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藤野可織 (作家)
around
堀川三条~三条通~仁王門通 〈京都市〉

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町にあるパブリックなモノやコトをテーマに、
さまざまな方々の視点に学ぼうという散歩企画。
第2回のゲストとして、
小説家の藤野可織さんと京都の町を歩きました。

京都生まれ、京都育ちの藤野さんは、
小説でしか描けないような、不穏な世界を表現して、
2013年、「爪と目」で芥川賞を受賞されました。

大学時代、芸術学専攻だった藤野さんには、
美術館を舞台にした作品もあります。
そこで、美術館をはじめ、図書館や動物園など、
パブリックな文化施設が集まった岡崎の町を目指して歩くことに。
集合したのは岡崎より約3キロ西の堀川三条。
前回と同じく、制限時間は2時間です。

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藤野可織
1980年生まれ。作家。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞受賞。芥川受賞作となった『爪と目』をはじめ、『パトロネ』『ファイナルガール』『おはなしして子ちゃん』などの著作を発表している。

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学区/夜中の商店街/公園の草むら

―今日の散歩は、京都三条商店会商店街からスタートします。まだまだ京都の中心部とはいえ、堀川通より西側まで来ると、生活感の強い町になってきますね。

藤野:そうなんです。2年前にこっち側に引っ越してきたんですけど、それまでは京都御所の近くに暮らしていたので、あまり堀川通を越えて西側に来ることがなくて。だけど、住みはじめるとほんと面白いなと思ってます。

―京都御所の近くがご実家だそうですが、どうしてこちらに引っ越してきたんですか?

本屋さんに気楽に行けるエリアで探しはじめたら、私が住みたいと思ったところは、どこも家賃が高いんですよね。それまでずっと実家暮らしだったので、あまり知らなかった(笑)。けど、堀川を西に越えるとかなり安くなるんです。

―繁華街のある烏丸~河原町まで歩いても行ける、かなり便利なところです。

よくわからないけど、堀川通を境にして小学校の学区が変わるみたいなので、そういう理由もあるみたいです。

―そうか、小学校の学区っていう見えない線引きも町を分けているんですね。特に京都は学区の影響が強いとか。

私にはどうでもいいことなので、堀川の西へ移ってきました。ときどきこの商店街(三条商店会)まで買い物をしに来るんですけど、私が起きてる時間に間に合わない時は、全然別の24時間営業のスーパーに行ってます。

―スーパーの営業時間に間に合わないほど、夜型の生活!?

そんな時もあります(笑)。商店街の店って閉まるの早いですよね。

―昼と夜では商店街の様子も随分違うでしょうね。

夜中でも、学生さんが自転車でしゅっと通り抜けたりしてるのを見ますけど、あんまり人はいないか…。あっ、この公園、入ったことはないんですけど、夜になると草むらのあたりによく猫がいるんですよ。

―商店街に面して公園があります。三条大宮公園。入ったことはない?

昼は子どもが多いし、夜中は奥のほうが暗くて、怪しいじゃないですか。すべり台とか見ると、ほんとはすごく登りたいんですけどね。

―意外と公園に踏み入るタイミングってないんですね。今日はせっかくなので入りましょう。

(公園内にあるスプリング遊具を試してみる藤野さん)
この遊具は楽しいー、癖になりますよ! だけど、夜中の2時にひとりで、「書けない…」って遊具に乗ってたら通報されるでしょうね。

―書けないときはどうするんですか。

寝ます。

―傍目にはあきらめているように見えますよ(笑)。

その結果、22時間くらい寝てたりしますけど。あとは、家で映画を見てますね、スターチャンネルに契約しているので。

―見放題だ。

でもね、結局は書くしかないんですよね。意地でも書くしかないと思ってやってると、書けたりすることもありますし。だけど、書けないものは書けないですよね、書いても自分でなんだこれってこともあるし…。

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キャットウォーク/緑色の遺物/喫茶店とスタバ

―すべり台の上に登ってみると、また周りの景色が違って見えます。

藤野:アーケードの上に見える道、あそこを猫が歩いていくのを見かけたことがあります。

―実際、高所にある通路や足場のことを「キャットウォーク」と言うそうです。

そうなんですね。私が歩くのはちょっと怖いかな。生々しくいい感じの高さじゃないですか。…公園の隅にある、これ何でしょう。スピーカーかな。基板が見えています。

―長らく使われてないみたい。こっちには、タンクがありますよ。

これは雨水タンクって書いてあるから別に気にならない。蜘蛛の巣が張ってるような、打ち捨てられたもののほうが気になります。

―なるほどー。商店街に戻りましょうか。

あそこのお店、通るたびに看板がいつも気になってるんですけど、まだ入ったことないんです。「あっくん」って誰やろうって。

―「ケーキとあっくん」、さっき待ち合わせの前に入りましたよ。いい感じの町の喫茶店でしたけど、「あっくん」が誰かは確認してませんでした。

今度行ってみます。普段はドトールやスタバにばかり行くので、なかなか喫茶店に行く習慣がなくて。

―そうなんですね。

仕事しようと思ってパソコンを持っていくけど、隣に座ってる人のしゃべりが面白すぎたり、人が多すぎて小さくなって本を読んだりして、結局は集中できないことが多いですけど。

―スタバやドトールはみんなの仕事場になってる店も多いですから。

あと、顔を覚えられるのが好きじゃないんです。一時期、あるスタバに通いすぎて、「あっ、お客さまはいつもマグですよね」と言われて、その日から行くのを控えました。恥ずかしいんですよ。私がすごくエコな人みたいじゃないですか!

―私は「マグ」の人じゃないと(笑)。

店員さんから「マグカップにしますか、紙コップにしますか」って聞かれた時に、私はどっちでもいいけど、なんとなくマグの方がオススメという雰囲気を察して、「じゃあマグで」って言ってただけなんです。好意的に言っていただいたことなので、それが嫌というのも自分でも変だなと思うんですけど(笑)。

―とにかく、顔なじみになるのもあんまり好きじゃないと。

そうそう。絶対に嫌! っていうほどじゃないけど、ちょっと足が遠のきますね。

文:竹内厚 写真:沖本明

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→ 藤野可織さんとの「さんかつ#02」は3月13日更新予定
さらに京都の町中へと歩いていきます~


散歩と観察

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。