シリーズ:家ってなんだろう
自宅兼カレー屋は
生活と仕事が重なりあう実験の場

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#2 自分のため、人のために家は使うもの

大阪・南田辺にある「nimoalcamo(ニモアルカモ)」は、古市邦人さんの自宅でもあります。平日は就労支援の仕事でいそがしい中、その合間をぬって、自宅の1階につくったカレー屋を月に何度かオープンさせている古市さんに、単刀直入に聞いてみました。「古市さんにとって、家ってなんですか?」。


住む場所で体験量を増やす

普段の仕事にプラスして、不定期のカレー屋を営みながら、パブリックスペースで起こることについて実験を行っているというパワフルな古市さん。そんな古市さんの居住スペースは2階にある。1階カレー屋の続きとしてDIYで仕上げていったという、2階の居住空間も見せていただけることになった。一体どんな部屋なんだろう。

店内にあるハシゴが、家とお店の境界線。営業中は通常入れない。

2階はベッドとデスクのあるシンプルなワンルーム。壁にはつくりつけの棚。

デスクも古市さんがDIY。「建物の角が直角じゃないので、苦労しました」。

2階の居住スペースの床もDIY。床材は無垢のレッドパイン材に柿渋塗装を施したそう。

6年ほど前、前職で兵庫県の姫路に住んでいた頃は、会社からの家賃補助を活かして、住居とベランダ(庭)を合わせて70㎡の広さがあるマンションに住んでいたそう。ベランダ(庭)が30㎡あったので、土を入れて畑をつくり、近所に住む子どもや大人達と一緒に野菜を収穫したことも。さらに、海外旅行客を家に無料で受け入れるカウチサーフィンも積極的に行っていたというからパワフルだ。

古市:僕としては、家を開放してセミパブリック化させて使うという「住み開き」の感覚に近いです。当時、アサダワタルさんがその言葉を言い始められた頃ですね。目の前に畑があったから耕そう、せっかくなら野菜を植えようと。じゃあ野菜を収穫するなら子どもを呼ぼうといった感じです。僕、なんでも同時並行したい派なんです。住むだけじゃ物足りないのかも。多動なんです(笑)。
住んで暮らすだけではなく、同じ時間を使うなら体験量を増やしたい。体験量が増えると自分ができることがまた増えて楽しくなるし、人にも伝わりやすくなる。共感を得やすくなる。僕はいずれ教育の仕事に戻りたいと考えているので、そのときに子どもにこうやったらできるんだよと教えてあげたい。体験したことの説得力は強力だから。

家は、その時に試したい生き方の土台となるもの

この家は3年目。「もしかしたらこれまでで一番長く続いている一人暮らしかもしれません」。

これまで、引越しは4回。仕事や生き方に合わせて、住む家も柔軟に変えてきた。70㎡の庭付きのマンションの次は、光も入らない4畳半の部屋、その次は移動販売車を置ける駐車場付きの部屋、そして、今のカレー屋兼住まい。必要に応じて変わっている古市さんの家選びと暮らし方。家として求める基本的な機能は、寝ることだけだと話します。

古市:僕はこれまで、出会いを増やしたい時は住み開きをしていたし、仕事に熱中したい時は職場に近くて寝るだけの4畳半でした。お金をかけたくない時期は実家へ、そして、今はカレー屋でいろいろ試してみたい。その都度、ガラっと環境を変えてきました。たぶん、僕の中でその時に試してみたい生き方があって、それが一番やりやすいように土台となる住まいをすげ替えているのだと思います。
最終的には、自分に一番フィットする生き方を見つけて、終の棲家となる暮らしが実現するかもしれませんけど、まだ生き方を固定したくないんですね、きっと。

これが「週末の生き方実験」なのか「人生二毛作スタイル」なのかわかりませんけど、人生100年時代をしなやかに生きていくための古市さんなりの処世術が、この家のカタチに現れているのかもしれません。

取材・文:小倉千明  写真:平野愛

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