杉本:私は、都市計画やまちづくりのコンサルタントをしています。今回は、フォト&スケッチ展にいちばん関係のありそうな私の活動をご紹介します。2001年、建築や都市の専門家が集まって大阪のまちづくりの研究会をしたとき、ヨーロッパの街角には素敵な絵はがきが売られているけれど、大阪ではどうなんだということが議論になり、新大阪駅に調べに行きました。ところが、駅構内の絵はがきラックは半分が京都の絵はがき、その半分が神戸の絵はがきでした。これではダメだということで立ち上げたのが「大阪ええはがき研究会」です。当時、私はまだ大学院の学生でしたが、まちの暮らしやコミュニティの魅力を丁寧に伝えていくような作品を仲間と一緒につくり続けてきました。2010年からは、阪急電鉄さんとのコラボで「阪急ええはがきコンテスト」がスタートして、その審査にも携わらせていただいています。それでは、私が、これだと思ったフォト&スケッチ展のセレクション作品をご紹介いたします。

「掲示板にスイカ?」 福岡・アーベインルネス足立|肥後富男

杉本:私がダントツに気に入ってしまった作品です。団地の共用部を自分の空間にしてしまえるという、こういう空間のある住まいはすごく魅力的だと思って、選ばせていただきました。

「移動図書館」 神奈川・コンフォール南日吉|野村悦子

杉本:団地には図書館という機能がないのなら、持ってきたらいいじゃないというその発想がすごくいいなと感じました。

「楽しいひととき」 千葉・千草台団地|渡辺志げ子

杉本:これは、近所の保育園の子たちが団地の公園を使わせてくださいということで来ているらしいんですけれども、団地にお住まいの人だけではなく、周りに住んでいる子どもたちにとっても団地がいい場所になるというのは、本当にすばらしいことだと思って選ばせていただきました。

池邊:ありがとうございます。現在、この「フォト&スケッチコンテスト」の2008年から2016年の応募作品5,416点を使って、日本工業大学の学生たちと団地で起こるアクティビティの研究を進めています。学生は5グループに分かれて、未来の暮らしをテーマに5つの動画作品としてまとめてもらっているのですが、といってAIとかそういうものではなく、若い方々が団地のなかで生活を育んでいくという視点を持った内容になっています。

杉本:動画を拝見すると、若い学生さんが地に足の着いた未来を描きだしていることにホッとしました。都市の専門家と未来の都市像を議論すると、これからはICTだとかスマートシティだとか、そういった話になりやすいですから。リアルな人の暮らしに近いところで制作された動画がとてもいいなと感じました。

大西:一般の方にとって写真は身近で、日常生活のなかでシャッターを押す機会に恵まれているという時代です。それがわれわれの記憶、記録となっていくわけですけど、それぞれの記憶をどうやって記録として集積していくのか。そうしたことが未来につながる取り組みなのだと思います。学生さんがつくった動画を見ていると、我々も参加してみようかなという気持ちになってくる。60代、70代の世代だって、率先してコミュニティに関わっていくという風になればと思います。

池邊:URの住まい手の方々が団地を誇りに思い、これからも多くの人たちが住みたいと思えるような団地にしていけることが、未来に必要なものだと思います。URさんにはハードの部分はプロが集っていますから、今後はソフトの部分で若い人たちから多くの世代が参加できるような仕掛けをしていっていただければと思っております。

※2018年10月、大阪・阪急うめだホールでの『URひと・まち・くらしシンポジウム』内で行われたパネルディスカッション「これまでの10年間とこれからの未来(団地の暮らし・コミュニティ)」の内容を再構成したものです。 構成:竹内厚