シェアハウスのオープ二ングイベントに行ったら
魔法が解けた話

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去る6月19日、以前OURS.で取材した西新宿のシェアハウスのオープニングイベントに参加してきました。そこでは「新しい暮らし方のかたち」をテーマに3人のゲストスピーカーによるトークセッションが。
 ゲストスピーカーは3拠点居住をしているフリージャーナリスト 佐々木俊尚さん、シェアハウスを自ら購入し居住し研究する日本大学准教授 久保田裕之さん、そしてOURS.編集部から、UR都市機構西日本支社のUR-DIY部部長 小正茂樹さん。

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左から佐々木俊尚さん、久保田裕之さん、小正茂樹さん

 「新しい暮らし方のかたち」というテーマのトークセッションでしたが、話の切り口はライフスタイルの話から恋愛観、家族観、経済、コンパクトシティ、自立とは何かという哲学的な話まで多方面におよびました。その様子を写真とともにレポートします!

 この西新宿の新しいシェアハウスの成り立ちや住人さんへのインタビュー記事はコチラ
http://ours-magazine.jp/borrowers/sharehouse-1/

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シェアハウス住人のあべさん(写真檀上右端)の進行でスタート。おいしい料理とお酒をいただきながらのトークセッションでした。

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フリージャーナリストの佐々木俊尚さん。ご自身の東京・軽井沢・福井の3拠点での生活の使い分けについて、東京は主に当日のように人と会いまくったり、情報を仕入れる場所、軽井沢は静かで環境がいいので仕事に集中できる場所、福井は人があったかくて料理がおいしい癒しの場所など、それぞれの場所での暮らし方を紹介くださいました。また、それぞれの場所にコミュニティが出来て、何かあっても助け合える関係性ができているそう。確かに場所が変われば生活のモードも環境に合わせて変わりそうだし、住む場所が増えるとソーシャルキャピタル(社会関係資本。人や社会とのつながり)はとても充実しそうです。転校すると友達が増えるような感じでしょうか。しかも前の2つの学校にも同時に通ってる的な。また、拠点間の移動が大変ではあるという話もありました。その苦労も自動運転技術が発達すれば解消されるのかもしれませんね。

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 久保田裕之さんはご自身でシェアハウスを購入・運営していてかつ自らもシェアハウスに居住し、シェアハウスを研究しているということで今回のトークセッションにはうってつけの人材!社会学的な立場から、シェアハウスについて語っていただきました。
 一見、人が集まって住む形がシェアハウスをはじめ多様化しているように見えるけれども、むしろ今まで当たり前と思い込んでいた住み方(=家族で住むか一人暮らしか恋人と同棲か。)が、長い歴史の中で見ると異常な状態で(!)、朝ドラでよくみられるような身内も他人も一緒に暮らしていた時代の方が長かった。それが最近になってようやくまたそのような多様な住み方を思い出したに過ぎない(!!)という久保田さんの見解は、まさに目からウロコでした。さらに久保田さんは、人が家族以外の人と一緒に住むのは恋人や夫婦になってからということだけではなく、男女関係なく兄弟のような信頼関係を築き、シェアハウスに住むのもありなのではないか、と続けます。それを、「魔法が解け、『家族が閉じていた時代』が終わる。」と一言で表す久保田さん、かっこよすぎます!今までの自分の狭い視野が大きく広がりました。
 私見ですが、魔法というのは高度経済成長期の核家族化や、住宅すごろくのゴール(夢の庭付き一戸建て)のような凝り固まった価値観そのものと思いますが、テレビ等の一方通行的なメディアからSNS等で自らも情報発信できる双方的な時代になり、いままでも確かに存在していたけれど明るみに出てこなかった多様な生き方について知る機会が増え、シェアハウスをはじめとした多様な住み方のハードルが下がってそれを実践する人が増えた結果、一周回って社会的に認知されるようになったということでしょうか。自分に合った多様な生き方ができ、それが許容される社会というのは素晴らしいですね。
 ちなみに、当日話を聞きに来ていた参加者の方もシェアハウス経験者が多く、それぞれ住んでいる(いた)シェアハウスがまた個性豊か(編集者が集まるシェアハウスや、特に会話はしたくないけど気配を感じていたい人が住むシェアハウスなど)で、とても「シェアハウス」という一語で表しきれない多様さがあると思いました。話を聞いているうちに、すでにシェアハウスに住むことも当たり前の選択肢になっているのだと感じました。 

