郎(落語家)
029 DVD|『特選!!米朝落語全集 第四集』より 落語「天狗裁き」推薦の回
030 映画|『0.5ミリ』 推薦の回
031 ドラマ|『すいか』 推薦の回

推薦人:イルボン(詩演家/gallery yolcha車掌)
032 音楽|『神様ごっこ』推薦の回
033 映画|『ヴィクトリア』 推薦の回
034 書籍|『キリイシ -切石智子著作集』 推薦の回


文化の小窓とは

借り暮らしや賃貸住宅にまつわる映画や本、漫画などを、その道のプロフェッショナルな方々に推薦いただいて、編集部にライブラリーを設置。それらを貸し出しての感想文も随時、掲載していきます。