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藤野可織 (作家)
around
堀川三条~三条通~仁王門通 〈京都市〉

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作家の藤野可織さんと堀川三条界隈から散歩をはじめました。堀川通を東へ渡って、にぎやかな町へと入っていきます。

#02

店頭ディスプレイ/招き猫/枯れかけた植物

―三条通をさらに東へ、烏丸の方へ向かって進みます。

藤野:このあたりには、入ったことないけど、気になるお店がたくさんあります。

―商店街とはまた違う雰囲気の、昔からあるような店が少なくないですね。不思議な看板もいくつも目につきます。

こちらのお店とかも、かわいいなと思ってよく見てますね。入ったことはないんですけど。

ーお香の店の店頭ディスプレイですね。商品の並べ方もとてもきれい。

がっちり鑑賞しているわけじゃないけど、いつも気にしてちらちらと見てしまいます。もう少し先には、招き猫を置いてあるところもあるんです。…いたいた、この招き猫です。周りに置いてあるものは季節ごとに変わっていると思います。招き猫だけしかない時もあったような。

―もうお店としての営業はされていないようですけど、ディスプレイは放ったらかしというわけじゃないんですね。

きれいにされてますよね。ここに招き猫が置いてあることが大事なんだとおもいます。……あーこっちのお店は、商品棚に植物を置きすぎてよくわからないことに。うちも観葉植物を置いてるから、こういう棚はいいなって思います。

―ご自宅に観葉植物はたくさんあるんですか。

たくさんありますけど、私が買って適当に部屋に置いてるだけなので、枯れたり、徒長って言うんですけど、変な方向に伸びたりしてますね。買ってきた時はきれいだったのに。

そう思うと、愛情を持って手入れされている鉢植えを見かけるとすごいなと思います。だけど、枯れかけた植物も大好きで。

―こちらの家の鉢はもう枯れちゃってません?

たぶん、微妙に枯れてないと思いますよ。死んではいない。私は、ちょっと枯れかけてるとか、いきいきとしていない植物のほうが好きなんですよ。

―どうしてなんでしょう。

気持ち悪いからでしょうね。気持ち悪いもの好きなんです。

―おっと! そういえば、いま出ている雑誌の対談で「私クズが好きなんですよ」って相当な発言されてましたね。*

あれは現場でしゃべってる時は違和感なかったんですけど、ゲラで読んだ時は自分でも大丈夫かなって思いました(笑)。

―気持ち悪いもの好きで、クズ好き!

朽ち果てたようなゴミとかも好きですよ。

*『文學界』15年3月号(文藝春秋・刊) 大竹昭子×藤野可織「写真と小説をめぐって」での発言
ちなみに、クズ好きを公言した後は、「さらに言えば、外に出ている程度の差こそあれ、みんなある程度クズなんじゃないかと。そういうところをちゃんと書きたいなというのはあります」と真っ当な話になってます。

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ミュージアムの中庭/まゆまろ/文化財建築/味のある建物

―店の軒先にあるディスプレイって、気になりはじめるといろんなものが見えてきますね。単に売ってる物を陳列してるだけの場所じゃない。

藤野:堀川と烏丸の間のこのあたりは結構、多いですね。こちらの店にいる子(犬の陶製置物)は、鼻先が割れてますね。でも、手前にいる子はマフラーもして大事にされてるみたい。(割れてる子は)ちょっと奥だから手が届かないのかな。

―ちょっとした手間の差が扱いを分けてるのかもしれません。

そら、面倒くさいと思いますよ。ちょっと傾いたりしたサイン表示とかもよく見かけますけど、きっとそれを直したり下ろすのにもすごいお金がかかるんですよ、思ってる以上に。

―手間だしお金もかかる。端から見てるとただ直せばいいのにと思うことでも、きっといろんな事情があるんですね。

時間もお金もなかなかそこにまで回らへんのちゃうかなぁ。

―三条通と烏丸通の交差点までやって来ました。ここまで来ると、人通りが一気に増えてきます。

大垣書店があるので、このあたりまでは、ときどき家から歩いてきます。運動量として全然十分ではないでしょうけど、しないよりはマシだと思って。もうそろそろ歳やし、あまりに家から出ないと健康に悪いじゃないですか。

―そうですよ。…京都文化博物館のあたりで写真を撮りましょうか。文化博物館の別館~中庭は無料で開かれているので、自由に出入りできるんですよね。

(京都文化博物館の中庭へ)あ! 「まゆまろ」ですよ。京都のイメージキャラクター、まゆまろ。

―ぬぼうっとしたキャラですね。好きですか、嫌いですか。

私、大好きなんですよ。口がなくて怖い感じがいいでしょ。京都ではまゆまろと、京都タワーの「たわわちゃん」が好き。たわわちゃんは、眼をカッと見開いて、口が断末魔の形に開いてるんです。

―そんなキャラでしたっけ(笑)。

そうですよ。まゆまろは、ツイッターをフォローしてますけど、朝から晩までいろんな行事に参加して、着ぐるみのままベッドの上に寝転がった写真を撮って、「おやすみなさいまし~」とか、芸が細かくていいんです。

―ゆるキャラのゆるくない日常ですね。

まゆまろは繭で、麻呂。いかにもな麻呂眉をつけなかったところは評価すべきだと思ってます。

―ダメなのかと思いました。そこは評価ポイントなんですね。文化博物館を出て、さらに東へ進みましょう。ちなみに、文化博物館の建物は日本銀行京都支店だったそうです。

…あっ、ここの建物いいですよね。こないだ初めて建物の中に入ってみたら、思ってたほどお値段も高くなくて、かばんを買ってしまいました。

ー家邊徳時計店ビルという登録有形文化財の建物です。

そうそう、ずっと時計店だったけど、その後にファンシーなショップが入ったりして、昨年末に今のお店に変わって、やっと中に入れました。すごいすてきな建物で、入るだけでも価値がありました。

―セレクトショップ「MARTcourt」が入ったみたいですね。まだ開店祝いの花が飾られています。古い建物は好きですか。

大好きですよ。だけど、住むのは嫌。訪れるのなら廃墟でも面白いと思えますけど、町家とかに住むのは私は無理かなぁ。私、ずぼらなのですぐ部屋を散らかしちゃうんですよ。古い建物にふつうに暮らすには、よっぽどちゃんとした人じゃないと。私みたいなんが住んだら、それこそあっという間に廃墟です。

―ずっと京都に暮らし続けている藤野さんだから、町家はOKかと思ってました。

京都生まれ京都育ちですけど、住んでたのはずっとマンションですから。今も理想は最新鋭の新築マンションですよ。「カワック」とかついてるところ。

―暮らしは便利に、合理的に。

これは自分がいつも部屋を汚なくしてるから思うんですけど、古くて、味があって、でもやや清潔感に欠ける飲食店とかよくあるじゃないですか。私、ああいうのがちょっと苦手で。せめて外ではきれいな空間ですごしたい。

―まさに京都にたくさんありそうな店ですね。

そうなんですよね。特にトイレが汚ないと悲しいですね。で、みんなそういうところへ行きたがるんですよ。もちろん、普通に行って楽しく過ごしてますし、行くのは嫌じゃないですよ、まあちょっと嫌ですけど(笑)。それだったら、きれいな白木屋の方がいい。床でそのまま寝ちゃえるくらいトイレのきれいな白木屋が。

―トイレの床で寝る想定で考えないでください!

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→ 藤野可織さんとの「さんかつ#03」は3月17日更新予定
とうとう鴨川を渡って、さらに東へ、東へ~


散歩と観察

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。