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 関西からやってきたUR都市機構の小正さんは、自身の幼少期は下町の風呂なし長屋でみんな銭湯に通うような、家族を超えた地域単位での生活の話(魔法にかかる前ですかね!)から始まり、生業とするUR都市機構の賃貸住宅(団地)について、公団発足当初の団地は大量供給の時代の要求には答えつつ、コミュニティと住宅環境を両立させる狙いがあった「縦長屋」とも呼ばれる階段室型住棟(片廊下タイプの横同士しか顔を合わさないタイプとは違い、階段で上下とお向かいの住民と顔を合せる機会が生まれる)の話や、数年前から取り入れているハウスシェアリング制度(参考→http://www.ur-net.go.jp/kanto/housesharing/adult/ )、さらに現在では1つの住戸での取り組みだけでなく、団地全体を一つの大きな家として、集会所や屋外空間などの共用部を使ったコミュニティ形成の取り組み(DIY工房→http://www.ur-net.go.jp/kanto/housesharing/adult/や 伊東豊雄×URみんなの庭プロジェクト→https://www.facebook.com/itoxur/)を紹介しました。

 ここで会場から質問が。「シェアハウスなどでみんなで一つの家に住むようになると、空家が増えて経済的にデメリットが生じるのではないですか」それに対し、今まで個人や少人数でたくさんの家に住んでいるときの、インフラの維持管理コストも大きいので、家や街が小さくコンパクトになっていけば、社会全体として良くなっていくのではないかという回答が。ここでも広い視野で考えることが重要のようです。
 MUJIとのコラボ住宅を作ったり、DIY住宅やDIY部を結成したり、あたらしい賃貸団地生活を提案している小正さんの信条は「ほしい未来はつくる。」だそうです。フリージャーナリストと研究者と会社員という、3人のゲストスピーカーそれぞれが、三者三様、多様な生き方を体現しているようです。

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 もう一つ面白かった話を。会場から、「今までシェアハウスに住んでいたが、自分は片付けができない性格なので、人に頼ってはだめだと思い、自立したくて一人暮らしをはじめたんですが、逆に一人暮らしだと片付けなくても怒る人がいないので、余計にダメになっている気がします」という、質問というか人生相談がありました。聞けば彼はシェアハウスでは片づけはできないけれど、ムードメーカーとして場を明るくしていたらしく、それを聞いた佐々木さんから、「一人でなんでもできることだけが自立ではなく、社会の中で自分の立場を自覚して役割を果たしていることも立派な自立。自分のダメなところは他の人に補完してもらい、代わりに別の部分で貢献していればよい」という、またまた金言が!今日はどれだけ目からウロコが落ちるのか。金八先生の「人」の話を思い出しました。

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最後に。シェアハウスの概念は一見新しいようでいて、実は長い目で見たら「あたりまえ」だったとか、一人暮らし=自立とは限らないとか、いろんな視野が一気に広がりました。まさに今までの狭い視野にとらわれていた魔法が解けた感じです!会場は若い人が多かったですが、質問や意見や人生相談までたくさんゲストに投げかけられ、大いに盛り上がりました。数世帯が一緒に住んでいるという形のこのシェアハウスの動向も、(会社も近いので)今後ともチェックしていきたいと思います!

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(おまけ)
トークセッションが終わってパーティに移行しても、ゲストはそのまま残っていて、来場者でいっぱいのシェアハウスのリビングではそこかしこで活発な意見交換が行われていました。その住人と非住人が混ざり合うカオスな光景をみて、これも一人暮らしや実家のリビングではきっと見られない、シェアハウス空間の独特な使い方だと思いました。
 シェアハウスを出ると、会社は近いけど家は遠いことに気づいて、また魔法が解けた感じがしました。

写真・文:三上特派員