シリーズ:家ってなんだろう
車をDIYした「モバイルハウス」で
移動しながら仕事&暮らしを。

# # # # # #

#1 モバイルハウスができるまで

家が移動する。仕事場が移動する。作業場が移動する。
リモートワークの可能性が広がりつつある中、場所にとらわれない働き方や暮らし方を求める声も増えています。
多拠点で仕事ができて寝泊まりをする
車で移動しながら仕事ができて、寝泊まりもできる、そんな次世代の「モバイルハウス」を作っている人が神戸にいるということで、会いに行ってきました。


「モバイルハウス」に出合うべくやってきたのは、兵庫県神戸市垂水区、塩屋駅周辺。車が通れないくらいの細い路地が続く緩やかな坂道をずんずん登っていくと、坂のほぼ頂上に見えてきました。

この青い車がモバイルハウス。車内がオフィスのようになっています。

大阪湾まで一望できる景色が素晴らしい! どれだけ坂の上にある場所なのかお分かりいただけるでしょうか。

外観は車。車の内装は、ライトやテーブル、イス、後部座席部分には棚まで設置されています。制作されたのは、不動産仲介と不動産オーナー業を行う西村周治さん。作業時間はなんと約2日間!もちろん、全て西村さんご自身でのDIYだというからまた驚きです。一体どうやって作られたのか、お聞きしました。

西村周治さん。間取り図Tシャツは「UT」というサービスでつくった、西村さんオリジナル。帽子は“三菱農業機械”のもの。

西村:トイレと水場以外は、生活がここで完結できるシステムです。ソーラーパネルを設置してバッテリーを繫げて、車とは別回線で電力を確保しています。スマホ充電やPC作業もできますし、夜間照明や冷蔵庫にも使えます。

きっかけは、友達が乗っていた車を譲ってもらった時に広い車内を見てイメージが湧きはじめたこと。床を貼って、ベッドをつくればいっそのこと、住めるスペースになるのではと考えたそう。ルーフ部分にソーラーパネルを貼って、まず電気を確保。水回りや電気周りの基本工事は、知り合いの工務店や大工さんに整えてもらい、残りの仕上げ部分は全て西村さんがDIYを施した。大きな床板の見える後部座席部分も、倒した椅子の上に、板をビス止めをせずにそのままはめているだけなのでいつでも取り外しが可能。板を取り外して椅子を戻すと、10~15分くらいで通常の乗用車に戻せるため、違法改造車にもあたらないとのこと。

西村:車内にあるものは全て置型にすれば、内装DIYをしても法的には問題ありません。もし椅子を取り外してさらに大きく作り替えたいというのであれば、“キャンピングカー”として申請をし直すことで、キャンピング仕様として使いつづけられます。

なるほど。今回の制作費用は、ソーラーパネルとバッテリーも含め電気周りは5~6万円と木材費の数万円で、お財布にも優しく、特別に難しい技術などは使っていないそうです。

車内の内装は、家のリビングをイメージして、イスを机と照明をつけた。「キャンピングカーっぽくはしたくなくて、普通の部屋をつくるようにDIYしました」。

ボタニカルな装飾と照明インテリアで、リビング風。

足元の床は通常の家に使うフローリング材を貼っている。

水タンクも積んでいるので、蛇口から水も出る。

運転席の横に、ピッタリはまるサイズで小型冷蔵庫も用意。他に炊飯器やガスコンロ、鍋、バーベキューセットも。

西村さんは、実際にどのようにこのモバイルハウスを使っているんでしょうか?

西村:基本的に仕事用ですね。僕は購入した物件をDIYで修繕して、他人に賃貸するという仕事をしています。所有している物件は、辺鄙な立地に建っている物件が多いので、物件のDIYをするために、作業工具を積んで移動ができて、夜通し仕事した後にそのまま寝られたりする。これで休憩しながら、現場で作業するためのハウスです。僕は自宅があり、ここに住んでいるわけではないので、用意している生活用品は最低限のものです。将来的には、ここに住みながら廃屋の改装へ行くことがひとつの理想。場所を転々としながら家を直していく。そのモデルケースができればと思っています。

持ち運んでいるDIY用工具は、意外とシンプル。インパクト、ドライバー、インパクトの充電器、丸ノコ、塗装用具など。左上は、モンゴル帰りの知人に空港から送ってもらった羊の毛の断熱材。

なるほど。工具を積んで移動するための車であり、PC作業ができるオフィス空間になる時もあれば、食事をしたり、休眠することもできたり。作業後には仕材ゴミなどをつめる機材車にもなる。一つの空間がいくつにも使える、要するに「移動する多機能なハウス」といった感じなのですね。いいですね~。

自宅からなにか持ってきました。布団のようです。

後部座席の板が置かれた荷台の上にマットとシーツを敷きます。

荷台がベッドに早変わり。「最大3人寝たことあります。寝てわかったんですが、朝起きた時に、外の通行人と窓越しに視線が合うのでその辺りを調整しようと思っています。あと、冬を乗り越えるために断熱と布を貼って仕上げたいです」と西村さん。

西村:僕はこのモバイルハウスって、大量消費社会に対するカウンターカルチャーだと思っているんです。

カウンターカルチャー!? ちょっとお話の続きが気になります…!
次回は引き続き、西村さんのモバイルハウス哲学をお聞きしてみたいと思います。

取材・文:小倉千明  写真:平野愛

12