団地の食卓撮影 by 西島渚

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団地に住まう8軒の家庭に協力いただいて、
カメラマンの西島渚さんと食卓を撮影してまわった今回の 7DAYS SCENE

訪問して初めて顔をあわせる方々と、ときには一緒に食卓を囲みながら撮影を進めるというのは、西島さんにとっても、撮影をOKいただいたみなさんにとっても、まずこれまでに体験したことのない、不思議で楽しい時間となりました。
そもそもどうして食卓撮影だったのか。西島さんに聞きました。

西島:家のなかで毎日することって何かなと考えたら、ごはんかお風呂か洗濯、そのどれかの様子を見てみたいなって。いろんな人が湯船に入ってる写真も撮ってみたかったけど、さすがにハードルが高い(笑)。それで、食卓の撮影にしようと。

―仕事でよく飲食店を撮影しているからだと思ってましたが、そういうわけでもない。

西島:というよりも、今回は、団地の暮らしを想像したときに思いついたことです。私は大阪の河内長野出身で、友達も一軒家に住んでいる子が多かったので、団地の住まいってそんなに行ったことがなくて。団地の友達がひとりいたけど、生活スペースがすべて見えるような気がして、子どもながらにちょっと気を遣ってしまってました。団地って家族が密なイメージを持っていて、今回の撮影もどうなるのかなって思ってたけど、行ってみたら、全然いけるやん!って。クセになる楽しさでした。

お昼をごちそうになって、洗い場に立つ取材チームのふたり。

―お客さんをよく招かれているような住まいが多かったのも印象的でした。

西島:そうでしたね。あと、思った以上にみなさんしっかり料理されていて。私だったら仕事で帰ってきた日は、あまりちゃんとご飯はつくらない。もっと楽してしまう。

―週末の撮影が多かったので、撮影日を水曜夜とかに設定するとまた違った食卓が浮かび上がるのかも。だけど、そもそも西島さんは食卓に何を見てるんでしょう。

西島:食事ってこだわりだったり、こだわりがないことだったり、その人の個性や性格が出やすいかなって思います。盛りつけにしても、テーブルや器の雰囲気からでも。

―どんな味かとはまた違ったところですね。

西島:そうかな。伝わりづらいかもしれないけど、食卓の写真1枚だけでも、その家の雰囲気がわかるように撮りたいとは思ってました。結局、食卓周りや調理中の様子も気に入った写真が多くて、そっちもあわせて公開しましたけど。

―食卓だけでそこまで写りますか。

西島:普段、飲食店の撮影をするときも、おいしそうに撮るという前提はあるけど、それよりも、お皿の上だけを撮るのだとしてもその店の空間や雰囲気がわかるようには心がけています。

―料理の写真っておいしそうだけが大事なことじゃないと。

西島:私は写真のなかで記念写真がいちばんすてきだと思っていて、いちばんダイレクトにその時間、そのときの姿が思い出せる。料理写真ってあまりアルバムに入れるような写真じゃないかもしれないけど、その遠巻きな感じもよくって。

今回の撮影は子どものいる家庭が多くて、子どもたちにもよく遊んでもらった。

―遠巻きな感じって?

西島:記念日の記念写真というわかりやすさともまた違って、普段の料理を撮った写真だったとしても、想像すればそのときの状況を思い浮かべることができる。ちょっとの想像が必要なところがいいのかな。だから私は、毎日のお弁当記録をあげたりしてるインスタとかも時々見てます。

―知らない人のアカウントでも。

西島:はい。けど、インスタグラムは嘘のようにキレイすぎる写真が多くて、もっと生々しくてもいいのにな、とは思ってます。

―今回の撮影でも、生々しいドキュメンタリーというのでも、つくったキレイさというのでもない、絶妙なバランスの写真になりました。

西島:何も考えないで撮ってたら、ザ・グルメな写真になるし、やりすぎると生っぽくなりすぎる。そのギリギリをいきたい。あと今回は、料理が上手でどんどん撮ってくださいという方と、決して料理が得意ではないんだけど、撮影に手を上げてくれた方の差がつかないようにとも思ってました。

―実際、それが家庭の食卓のいいところですよね。

西島:そう。力が抜けたのでもいいと思う。私も家で食べるなら卵をチャッと焼いただけとか、そんなのでいいから。

写真:西島渚 文:竹内厚