なぜか捨てられないもの その2

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展覧会というせっかくの機会なので、
「なぜか捨てられないもの」の話をもう少し続けたい。

なぜか捨てられないものと聞くと、「うんうん、大事なものね」と、
意味を変換して理解される方もいると思う。
大事なものには確かに違いない、違いないけど…と口ごもってしまう、この「…」にあたるところ、そっちの気持も実は置いてけぼりにしたくない。

ひとの気持ちの機微を見つけることに大変長けている、作家の長嶋有さんの文章にこういうのがあった。

”思えば最近、定規で線を引かない。引っ越しで机を動かしたら、壁とのすきまに三角定規が落ちていて思ったのだ。もしかしたら、もうこれから先ずっと、三角定規でまっすぐな線をひかなくてもいい人生だ。
では捨てていったかというと、なんとなく新居に持っていった。愛着があるからではなくて、これから先の人生で定規で線をひくことがないというのが、自分でそう思ったくせに漠然と信じられなかったのだ。邪魔な大きさではなかったせいもある。ペンケースもコンパスも、そういえばまだ小学生のときのを捨てていない。「物を大事に」しているのではない。どこにしまったかも覚えていない。ただ持っているだけだ。” (長嶋有「文房具屋で老ける」)

必要があれば、コンビニでも100均でも行ってものさしを買ってくればいい。その方が合理的だとわかっているし、なんなら、いざ線をひく時に肝心の置いておいたはずのものさしが見つからなくて、きっと新しいのを買ってしまったりするんだろう。
それもわかっている。わかってるのに、なんとなく持ち続けてしまうものがそれぞれの家にあって、その選択にはその人らしさがにじみでていると思う。

長くなってるけど、もう少しだけ文章を続けると…
梅田の古本店「本は人生のおやつです!!」店主・坂上友紀さんは、古本の魅力、意味についてこう書いていた。

“この話を読んで私自身、なお一層古本の魅力にハマってしまって今にいたります。どれも同じ本、ではないのです。経る年月でかけがえのない唯一のものになっていく。それが受け継がれていくことの良さだと思うのです!”  (OURS.サイト内「文化の小窓」より)
http://ours-magazine.jp/culture/recommend-3/

そして、
OURS.でのインタビューで、アサダワタルさんが言ったひと言。

“僕はやっぱり、貸し借りにおいて、個人の主体がはっきり関わってくるところに面白さを感じてるんですね。” (OURS.サイト内「THE BORROWERS」より)
http://ours-magazine.jp/borrowers/asadawataru-3/

あるいは、アサダさんは先の発言の前にこんなことも。

“中古住宅には、過去の履歴があるからこそ楽しめることがあるという話を、DJの感覚にたとえて文章を書きました。もともとある曲をDJがつないでいくことで、1曲1曲がまったく違う意味を持ちはじめるように、貸し借りで蓄積された履歴をみんなが眺めて楽しむことができればと。それって、普段は誰も気に留めずに流れていくものですけど、「痕跡本」が注目されるような流れもありますよね。”

物に宿る、「ひとの痕跡」というものが、
貸し借りや中古を楽しむひとつのツボだという話。
そして、
物に宿る”その人らしさ”や”痕跡”というのは、
大切/宝物という気持ちのベクトルにもとづくものだけでなくても、
どこか面白みがあるんじゃないかと思う。

今回のOURS.展では、
62人の「なぜか捨てられないもの」を展示するだけでなく、その理由や気持ちを書いてもらった文章をまとめたリーフレットも会場にて配布。
めったに見ることのない、他人の「なぜか捨てられない物」。
それを前にしてみなさんがどんなことを思うのか、いろんな声を聞いてみたい。

(文:竹内)

「アワーズカリグラシマガジンと50人のクリエイター」展
http://ours-magazine.jp/blog/ours-exhibition/