綿花畑も、アイデアもシェア!

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最近あちこちで聞かれる「シェア」という言葉。
車もシェア、役立つ記事もシェア、ハウスもシェア、アイデアもシェア、恋人もシェア(うそ)。
そんなシェアだらけの今の日本では、どんな現象が起こっているのでしょうか。

「モノをツクルというコト」というユニットに会ってきました。イベント・企画プロデューサー、ファッションデザイナー、セレクトショップオーナーという背景の異なる3名から構成されています。このユニットは、兵庫県西脇市で綿花を育てている畑のシェアから生まれたプロジェクトだそう。どんな風にプロジェクトが生まれているんだろう?
これからのシェアの形について、一緒に考えてみました。


やってきたのは、兵庫県西脇市。
大阪市内から車で2時間程の距離にあります。ここでは、地元の織職人を中心に、「365cotton(サブロクコットン)」という、1年間を通して綿花の栽培と綿(わた)の収穫をする企画が進んでいます。月に一度開かれる、雑草抜きや種の植え付けなどの畑いじりワークショップイベントには、県外から職種も様々な方が集まっています。ひとつの畑から始まったこのプロジェクトも、5年経った今では畑も3つになり、ワークショップに参加する人数も年々増えています。

これが綿花畑。「365cotton」プロジェクトは、1999年から西脇市で綿花栽培を行う「コットンボール銀行」の方々の協力を得てはじまった。西脇市は、もともと播州織りという伝統技術が約220年前から育まれている土地だ。

長く綿花栽培を行っているコットンボール銀行の方々からレクチャーを受ける。

参加者は、地元の高校生、公務員、デザイナー、服飾系の学生、大手アパレルブランドのバイヤーから親子連れなど幅広い!本日は30名程参加。雑草を抜き、間引きをしている作業中。

畑いじりをしながら、情報交換も盛ん。畑というプラットホームで価値のシェアが行われている。

仕事のシェア。技術のシェア。持てるもののシェア

畑のすぐ側にある古民家、愛称は「コットンハウス」。播州織りのブランド「hatsutoki」のテキスタイルデザイナーなど数人が共同で住んでいる。

この365cottonプロジェクトの拠点ともいえる古民家「コットンハウス」は、3つの畑の間にあるだけでなく、人と人を繋ぐ場所として欠かせない存在。いわゆるシェアハウスでありシェアオフィスとも呼べる、人が集まる開放的な拠点です。『モノをツクルというコト』も2年程前にここで発足。畑いじりを一緒にしている時に、百貨店での展示イベントをしようという話が持ち上がり、3人での結成に至ったそう。

「モノをツクルというコト」のメンバーは、イベント・企画プロデューサーをされている藤井昌弘さん(中央)、セレクトショップ「itocaci」の北原一輝さん(右)とアパレルブランド「RBTXCO」デザイナーの東哲平さん(左・残念ながらインタビュー時は不在)の3名。生活をハッピーなものにする、こだわりのある商品のストーリーと背景をきちんと伝えようとするプロジェクトだ。(写真提供:モノをツクルというコト)

百貨店での催事や、通販サイトのファッション部門の運営などを行っている。

北原:僕たちは、西脇という土地が持っているものをシェアしながら活動しています。例えば、自分が運営するセレクトショップでも、この綿花ワークショップの告知をしていますが、お客さんも喜んで来てくれます。これはお店にとっての付加価値ですし、また、西脇にとっても、僕らが関わることによって様々な人を呼び込めているという、相互にとって価値の交換が行えているのではないかと思っています。

藤井:メンバーそれぞれメインの仕事を持ちつつ、そのサイドビジネスという感覚で、チームでプロジェクトを進めています。その結果として、別の何かが自分の仕事にフィードバックされているといったような感覚です。週末起業のような感覚に近いかもしれません。自分の仕事としてやっていることプラス、他のつながりができたりとか、普段とは全然違う人と知り合えたりもする。このフィードバックされていく感覚が心地いいですね。

庭の広場で地元の人がつくる手作りのお昼ご飯をいただきながら、参加者みんなで交流が生まれている。

「この場所は、シェアが日常的に行われている環境。こういうみんなが自由にワイワイできる空間があるから、365cottonは継続できているんだと思います」と北原さん。人が集まるためには、共食は欠かせない。

月に1回のワークショップの日には、家が開かれ、誰でも自由に出入りできる空間に。

藤井:今のチームは、ネットやSNSなど、気軽に会話できるコミュニケーションツールを活用しながら、月に1度は顔を合わせて作業を一緒にするというアナログな活動の両輪があるから継続できていると感じます。

北原:“スカイプとかでもいいじゃん”と思われるかもしれないですが、スカイプで時間を決めて、PC画面で顔を見ながらやる“会議”と、月1回、西脇で作業しながらやる“雑談”っておそらく全然違うと思っています。向こうの畑の畝ごしに大声で声かけて背中で喋り合うみたいな(笑)。それくらいのくだけた環境の方が自然体で好き。面白いアイデアも生まれやすくなったり、うまくいく秘訣なのかなと思いますね。

綿花畑では綿だけでなく、アイデアも育っていた。

シェアすることで、面白い環境をつくっていく

このワークショップで収穫した3年分の綿花から糸を作った。この糸は西脇市で織物にされ、365cottonの製品としても活用される。

畑で作業をすることで人同士のつながりが生まれ、新しいプロジェクトが発生して新しい仕事がつくられていく。場所を開くことで、その地域の人や参加者がつながり、さらなる広がりが生まれて、また新しい何かを連れて西脇という場所に戻ってくる。場所を絡めたシェアによって、よい循環が育まれています。

「こうやって話してると、なにか新しい催事をやりたくなってきましたね」と2人。また新しい企画が生まれそうだ。

藤井:僕は、イベントの仕事がメインなので、服は好きだけど作れるわけではないし、服を売るというのをやりたいかと言われると、正直そこまでではないけど。もし、イベントを開くとなった場合、僕ができることを探して、そこに自分のスキルをはめ込んでいく作業が好きだったりします。

北原:アイデアは一人でも思いつきますが、実行するとなると複数でやる方が加速度的にやりやすくなるし、チームを組むことで、広く色んなものにコミットできるメリットがあると思っています。自分の表現したいことや可能性を別の視点から捉えた時に、「モノをツクルというコト」だと成立するけど、自分のセレクトショップだったら成立しないことがある。落としどころを選べるのもいいところ。自分の領域に留まることなく、活動の幅を広げられるのは楽しいことではないでしょうか。

取材・文:小倉千明