団地の農場、本日も収穫良好

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「まだまだ暑いねぇ。でも野菜は元気になってますよ」。
そんなやり取りをしながら、注文を受けると畑から野菜を収穫してきて販売する、まさに「畑直販売」を行っている農場が福岡・日の里団地にある。

「団地の農場・日の里ファーム」は、2016年春からスタート。1500戸を越える日の里団地の建物の間に、突如現れるビニルハウスにまずは驚かされる。

ハウス内の共同農園では小松菜、チンゲン菜、わさび菜を栽培して、毎週日曜に開くハウスでの朝市や、近隣の直販所などで販売。近くの小学校の給食にも出荷している。

共同農園ベッドの他にも、会員用のベッドもあり。落花生、トマト、シソ、レモンバウムなど、思い思いに育てている。

「トレファーム」と呼ばれる高床式砂栽培。農作業のためにかがむ必要がなく、水と肥料は自動潅水装置で供給される。

専属の農業指導員がひとり常駐。主に団地の住民からなる会員たちは、それぞれの都合にあわせてファームへやって来る。
参加の動機はまちまちだが、休むことなく手を動かしながら、畑の話から近況報告まで雑談の輪が広がる。

この日の朝市では、5人の会員が収穫、販売、出荷作業を行っていた。

「去年まで働いてたんですけど、同じ棟の彼女に誘われて今年の春から参加しています。それまでは階段ですれ違って挨拶する程度だったんですけど、ファームをはじめてから、ファームの人たちの家の中に上がらせてもらうこともでてきました。お漬物を漬けたからって持っていったりで。昨日も、みんなで防災訓練に行ってきたんですよ」(小副川さん)。

「去年、ここの説明会があって、入りませんかって言われて、はい、入りますーって。でも最初は、他に誰もいなかったから、私が行かないといけないと思って、朝来て、またその日の昼に来たりしてました(笑)。でも、今は人数が増えたから、そんなに気にせんでもよくなって」(楢崎さん)。

ビニルハウスのすぐ横の棟に暮らす波留さんは、説明会では「私は反対です」と意見したという。というのもこの場所、もとは子ども用のすべり台に続く広場で、子どもの遊び場がなくなるんじゃないかと心配もしたからだ。

朝市を訪れた常連さんの収穫を手伝う波留さん(右)。

波留:ある日ね、こんなもんができて。何をするのか知りたかったから、文句言うなら中に入ってからにします! って、ファームに一応参加したんです。したら、いつの間にか、なんも言わんことになってしまって(笑)。

―それだけファームの作業が楽しかったということですか。

波留:それもあるし、子どもたちもね、よくこのファームの前に集まって、会議をしたり宿題をやったりしてるんですよ。彼(常駐する指導員の方)が遊んでやるから。やっぱりね、結局は人間ですよ。彼が毎日いるから、安心してられるし、何もなくてもお茶飲みに行こうかなって思える。年寄りにはいいんです(笑)。

―今ではすっかりファームのメンバーですね。

波留:だいたい、私は人間があまのじゃくだから、最初は誰が信用するか!って思ってた(笑)。だいたい役人のすることってさ、つくるのはいいけど後は好きなようにしなさいってのが多いじゃない。ここは果たしてどういう形になっていくかわからないけど、何年かはかかるくらいの長い目で見てもらわないとね。

急な斜度のすべり台が今も健在。「うちは子どもがビビりだから滑れなかった」とか「ズボンが破ける」とか、すべり台エピソードもそれぞれに聞けた。

今年の春、何十年と暮らしたマンションを売って、団地へ移ってきたというご夫妻も朝市の常連。「とても新鮮でおいしいですよ」。

「ノルマも上下関係もないから気楽」という声も聞かれた日の里ファーム。野菜づくりを通した、団地の新たな集会所としての機能も担っているようだ。
団地と農園。その相性はかなりよさそうに見えた。

文:竹内厚 写真:平山賢