with
原田祐馬(UMA/design farm デザイナー)
around
南千里駅~佐竹台~五月が丘 〈大阪・吹田市〉

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パブリックなモノやコトの中にも、
借り暮らしのヒントやきっかけが眠っているはず。
そんな思いを抱いて、
デザイナーの原田祐馬さんと町を歩きました。

向かったのは、大阪の北部に位置する「北摂」と呼ばれるエリア。
その中でも吹田市は、「大阪万博」開催の地であり、
60年代に日本初の大規模ニュータウン構想が実現された
「千里ニュータウン」のあることで知られています。

引っ越しを繰り返しながらも、
そんな千里界隈に暮らし続けている原田さん。
冬晴れの午前中、阪急千里線 南千里駅で待ち合わせて、
小中学校時代に暮らしていたという団地を目指して、歩き始めました。

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原田祐馬
1979年生まれ。デザイナー。UMA/design farm代表。グラフィックデザイン、空間デザインをはじめ、数々のプロジェクトを展開。『DESIGNEAST』のディレクターも務めている。

#01

やさしいバンダナ/居残りの地蔵/シンプルなゲート

―今日は、ゴールも道順も決めずに、2時間という制限時間だけを決めて歩きたいと思います。

原田:わかりました。よろしくお願いします。さっきから、気になってるものがあって…。

―開始1秒でもう何かありましたか!

柱まわりの手すりにバンダナが巻いてあるんですけど、こういうの、ちょっといいんですよね。

―言われてみれば気になりますね。何かの合図みたい。

たぶん、誰かが拾った落し物じゃないですか。やさしさですよ。この手すりもよく見ると、ケガをしないようにちゃんと角を仕上げてある。

―角が丸い、実は親切設計。そもそも手すりがいるのか、必要性がよくわからない感じもします。

だから、それが向こうではゴミ置きにもなってる…。

―手すりを作った目的もあいまいなだけに、使い方もそのひと次第。

登ったり座ったりもできそうですもんね。南千里駅は、再開発で昔に比べるとかなり変わってしまって、いろいろもったいないんですよ。あっ、「子育て地蔵」がある。

―新しくなったモールの一角にぽつりと残されて。

ちゃんと大事にされてます。こういうものって壊せないんですよね。ある意味、土地の呪縛のようにずっと居続けてるんで。ちなみに、地蔵の前にあるパン屋(「サニーサイド」)おいしいですよ。

―では、買って行きましょう!

このあたりは昔、もっと市場っぽさのある「南センター」というビルがあって、混沌としていた記憶があります。塾の帰りに、天ぷら屋でなすを買って帰ったなぁ。

―今の景色からはあまり想像がつきません。

最高でしたよ、あそこの天ぷら。うわっ、キライなものがあった。

―自転車を通さないよう道に置かれたゲートですね。そういえば、手前に「自転車通り抜け禁止」と書かれた看板もありました。

最近はすごい複雑な形のゲートも多いでしょ。いっそもう落とし穴を作ったらいいんですよ(笑)。

―無茶言わないで(笑)。この手のゲートはとても増えていますよね。

昔の昔はきっとなかったですよね。町の居心地のよさみたいなのが損なわれている気がします。けど、これはまだ単純な構造なので、遊具だと思えば楽しめそう。

―確かに、子どもが見ればいろいろ遊ぶ余地がありそうです。

機能的に考えて作っても、子どもの遊びがそれを飛び越えていくのっていいですね。

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気持ちのいい池/ボダる/賢いベンチ

―原田さんは、いつから千里住まいなんでしょう。

生まれも育ちも千里ですよ。団地は幼稚園の頃から住みはじめて、その後で引っ越したのも団地のすぐ目の前にあるマンション。20歳くらいまでそこに住んでました。

―千里から出たことはないんですか?

京都の精華大学へ通ってた4回生の時にだけ、学校の近くに住んでました。その頃は、ただただ寒い記憶しかない(笑)。

―大学を出た後にまた戻ってきたということ?

精華大の後、IMI(インターメディウム研究所。万博公園にあった大学院スクール)へ通ったから。実家から近かったので、IMIを選んだというのもありましたけど。

―千里、好きすぎ!

ですね。このあたりは団地好きなら宝物のようなエリアでしょ。

―千里ニュータウンの中でも、このあたり(佐竹台)は最初に開かれた住区だそうです。

ときどき、低層のかっこいい家やメゾネットもあるんですよ。

―池が見えてきました。「菩提池」って、ニュータウンらしからぬ名前…。

そういえば、「ボダる」って言ってましたね、子どもの頃に菩提池で遊ぶことを。もうひとつ、僕が昔、溺れかけた池もあるんですけど、そっちは「シャカる」って。

―地図によると、もうひとつの池は「釈迦ヶ池」。池の名前のクセが強い! にしても、「ボダる」「シャカる」って省略の仕方は、地元っ子ならではですね。

確かに。やっぱりすごくいい場所ですねーこの池。

―自然にかなり近い状態で町なかとは思えませんね。

この池には、結構思い出があるんですよ、書けないかもしれないですけど。

―……時効とはいえ、釣りと競馬の話は書きづらいですよ。釣り禁止ですよね?

看板によると、ダメみたいですね…。もともと、ここまで整備されてなかったんです。池のほとりの柵もなかった気がします。

―だけど、子どもの頃って禁止されたことをやっちゃいますよね。

公園で花火を打ち合ったりとか。おっ、この低いベンチ、かわいい!

―地面すれすれの低さもふくめて、あまり見ないタイプです。

意外と柳宗理がデザインしてたりして(笑)。でもほんと、これはベンチとして賢いですよ。

―ベンチが賢い?

ひとってひとを見たいらしいんですよ。だから、このベンチは道の方を向いてるでしょ、池の方じゃなくて。ときどき池を見るくらいでいいらしいですよ。

―ほんとだ。どちら向きにも座れるけど、自然に座れば通路を向く設計になってますね。ただ石を置いただけのベンチに見えて、これはなかなか考えられています。

角に座るくらいがちょうどいいんじゃないですか。こうして座ってると、やっぱりものすごくいいところですねー。

文:竹内厚 写真:平野愛

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散歩と観察

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。