02.『なっちゃんはまだ新宿』

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友人曰く、「結局サァ、学生や若い監督が映画の中でウジウジ描いてる悩みなんてサァ、学校を卒業して社会に出たら解決する程度の小さな悩みをなんだよネェ」。
シニカルな意見だ。でも実はなかなか的を得た意見だと思う。実際のところ社会に出てしまえば、「そんな事で悩んでるヒマはない」と忘れてしまったり、もっと言えばお金で解決できてしまったりする。
 
確かに、四畳半のアパートや、ワンルームマンションを舞台にした日本映画って、いつまでもモラトリアムでウジウジしてるイメージだ。最近だと舞台はシェアハウスへと変化して、映像も洗練されてきてるけど、中の人は相変わらずウジウジしてるのは印象は変わらない。

しかし、首藤凛監督の青春映画『なっちゃんはまだ新宿』は違う。30才を超えて、「悩んでるヒマない」とすっかり10代の頃の自分を忘れた気になっている観客ほど、あの自意識過剰な季節が蘇ってきて「うわああああ」となるだろう。忘れたフリをしているけど「お前、全然変わってないからな! 消えてなどいないからな!」とゾンビみたいに青臭い自分が迫ってくる。

というか、僕がまさに「うわああああ」と声にならない叫び声をあげてしまった。
そして24年前の京都・太秦のワンルームマンションの僕の部屋が、22年前の東京・永福町の1Kの僕の部屋が、脳裏に鮮明に蘇り、さめざめと泣いてしまった。
 
かのシニカルな友人は、『なっちゃんはまだ新宿』を観ただろうか?

INFO
『なっちゃんはまだ新宿』
22歳の新鋭・首藤凛監督が描く、普通の女の子“秋乃”と、彼女が好きな人の恋人“なっちゃん”の行き場のない逃避行。音楽と映画の融合を競う映画祭「MOOSIC LAB 2017」で準グランプリ、女優賞、ベストミュージシャン賞の3冠に輝いた作品。
公開は大阪・第七芸術劇場、京都・出町座、他で上映中
http://nacchan-mada.com/

 
西尾孔志
1974年大阪生まれ。2013年に『ソウル・フラワー・トレイン』で劇場映画デビュー。2014年『キッチンドライブ』、2016年『函館珈琲』の他、脚本作品に『#セルおつ』なども。OURS.では、カリグラシTVを担当。

*カリグラシTV
http://ours-magazine.jp/karigurashitv/akichi-1/
*インタビュー記事
http://ours-magazine.jp/borrowers/nishio-01/