お引っ越し写真、撮影日記

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こんにちは。OURS.の立ち上げメンバーであり、写真家の平野愛です。
この度<7DAYS SCENE 19th season>での連載が完結しました。
暮らしの風景が変わる瞬間に立ち会った1日目から3日目と、その後どんな風に暮らしているのか知りたくて訪れた32日目の撮影日記です。

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【お引っ越し、その前。】

7月のはじめ。開口一番「引っ越し決まった!」と久しぶりに会った友人のsayuriが話し出す。創刊時からOURS.を見てくれていたことから始まり、30歳を機に実家を出ようと思っていたことに続き、「緑が多くて、山が綺麗で、森があって、団地いいなって、OURS.見返して、グリーンヒルズ御影いいなって、すぐに見に行って一つ目の部屋ではなんか決めきれなくて、近くのグリーンヒルズ六甲も見に行ったけど、大きすぎて違うなって思って、もう一回御影に行って、別の部屋を見せてもらったら、これだーーってなって。だって、キッチンが窓際にあって、3方が緑に囲まれてて、風景が最高!」と、堰を切ったように話す彼女の勢いをそのまま浴びながら、あっという間に2週間後からのお引っ越しにカメラとともに入り込むことになった。

#01
http://ours-magazine.jp/7daysscene/hirano-01/

 

20160827-02

【お引っ越し、1日目。】

神戸は快晴。

10:00 摂津本山駅に集合。車で迎えに来てくれ、実家へ。撮影は玄関だけの約束。持っていくものは、本とキッチン用品と植物とぬいぐるみと、いくつかの家具だけ。選び抜かれた大事なものをひとつひとつ手で運び出している。何となく緊張しているような、固いような、彼女が感じている淋しさのようなものがほんのりと伝わってきた。その空気を残してみたくて、玄関先で持っていく物と一緒に記念写真からスタートした。

#02
http://ours-magazine.jp/7daysscene/hirano-02/

11:30 車積み作業完了。コンビニでおにぎりとプリングルスと炭酸水を購入。

12:00 グネグネとした道を走る。標高がぐっとあがって、耳がツンとする。グリーンヒルズ御影に到着。溢れ出ている山の緑。それを見るなり、緊張が和らいでいくように顔がパっと明るくなる。

12:15 何もない部屋を記録する。窓を開けると風が抜ける。真夏というのに、クーラーなくても涼しく感じる。新しく購入した、ダイニングテーブルや棚にするリンゴ箱、サーキュレーターが次々に到着する。玄関がいっぱいになる。

#03
http://ours-magazine.jp/7daysscene/hirano-03/

13:15 この部屋を気に入った一番の理由は、ベランダからの風景。椅子を置いて、「この位置からが最高!」と。そこからは山も森も海も見える。この森がこれから彼女を守ってくれるなって思った。

13:30 無印良品の大型配送トラック到着。ベッドと冷蔵庫の搬入。作業員の男性二人の後を追いかける。まずは冷蔵庫から!

#04
http://ours-magazine.jp/7daysscene/hirano-04/

14:00 つづいてベッド。8畳ほどの部屋にセミダブル。「あーーー小さかったかも。ダブルにしておいたらよかった。」とつぶやきながら、細かく位置を指定する彼女。設置が完了すると、汚れている足の裏がベッドにつかないようにはみ出しながら、寝転んでみる。

#05
http://ours-magazine.jp/7daysscene/hirano-05/

14:30 最初に片付けはじめたのは器だった。食べること料理することが好きで、これまで数年かけて集めてきた。1枚1枚思い出すように出してはスマホで写真を撮る。器眺めて、風景眺めて、プリングルス食べての繰り返し。なかなか進まない。疲れてきて、足を洗って、こんどは足の先までベッドで横になって一休み。

#06
http://ours-magazine.jp/7daysscene/hirano-06/

15:30 今日の作業はここまでにしよう。部屋は散らかったまま、散歩に出かける。団地内の保存森林。六甲山から神戸沖、大阪湾まで見渡せる場所へ。ずっと笑っている彼女。この後は車に乗り込み、神戸・大阪へ日用品を買いに行く。

#07
http://ours-magazine.jp/7daysscene/hirano-07/

 

20160827-03

【お引っ越し、2日目。】

神戸は、曇り。

10:00 摂津本山駅に集合。買い物、ランチ、買い物。日用品が増えていく。

13:00 家に到着。昨日、散歩時に拾った雑草のヒメジョオンが瓶に入っている。今日も彼女は元気。本の整理がはじまる。写真集と料理本ばかり。またひとつひとつ見返しては、並べて、眺めての繰り返し。進まない。「この風景がそうさせる。」わたしも畳でゴロゴロしてしまう。

14:00 キッチン周辺ができてきた。ガスコンロはまだ来ない。

#08
http://ours-magazine.jp/7daysscene/hirano-08/

16:00 予約していた照明器具店に出かける。

 

【お引っ越し、3日目。】

神戸は、雨。

10:00 摂津本山駅に集合。買い物して家へ。

10:30 キッチンの上の四角い蛍光灯の取り替え。眺めていると、外さないほうがよさそうなネジを回しているので、交代する。交代してからしばらく撮影のことを忘れてしまう。

12:30 車の中に置きっぱなしにしていた雑貨やタンスを持ってあがる。タンスはとても軽いもので、手で持ってあがるほうが楽チン。怪力のように見えて、面白くて笑い転げる。あわててカメラを手に取り、撮影しながら到着。これで運び込みは完了!キッチンにガスコンロも入り、いっきに「家」完成。

#09
http://ours-magazine.jp/7daysscene/hirano-09/

13:00 ごはん作りスタート。ひじき炊き込みごはん約30分。豚肉と豆腐とたまごの炒めたのとオクラのお汁。常備菜を冷蔵庫からいっぱい。食卓に並べられていく。新しい暮らしが、いま本当に始まったのだな。

#10
http://ours-magazine.jp/7daysscene/hirano-10/

15:00 食事の後片付けをして、お茶を飲んで、それから先の2日間の撮影分のプリントを畳に広げた。連載をどうしようかと考える。これもいいし、これもいいね。などと話しながら、日が暮れるまで見返していた。わたしたちの撮影はここで終了。

 

【お引っ越し後、32日目。】

神戸は、大雨。

12:30 再会。グリーンヒルズ御影に到着すると、台風の影響のためかすでに風は冷たい。32日目だけど、家の中もベランダもほとんど変化なし。昼食をとりながら、ここでの暮らしを聞いてみた。「部屋の中がじゅうぶんすぎるくらい満足で、外まで何かしようと思わない。外(ベランダ)の外は森と山と空。部屋の灯りも最小限。朝は5時に目が覚める。鳥の声、虫の声、太陽の光が自然にそうさせる。通勤はバスと電車。行きはジブリの国のような風景、帰りは神戸の夜景を眺めている。ここへ越してきてから、休みの日をちゃんと休めるようになった。」と嬉しそうに話してくれた。

15:00 まだ彼女に見せきれていなかった3日間の写真を、スライドショーにして見返す。写真を見ながら、順番を逆さにしてみるとこの家を出ていく時の風景のようにも見えるんだよと彼女に伝えると「いやだ、淋しい!ずっとここに住む。」とぽろり。そんな家に出会えたことが自分ごとのように嬉しかった。

17:00 山に雲が降りてきた。

20160831

写真と文:平野愛