建て替え目前の巨大スターハウスを見学

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「千里竹見台団地26号棟が建て替えのため近々取り壊されるので、その前に見学に来ませんか?」。そんなお誘いの連絡がありました。
千里竹見台団地は、千里ニュータウンの南千里駅前に建つ団地です。団地というとマッチ箱のような5階建が一般的ですが、千里竹見台団地の入り口に建つ3棟は、そのイメージとは大きく異なり、上から見るとY字型の形をしたスターハウスと呼ばれるタイプ。スターハウス自体が珍しいのにそれが高層となるとさらに珍しく、全国の団地愛好家の間でも人気がある団地です。
このうち26号棟を含む、スターハウス2棟が建て替えられます。その前に記録と記憶にきちんと留めておきたいという思いで、見学に参加することにしました。

なぜ全国的にも珍しいとされる巨大スターハウスがここに建てられたのでしょう。
大阪万博の開催期間中、外国からの関係者宿舎にも転用されることになった千里竹見台団地は、都市部の人口増を見越して、郊外の高層団地の草分けとして計画されました。そのため通常使われていた標準設計にとらわれず、一からあたらしく設計することが許されました。
当時、阪急千里線の終点であった南千里駅(当時は新千里山駅)のシンボルという意味もあったでしょう。車窓から京都タワーが見えてくると、「あぁ京都にやってきたな」と思うように、巨大スターハウスは千里のシンボルとして千里っ子達の目に映っていたに違いありません。

photo:吉永健一

この日、26号棟へ向かうと、足元のタイルを剥がしている人たちを見かけました。声をかけてみると吹田市立博物館の館長さんと学芸員の方。26号棟の壁面にある住棟番号を再現するために採取しているのだそうです。博物館にとっては、巨大スターハウスは吹田の貴重な郷土資料なのです。

photo:吉永健一

建物の中に入ると3層吹き抜けのエレベーターホールが出迎えてくれました。お出迎え感満々です。贅沢に見えるこの吹き抜け、エレベーターの停まる階を1、4、7、10、13階だけにすることで実現した空間で、実は工事費を削減するための妙案でした。しかも、エレベーターの停まらない階では外廊下をなくすことで、住戸内のすべての部屋を明るく、よりよい住環境を実現しています。

2DKの部屋。

北側の和室。窓の外には千里南公園が広がる。

photo:吉永健一

エレベーター停止階にだけ廊下がある。

エレベーターの停まらない階へは階段で移動する。

次に訪れたのは1DKの部屋。おそらく完成当時から入居者が入れ替わらず、改装されないまま今を迎えたのでしょう。こちらも博物館で引き取って欲しいと思うほど、往時のインテリアが残っていました。

URの団地は入居者が変わるたびに内装や設備を入れ替えるため、完成時の内装が残っている部屋は数少ない。

キッチンシンクにはナショナルのエンブレムが。

床は無垢のフローリング。

左官仕上げの壁。

photo:吉永健一
大量生産時代でも、ひとつひとつ職人の手づくり。浴室はモザイクタイル張りだった。

特別に屋上にも上がらせてもらいました。物干し場や外灯があることから積極的に使われていたことがわかります。夏は屋上でビールを飲む人がいたに違いありません。

こんなにステキな26号棟ですが、建て替えのため取り壊しとなります。
どのように建て替えられるのか気になったのでURの方に尋ねてみると、頭の上で両手を「Yの字」に広げて見せました。え? それって!?
そう、巨大スターハウスがまた建てられるのです。完成は数年後とのこと。今からその日が楽しみです。

近隣住民に配布された、建て替え計画案内の一部。現状よりやや太めになるようですが、特徴的な建ち姿がまた見られるのはとてもうれしいこと。

取材・文:吉永健一 写真:平野愛